「二百名山」をご存じでしょうか。放送中のNHK-BSの番組「グレートトラバース2」でテーマになっている山々です。「グレートラバース2」の第1回放送で出てきた山々がなかなか個性的で、興味を持った人も多いのではないでしょうか。
田中陽希氏が百名山に続き人力踏破
NHK-BSの番組「グレートトラバース」は、今回が第2弾。第1弾は、プロアドベンチャーレーサーの田中陽希氏が日本百名山を一筆書きで人力踏破を目指すというものでした。人力、というのは徒歩とカヤックで、屋久島の宮之浦岳から利尻島の利尻岳までを約7ヶ月掛けて踏破しました。
田中氏の挑戦も興味深いのですが、番組からは百名山を通じて日本の山歩きの楽しさや、自然の豊かさがよく伝わってきました。NHKの登山番組と言えば「世界の名峰 グレートサミッツ」が有名ですが、日本の名峰もなかなかだな、と再認識させられた番組です。
画像:NHKオンラインより
NHKグレートトラバース2
春~初夏・北海道の山
行程:5月下旬~6月下旬頃
暑寒別山→天塩岳→石狩岳→ニペソツ山→芦別岳→夕張岳→カムイエクウチカウシ岳→ペテガリ岳→樽前山→駒ヶ岳
8月1日(土)午後9時放送
深田クラブが選定
第2弾となった「グレートトラバース2」は、田中が今度は二百名山を人力踏破する、というテーマです。2015年8月1日に『第1集 春~初夏・北海道の山』がオンエアされました。
「日本百名山」は有名ですが、「二百名山」はあまり知られていません。「日本百名山」が深田久弥氏によって選ばれたのに対し、二百名山は深田氏の遺志を継ぎ、1974年に発足した愛好会「深田クラブ」によって1984年に選定されました。
カムイエクウチカウシ山で起きた惨劇
田中は今回は北から南を下るルートをとります。宗谷岬からスタートして、北海道の二百名山に次々登っていくのですが、これがなかなか大変そう。「石狩岳」なんてメジャーそうな名前の山でも、行程が長く相当な難易度です。圧巻は日高山脈の「カムイエクウチカウシ山」と「ペテガリ岳」。登山道が消えてしまっているなか、沢を登り藪を漕いでひたすら進みます。
日高山脈といえば、福岡大学ワンゲル部・ヒグマ襲撃事件が頭に浮かびます。1970年7月、日高山脈を縦走中の福岡大ワンゲル部5名が何度もヒグマに襲われ、3人が次々と命を落とした事件です。その現場がまさにカムイエクウチカウシ山近くでした。たぶん、この事件の後、登山者が激減したのでしょう。それもあって、登山道は藪の中に失われてしまったのだと思います。
そんなエリアで、ヒグマと遭遇したら逃げようもない稜線の上を、藪を漕ぎながら田中氏は一人で歩いて行きます。テレビ番組ですから常に一人だったわけではないでしょうが、それでも怖いことにかわりありません。百名山はそれなりに登山道が整備されている山ばかりで、ここまで怖い山はなかったのではないでしょうか。
画像:NHKオンラインより
イッテQも素晴らしいが
テレビの登山番組と言えば、「世界の名峰 グレートサミッツ」のほか、日本テレビ系列の「世界の果てまでイッテQ!」の『イッテQ登山部』も素晴らしいです。しかし、「グレートトラバース2」は、それらとは違った視点で新しい山の楽しみを提供してくれています。
すなわち、「グレートサミッツ」や「イッテQ」が取り上げるような世界の名峰まで行かなくても、日本国内にはまだまだ「挑戦的な山々」があるのだな、ということを再認識させてくれたのです。
二百名山がこんな難関ばかりというわけではなく、本州に行けばハイキングで行けそうな山もラインナップされています。一方で、鋸岳のような素人にはちょっと難しそうな山も含まれています。
二百名山という題材を通して、日本の山々の奥深さが見えてくる。そんな番組をこれからも期待したいところ。次回『第2集:夏・東北の山々に挑む』の放送は9月12日(土)午後9時です。