阪急なにわ筋・新大阪連絡線はいつできるか。大阪空港線は採算性にカベ

十三再開発へ

阪急電鉄が計画する「なにわ筋・新大阪連絡線」が、同時整備へ向け前進しました。国土交通省が実施した調査で、費用対効果と採算性が良好との結果が出たためです。一方、大阪(伊丹)空港への連絡線は、採算性で難があるとされました。

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阪急が計画する3新線

阪急電鉄は現在3つの新路線を計画中です。2031年春開業予定のなにわ筋線北梅田駅(仮称)と阪急十三駅を結ぶ「なにわ筋連絡線」(2.5km)、十三駅と新大阪駅を結ぶ「新大阪連絡線」(2.1km)、阪急宝塚線の曽根駅から伊丹空港を結ぶ「大阪空港線」(4.0km)です。

国の補助を得て建設する場合、費用便益比(費用対効果)は1以上が必要で、開業から40年以内に累積収支が黒字化する見通しがなければなりません。国土交通省では、これらの路線の事業性を見極めるため、各線の需要推計や費用便益比、収支採算性などについて検討し、「近畿圏における空港アクセス鉄道ネットワークに関する調査結果」としてとりまとめました。

阪急3新線
画像:国土交通省「近畿圏における空港アクセス鉄道ネットワークに関する調査結果」

同時整備なら13年で黒字化も

調査は2031年春になにわ筋線が開業しているとの前提で行われています。その場合、なにわ筋連絡線は建設費が約870億円、輸送人員が1日約9.2万~10.2万人と試算されました。費用便益比(費用対効果)は1.7~1.8で、開業から24~31年目に累積損益が黒字化する見通しです。

新大阪連絡線は建設費が約590億円、輸送人員が1日約5.5万人。費用便益比は1.4で、開業から27年目に黒字化する見通しです。

さらに、なにわ筋連絡線と新大阪連絡線を同時整備した場合、建設費が約1,310億円と個別整備より約1割安くなります。輸送人員はなにわ筋連絡線が約11.4~13.1万人、新大阪連絡線が約4.7~5.6万人で、単独整備に比べなにわ筋連絡線の利用者が増える効果があります。費用便益比は1.7~1.9で、13~16年目に黒字化する見通しです。

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早期事業化へ期待感

国土交通省では、現在、なにわ筋連絡線の事業化に向けた検討が先行しているようです。しかし、なにわ筋・新大阪連絡線同時整備の最短13年で黒字化というのは、大都市の新線計画ではかなり高い試算です。

あわせても4.6km程度の短い路線で、同時整備の効果が高いことが明らかとなったわけで、阪急のなにわ筋連絡線と新大阪連絡線は、今後、同時整備への議論が高まっていくのではないでしょうか。

気になる開業時期ですが、調査結果では「なにわ筋連絡線、新大阪連絡線、大阪空港線の整備により、なにわ筋線の利用者が増加し、整備効果がより高まる」としており、なにわ筋線を活かすため、阪急3新線の早期事業化に期待感を示しています。

なにわ筋連絡線の開業が、なにわ筋線の開業前になることはありません。一方、調査結果を見る限り、2031年から大きく遅れることもなさそうです。日本経済新聞2018年4月12日付によると、「阪急はなにわ筋線との同時開通を目指す」としています。

調査結果では、「なにわ筋連絡線の整備により、北梅田駅においてダイヤ設定の柔軟性が増し、なにわ筋線内で運行可能な列車の本数が増加する可能性あり」ともしています。

なにわ筋線にはJR系統と南海系統の列車が乗り入れますが、このうち南海系統の列車を阪急新線に流すことで、北梅田駅や新大阪駅での折り返し運転を減らすことができ、全体の列車本数を増やすことができる、ということです。

なにわ筋線の開業効果を高めるためにも、なにわ筋線と、阪急なにわ筋・新大阪連絡線の同時開業の可能性も十分ありそうです。

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西梅田・十三連絡線には後ろ向き

調査では、地下鉄四つ橋線を十三まで延伸する、いわゆる「西梅田・十三連絡線」についても検討しています。

これについては「採算性は西梅田・十三連絡線がなにわ筋連絡線を上回るものの、費用便益費比は、なにわ筋連絡線が西梅田・十三連絡線を上回り社会的な効用が高い。また、西梅田・十三連絡線の整備は、なにわ筋線と一部競合するため、なにわ筋線の輸送人員が減少する」として、後ろ向きな表現になりました。

大阪空港線は後回し

大阪空港線については、建設費約700億円で、輸送人員は約2.5万人。費用便益比は1.4ですが、開業後40年間で黒字転換する可能性は低いとされました。

調査結果は、全体になにわ筋・新大阪連絡線に前向きな記述が並ぶ一方で、大阪空港線にはあまり触れられていません。

大阪空港線の課題は、目的地である伊丹空港の発着枠の制限が厳しいことです。将来的に旅客数の大幅増が見込めないため、現時点で採算性に難があるなら、将来的にも改善は見通せません。

ただ、調査結果全体をみると、なにわ筋線と、なにわ筋・新大阪連絡線、大阪空港線を一体で整備することによる効果への期待感も見せており、大阪空港線を切り捨てているわけではありません。

整備の順序として後回しになるのは間違いありませんが、費用便益比が1を超えたので、事業化への道筋は残されたといえそうです。

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十三再開発へ

日経は、阪急電鉄が「3月に武田薬品工業から十三駅近隣にある運動場を買収した」と報じています。用途は未公表なものの、新線建設にあわせて阪急が十三の再開発を目指しており、ホテルなどを建設するのではないか、という見方を示しました。

阪急3新線ができれば、十三には、京都線、宝塚線、神戸線、なにわ筋連絡線、新大阪連絡線が集まり、梅田方面を含め6方向に路線が延びる重要なターミナルになります。伊丹・関西両空港へもダイレクトでアクセスできる利便性を備え、外国人観光客の人気を博すでしょう。

阪急3新線の総事業費は約2,000億円。阪急負担分が3分の1としても、約700億円にのぼります。少なくない金額ですが、阪急としては十三に「新都心」を建設することで、投資を回収できると踏んでいるのかもしれません。阪急がそこまで本気ならば、3新線は、遠からず実現しそうです。(鎌倉淳)

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