「グランクラス」はどこへ行く。サービス簡略化で魅力乏しく

「軽食」が「リフレッシュメント」に

東北・北海道、北陸新幹線のグランクラスの車内サービスが、2022年10月1日にリニューアルします。サービスの簡略化というべき内容で、グランクラスはどこへ行くのでしょうか。

広告

10月1日リニューアル

JR東日本などは、東北・北海道、北陸新幹線で導入している「グランクラス(飲料・軽食あり)」の車内サービスを、10月1日からリニューアルすると発表しました。

大きなリニューアルポイントは、これまで提供していた軽食に代わり、「リフレッシュメント」を提供することです。「リフレッシュメント」とは「軽いお食事」で、洋食と和食から選べます。

これまでの軽食は和の生食でしたが、リフレッシュメントでは冷凍商品を使います。冷凍食品導入の理由を「食品ロスの削減」としていることから、オーダーを受けてから車内で解凍するようです。

グランクラスアテンダント
画像:JR東日本プレスリリース
広告

10月1日リニューアル

飲料もリニューアルし、リフレッシュメントに合うワインを提供。日本茶やりんごジュースについても刷新します。また、一部飲料の提供を終了します。

おつまみも刷新し、10月~3月には、「しおちょこ」となります。茶菓子は継続し、10月~3月は「信州産あんずのパウンドケーキ」となります。

グランクラスパウンドケーキ
画像:JR東日本プレスリリース

茶菓子はこれまで、乗客全員に確認の上で配っていましたが、今後はリクエストがあったときのみ提供する方式となります。

こうしたリニューアルに伴い、グランクラスの専任アテンダント乗務体制を 2 人から 1 人に変更します。グランクラス料金の変更などは発表されていません。

広告

理解はできるけれど

以上が、JR東日本などが発表した、グランクラスのサービスリニューアルの概要です。JR東日本は、今回のリニューアル目的に、廃棄ロスの削減をはじめとした「SDGs」を掲げています。

グランクラスに乗ってみると、軽食を食べない客も意外と多く、廃棄ロスの問題は確かに大きいと察せられ、冷凍食品化は理解できます。酒を飲む人は多いので、軽食ではなく酒の肴のような内容にしたのも、利用実態に即したものかもしれません。

10~11月のリフレッシュメントの監修は和食が「分けとく山」で、洋食は「DEAN & DELUCA」のプロデュースです。「DEAN & DELUCA」の洋食メニューはワインに合いそうで、その点では歓迎する人もいそうです。

グランクラスメニュー
画像:JR東日本プレスリリース

グランクラスメニュー
画像:JR東日本プレスリリース

広告

「はくたか」はサービス終了

と前向きに捉えてはみたものの、全体としてはサービス簡略化になっていて、コスト削減とみられても仕方ありません。グランクラスの魅力が乏しくなるのは否定したがいところでしょう。

グランクラスでは、専任アテンダントによる「飲料・軽食あり」サービス自体も縮小傾向で、同じ10月1日には、北陸新幹線「はくたか」のグランクラスで、専任アテンダントサービスを終了します。

10月1日以降に専任アテンダントサービスが残るのは東北・北海道新幹線の「はやぶさ」と、北陸新幹線の「かがやき」のみ(一部列車除く)となり、今回の発表により、このサービスすら簡略化されることが明らかになったわけです。

提供される「リフレッシュメント」は間食向けの量ですから、車内で食事を望む利用者は、乗車前に駅弁などを用意する必要がありそうです。料金差を考えて「それならグリーン車でいいや」と思う人も出てくるでしょうから、利用者離れに拍車がかかるかもしれません。

広告

「SDGs」を重視するなら

グランクラスの不振がはっきりしてきたのであれば、注目は東北・北海道新幹線の次世代車両での扱いです。次世代車両は、北海道新幹線の札幌延伸が実現する2030年までに営業投入されるとみられています。

グランクラスは、新幹線札幌延伸を見据え、飛行機の国内線ファーストクラス並みのサービスを提供する車両として開発されました。つまり、札幌延伸前に登場する次世代車両こそが「本番」なのですが、利用が伸び悩んでいる状況で、どういう形に収めるのか悩みどころでしょう。

そもそも、今回のリニューアル目的のように「SDGs」を重視するなら、移動にかかる乗客一人あたりの消費エネルギーが多いグランクラスは、存在自体が危うくなるかもしれません。

サービス削減の理由に「SDGs」を持ち出すのであれば、その行く末も見えてきてしまうのではないでしょうか。(鎌倉淳)

広告
前の記事御堂筋線「箕面直通」は2024年春。梅田~箕面萱野間が24分に
次の記事山陽新幹線が堅調。新幹線利用者数ランキング2022年お盆版