阪神電鉄が急行用車両で座席指定サービスを提供すると発表しました。詳細は明らかにされていませんが、デュアルシートになるのか、専用車両で終日サービスを実施するのか、気になるところです。内容を予想してみました。
新型車両3000系を導入
阪神電鉄は新型急行用車両「3000系」を2027年春に導入します。あわせて、この車両で、座席指定サービスを提供すると発表しました。
3000系の外観色は、「赤胴車」塗装を引き継ぐ「Re Vermilion」(リ・バーミリオン)です。「Re Vermilion」とは、「赤胴車」の「バーミリオン」に接頭語「Re」を加えたもの。「赤胴車」を継承し、期待に応え続ける車両になってほしいという思いが込められています。
車両は6両編成で、うち1両で座席指定サービスを提供します。サービスの詳細は、決まり次第発表します。
どんなサービスになるのか
阪神電鉄が発表した新型車両の概要は以上です。車内設備やインテリアに関する発表はなく、座席指定サービスの詳細も未定です。どんなサービスになるのか気になるところでしょう。
座席指定サービスには大きく分けて2種類あります。京阪プレミアムカーや阪急プライベースのように、専用車両でサービスを終日提供する形と、東武のTJライナーや東急Qシートのように、デュアルシートを使って、混雑時間帯のみサービスを提供する形です。
デュアルシートとは、ロングシートとクロスシートを切り替えられる座席を意味します。座席指定サービスを提供する場合は、クロスシートとして運行するのが一般的です。
デュアルシートか?
阪神がどちらの形になるのかは未発表です。推測すると、阪神は路線長が短いため、常時サービスを提供するほどの着席需要はなく、混雑時間帯のみのサービスを想定している可能性が高そうです。すなわち、デュアルシートです。
6両編成の車両に、デュアルシートを1両組み込む形になるのでしょう。その場合、混雑時間帯以外は、ロングシートの一般座席として運用します。
サービス提供区間は?
次に、サービス提供区間を考えてみましょう。阪神線内の梅田~三宮・高速神戸間のみに設定するのか、直通先の山陽電鉄の姫路方面や、近鉄の奈良方面にまで展開するのかが気になります。
阪神電鉄は、2022年から2023年に、有料着席車両の実証実験として「らくやんライナー」を運行していて、その際の運行区間は梅田~青木でした。

「らくやんライナー」は、全区間乗車しても30分あまりの短距離でした。それでも乗車整理券購入には長い列ができ、ほぼ満席に近かったそうです。
「らくやんライナー」の結果からみると、大阪~西宮・芦屋程度の短区間でも着席需要があることがわかります。それを踏まえると、2027年に導入される座席指定サービスも、阪神線内のみで実施される可能性が高そうです。
「急行西宮行き」に設定か?
現在のダイヤをみると、夕ラッシュ時の梅田駅からは、主に「直通特急姫路行き」「急行西宮行き」「普通高速神戸行き」の3パターンの列車が設定されています。
「らくやんライナー」の実績を踏まえ、座席指定サービスを定期列車の1両に組み込むのであれば、「急行西宮行き」の1両を充てることになりそうです。つまり、まずは夕ラッシュ時の「急行西宮行き」で、座席指定サービスを開始する可能性が高そうです。
その場合、1編成あれば、毎時1本程度の座席指定車両付き列車を運行できます。たとえば、18時台から22時台にかけて、毎時1本、計5本の「急行西宮行き」で、座席指定サービスを提供できるということです。
朝ラッシュ時に導入するのかはわかりませんが、導入するとすれば、阪神御影発の区間特急でしょうか。
ただ、他社をみると、デュアルシートでの座席指定サービスは、朝ラッシュ時には設定しないか、設定しても運行本数が少ない傾向があります。そのため、阪神でも、まずは夕ラッシュ時のみでの導入になるのではないでしょうか。
専用車両の可能性は?
ここまで、デュアルシートを活用した阪神線内での座席指定サービスを予想してきました。ただし、これは阪神電鉄が正式発表した内容ではありません。デュアルシートではなく、京阪プレミアムカーや阪急プライベースのような3列シートの専用車両を導入することも、可能性としてはあり得るでしょう。
仮に3列専用車両を導入する場合、梅田~西宮間という短距離設定にはならないと思われます。梅田~姫路間の直通特急か、近鉄奈良~神戸三宮間の快速急行に組み込まれ、終日運行になるでしょう。
姫路にも奈良にも世界遺産があり、多くの外国人観光客が訪れます。そのため、これらの列車に専用車両を設定すれば、観光客の利用も視野に入れた有料着席サービスという位置づけになるでしょう。
ただ、姫路なら新幹線もJR新快速もありますから、時間のかかる阪神・山電の直通特急を使う観光客がどれだけいるかは疑問です。奈良~神戸間にしても、観光客の需要は高くなさそうです。
そう考えると、やはり、座席指定サービスを専用車両で終日設定するのは考えづらく、デュアルシートによる通勤時のみの設定と考えるのが妥当に思えます。(鎌倉淳)