東北新幹線を走るのは、「はやぶざ」「やまびこ」「なすの」「こまち」「つばさ」「はやて」の6列車。その違いや、同じ部分について、初心者に向けてわかりやすく解説します。
おもに目的地別の名称
東北新幹線は、東京~仙台~盛岡~新青森を結ぶ路線です。北海道新幹線(新青森~新函館北斗)や秋田新幹線(盛岡~秋田)、山形新幹線(福島~山形~新庄)に直通する列車も多数走っていますが、ここでは、おもに東北新幹線区間についてご紹介します。
東北新幹線を走るのは「はやぶざ」「やまびこ」「なすの」「こまち」「つばさ」「はやて」の6列車。列車により、走行区間や停車駅、車両、座席配置、指定席・自由席の両数が異なります。
ざっくり書くと、東北・北海道新幹線の最速達列車が「はやぶさ」、準速達列車が「やまびこ」、各駅停車が「なすの」です。
運転区間にも違いがあり、「はやぶさ」は東京~新函館北斗間、「やまびこ」は東京~盛岡間、「なすの」は東京~郡山間を走ります。
そのほか、秋田新幹線に直通するのが「こまち」、山形新幹線に直通するのが「つばさ」です。「はやて」は、基本的に盛岡~新函館北斗間を走る列車ですが、運転本数が少ないので、利用機会は限られます。
東北新幹線各列車の停車駅の違い
東北新幹線の6列車について、停車駅の違いを先にまとめてしまうと、以下のようになります。太字は全列車停車、並字は一部列車が通過します。
「はやぶさ」号の停車駅
東京、上野、大宮、仙台、古川、くりこま高原、一ノ関、水沢江刺、北上、新花巻、盛岡、いわて沼宮内、二戸、八戸、七戸、新青森、奥津軽いまべつ、木古内、新函館北斗
「やまびこ」号の停車駅
東京、上野、大宮、小山、宇都宮、那須塩原、新白河、郡山、福島、白石蔵王、仙台、古川、くりこま高原、一ノ関、水沢江刺、北上、新花巻、盛岡
「なすの」号の停車駅
東京、上野、大宮、小山、宇都宮、那須塩原、新白河、郡山
※東京~郡山間の全駅に停車
「こまち」号の停車駅
東京、上野、大宮、仙台、一ノ関、盛岡、雫石、田沢湖、角館、大曲、秋田
「つばさ」号の停車駅
東京、上野、大宮、宇都宮、郡山、福島、米沢、高畠、赤湯、かみのやま温泉、山形、天童、さくらんぼ東根、村山、大石田、新庄
「はやて」号の停車駅
盛岡、二戸、八戸、七戸十和田、新青森、奥津軽いまべつ、木古内、新函館北斗
以下では、東北新幹線「はやぶさ」「やまびこ」「なすの」「こまち」「つばさ」「はやて」について、停車駅以外の相違点と共通点をご紹介していきます。
「はやぶさ」号とは?
東北新幹線の最速達タイプの列車が「はやぶさ」号です。東京~仙台間の所要時間は1時間40分程度、東京~新青森間は3時間15分程度です。東京~盛岡間で「こまち」と併結して走る列車もあります。
運転区間は、東京~仙台・盛岡・新青森・新函館北斗です。大宮~仙台間は全列車ノンストップですが、仙台以北の停車駅は列車によって異なります。
運行本数は、定期列車が毎時1本程度で、不定期列車とあわせて毎時2本程度です。うち1本が新函館北斗発着、残り一本が新青森発着のことが多いです。運行本数は毎日異なります。
10両編成で、指定席が8両、グリーン車が1両、グランクラス1両です。通年で自由席はありません。
座席の種類と号車
普通車指定席(1~8号車)、グリーン車指定席(9号車)、グランクラス(10号車)
車内販売
東京~新青森間で車内販売をおこなっています。
「やまびこ」号とは?
