イギリス政府は、ロンドンのヒースロー空港に第3滑走路を建設する計画を承認しました。ロンドンに本格的な滑走路が新設されるのは、第二次世界大戦以降、初めてのことです。
実現すれば、ヒースロー空港に新たな発着枠が生まれ、関西空港や中部空港へ直行便が開設されるかもしれません。
イギリスの空の玄関口
イギリスのメイ首相は、2016年10月25日に、ロンドン・ヒースロー国際空港の拡張計画を承認すると発表しました。ヒースロー空港はイギリスの空の玄関口ともいえる基幹空港ですが、近年は深刻な発着枠の不足が指摘されてきました。その拡張に、ようやく踏み切ります。
計画では、現在ある2つの滑走路の北側に第3滑走路を建設します。完成すれば、年間の発着枠は現在の48万回から74万回へ大幅に増える見込みです。今後、一般から意見を募ったうえで、2017年末から18年初めをメドに議会での可決を目指します。予定通りに進めば、新滑走路は2025年にも完成する見通しです。
ヒースロー空港の拡張計画は、1946年に前身である旧ロンドン空港が開業して以来、何度となく検討されてきたそうです。しかし、ヒースロー空港はロンドン郊外の内陸部に位置し、拡張は簡単ではありません。住民の立ち退きや騒音問題を背景に反対運動が続き、これまで実現してきませんでした。
EU離脱をきっかけに、ハブ空港の競争力を維持するため、ようやく内閣が拡張計画にゴーサインを出した、ということのようです。
ヒースロー空港プレスリリースより
40都市に直行便開設
気になるのは、増えた発着枠の割り当てです。ヒースロー空港のプレスリリースには、拡張により40の海外都市に新たに就航できるとし、その候補としてキト(エクアドル)、コーチ(インド)、武漢(中国)、大阪の名前を挙げています。
英デイリーメール(メールオンライン)では、40の海外直行便就航都市について、リストを掲載しています。以下の通りです。
・サンアントニオ、サンノゼ、ソルトレイクシティ、ポートランド(アメリカ)
・パナマシティ(パナマ)、キト(エクアドル)、ボゴタ(コロンビア)、カラカス(ベネズエラ)、ベロオリゾンテ、ポルト・アレグレ(ブラジル)、リマ(ペルー)、サンティアゴ(チリ)
・ハルツーム(スーダン)、ダカール(セネガル)、ポートハーコート(ナイジェリア)、モンバサ(ケニア)、リロングウェ(マラウイ)、ハラレ(ジンバブエ)、ダーバン(南アフリカ)
・ダンマーム(サウジアラビア)、ペシャワール(パキスタン)、ゴア、コーチ、コルカタ、ティルヴァナンタプラム(インド)、カトマンドゥ(ネパール)
・ジャカルタ、デンパサール(インドネシア)、ペナン(マレーシア)、ハノイ、ホーチミン(ベトナム)
・重慶、福州、武漢、南京(中国)、大阪、名古屋(日本)
・パース、ブリズベン(オーストラリア)
このように、日本では、大阪にくわえ名古屋が挙げられています。
採算性をクリアできるか?
これらの都市に実際に直行便が設定されるかは、航空会社の都合もあるので、一概にはいえません。
伊丹・関西空港や名古屋空港には、かつて英国航空が就航し、ロンドン線を運行していましたが、主に採算性の問題で撤退しています。2025年になって、採算性の課題が克服され、関西や中部からロンドン線が成り立つかは、なんともいえません。
とはいえ、日本からのロンドン線が少ないのは、ヒースローの発着枠の乏しさに一因があるのも事実です。発着枠が大幅拡大されれば採算性のハードルも下がるに違いありません。関西や中部からロンドン線が開設され、ヨーロッパ旅行の選択肢が増えることを期待しましょう。(鎌倉淳)