東北新幹線の速達タイプの列車が「やまびこ」号です。東京~仙台間の所要時間は2時間程度で、東京~盛岡間が3時間20分程度です。東京~福島間で「つばさ」と併結して走る列車もあります。
列車によって停車駅が異なりますが、標準的な停車駅は、東京、上野、大宮、宇都宮、郡山、福島、仙台以北の各駅です。ただし、東京~仙台間の全駅に停車する列車もあります。
「はやぶさ」との違いは最高速度です。「はやぶさ」は320km/h運転をしますが、「やまびこ」は原則として275km/hです。「はやぶさ」は大宮~仙台がノンストップですが、「やまびこ」は数駅に停まるという違いもあります。
一方、「なすの」との違いは運転区間です。「なすの」は福島以北を走りませんが、「やまびこ」は全列車が仙台まで走り、一部は盛岡まで走ります。
運行本数は時間帯により異なりますが、不定期列車を含めて毎時2~3本程度です。
10両編成と17両編成があります。自由席と指定席の両数は列車により異なります。10両編成の場合、自由席が5両、指定席が3両、グリーン車が1両、グランクラスが1両のことが多いです。
座席の種類と号車
10両編成:普通車自由席(1~5号車)、普通車指定席(6~8号車)、グリーン車指定席(9号車)、グランクラス(10号車)
17両編成:普通車自由席(1~3号車、12~17号車)、普通車指定席(5~8号車)、グリーン車指定席(9号車、11号車)、グランクラス(10号車)
※列車により多少異なります。車両がE2系の場合、グランクラスはありません。
車内販売
車内販売はなし。
「なすの」号とは?
東北新幹線の各駅停車タイプの列車が「なすの」号です。東京~郡山間のみ走ります。
運行本数は毎時1本程度です。朝夕は本数が増えます。日中時間帯は運行本数が減ります。
10両編成で、自由席と指定席の両数は列車・曜日などにより異なります。普通席8両、グリーン車1両、グランクラス1両が基本ですが、グランクラスがない車両もあります(E2系)。
座席の種類と号車
普通車(1~8号車)、グリーン車指定席(9号車)、グランクラス(10号車)
※自由席、指定席の号車は、列車により異なります。
車内販売
車内販売はなし。
「こまち」号とは?
「こまち」号は秋田新幹線の列車の愛称です。運行区間は東京~秋田です。ただし、東京~盛岡間は東北新幹線を走り、ほとんどの列車が「はやぶさ」と併結します。東京~秋田の所要時間は3時間50分程度です。
運行本数は、定期列車が毎時1本程度で、不定期列車がさらに1本程度設定されています。
7両編成で、指定席が6両、グリーン車が1両です。通年で自由席はありません。
座席の種類と号車
普通車指定席(12~17号車)、グリーン車指定席(11号車)
車内販売
東京~盛岡間で車内販売をおこなっています。
「つばさ」号とは?
「つばさ」号は山形新幹線の列車の愛称です。運行区間は東京~山形・新庄です。ただし、東京~福島間は東北新幹線を走り、ほとんどの列車が「やまびこ」と併結します。東京~山形の所要時間は2時間50分程度です。
運行本数は、定期列車が毎時1本程度で、不定期列車がさらに1本程度設定されています。
7両編成で、指定席が6両、グリーン車が1両です。通年で自由席はありません。
座席の種類と号車
普通車指定席(12~17号車)、グリーン車指定席(11号車)
車内販売
東京~山形間で車内販売をおこなっています。
「はやて」号とは?
東北・北海道新幹線の盛岡以北を走る、区間運転の列車が「はやて」号です。盛岡~新函館北斗間と、新青森~新函館北斗間に、それぞれ1日1往復(計2往復)の定期列車があります。
10両編成で、指定席が8両、グリーン車が1両、グランクラス1両です。通年で自由席はありません。
座席の種類と号車
普通車指定席(1~8号車)、グリーン車指定席(9号車)、グランクラス(10号車)
車内販売
車内販売はありません。
「はやぶさ」「こまち」と「やまびこ」の料金差
東北新幹線では、「はやぶさ」「こまち」のみ、大宮~仙台間で加算料金が設定されています。そのため、この区間を利用すると、「はやぶさ」「こまち」が「やまびこ」より高くなります。
「はやぶさ」「こまち」の加算料金(やまびことの差額)は以下の通りです。
▽東京・大宮~古川・仙台 320円
▽東京・大宮~くりこま高原・新花巻 420円
▽東京・大宮~盛岡 520円
この加算分だけ、「はやぶさ」「こまち」の料金は「やまびこ」より高くなります。
東北新幹線の使用車両
東北新幹線で使用されている車両は、E2系、E3系、E5/H5、E6系、E8系があります。車両によって最高速度と客室構成が異なります。
E2系
10両編成。普通車9両、グリーン車1両です。最高速度275km/h。
E3系
7両編成。普通車6両、グリーン車1両です。山形新幹線用車両です。最高速度275km/hです。E2系と併結されます。
E5/H5系
10両編成。普通車8両、グリーン車1両、グランクラス1両です。最高速度320km/hの、東北・北海道新幹線の主力車両です。E5がJR東日本所有、H5がJR北海道所有ですが、基本的な仕様は同じです。
E6系
7両編成。普通車6両、グリーン車1両です。秋田新幹線用車両です。最高速度320km/hで、E5/H5系と併結されます。
E8系
7両編成。普通車6両、グリーン車1両です。山形新幹線用の新型車両です。最高速度300km/hで、E5/H5系と併結されます。
座席コンセント
座席コンセントの配置は、「はやぶさ」「やまびこ」といった列車種別には関係なく、車両によって異なります。
E8系は、モバイル用コンセントを普通車、グリーン車の全席に設置しています。
E5/H5系も、モバイル用コンセントを全席に設置しています。ただし、一部車両では、座席中央・通路側(B席・C席・D席)にコンセントがない場合があります。
E2系、E3系、E6系は、モバイル用コンセントを普通車の窓側席と最前部・最後部の座席に設置しています。グリーン車は全席に設置しています。ただし、E2系は全席でコンセントがない場合があります。
東北新幹線の列車の選び方
東北新幹線系統は、基本的に行き先別に列車が設定されています。東京・大宮発の場合、おおざっぱには、以下のように考えるといいでしょう。
・仙台と盛岡以北の各駅へは「はやぶさ」
・宇都宮と郡山~盛岡間の各駅へは「やまびこ」
・小山~那須塩原への各駅へは「なすの」
・秋田新幹線方面へは「こまち」
・山形新幹線方面へは「つばさ」
・盛岡以北の早朝・深夜は「はやて」
どの列車を選ぶかで悩むケースがあるとすれば、東京・大宮~仙台でしょうか。「はやぶさ」のほうが20分ほど速いので、基本的には「はやぶさ」でいいと思いますが、「やまびこ」なら指定席で320円安いです。
また、「やまびこ」には自由席も付いていますので、自由席利用ならさらに520円(通常期)安くなり、合計で840円も安いです。値段重視の場合は、「やまびこ」自由席を選ぶといいでしょう。
「やまびこ」「なすの」は料金差なし
小山~郡山間の各駅は、「なすの」の全列車のほか、「やまびこ」の一部列車も停車します。両列車に料金差はありませんので、時間のあう列車を利用するといいでしょう。所要時間は列車により異なります。通過駅がある列車はその分だけ速いですが、大差はありません。
自由席利用の場合、「やまびこ」自由席は混みやすいので、「なすの」がおすすめです。(鎌倉淳)
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1章 人口減少時代の鉄道の未来
2章 東京圏の鉄道の未来
3章 大阪圏の鉄道の未来
4章 新幹線と並行在来線の未来
5章 地方鉄道の未来
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