富士山に「路面電車」が走るかも知れません。これは、富士五湖観光連盟の呼びかけで発足した「世界遺産富士山の環境と観光のあり方検討会」が、富士山の環境保全のため、山麓と5合目を結ぶ登山鉄道を建設するよう提言する最終報告書を取りまとめたためです。同連盟は今後、実現に向けて働きかけていく方針です。
スバルラインを鉄道に転換
この提言では、富士山の環境保全には現在の夏季のマイカー規制では限界があると指摘。その上で、入山者数を規制し、自動車の排ガス、廃棄物の不法投棄を解決するために、山麓と富士山5合目をつなぐ有料道路スバルラインを登山鉄道に転換すべきだとしています。5合目へのアクセスを自動車やバスから鉄道に変えることで、二酸化炭素の排出量を年間12,000トン減らせると推計しています。
登山鉄道は富士急行の河口湖駅と5合目をスバルラインを経由して複線でつなぐ計画です。スバルラインの入り口までは立体化して途中の道路に影響が出ないようにします。スバルライン上での線路は路面電車のような形にして、緊急時には自動車(緊急車両)が走れるようにすべきとしています。
冬季も運行
また、登山鉄道の駅には登山客らが噴石などから身を守るシェルター機能を持たせ、噴火など万一の際には、鉄道の大きな輸送力を避難に活用できるとしています。
登山鉄道は通年運行を想定していて、鉄道の整備により冬季も5合目までアクセスが可能になります。それにより、季節的な観光客の集中を平準化でき、冬季の観光客数の底上げも図れます。通年型・長期滞在型の観光地を目指せるとしています。
実現可能性は?
と、ざっと「富士山あり方検討会」の最終報告書の鉄道に関する部分をまとめてみました。現時点では、登山鉄道を敷設する事業者や事業費、実現時期などは未定です。
正直なところ、実現可能性はわかりません。旗振り役の富士五湖観光連盟の会長は堀内光一郎・富士急行社長であり、そもそも鉄道敷設に対して前向きなのでしょう。
登山鉄道が河口湖駅と連絡すれば、富士急行の利益になる一方で、五合目への観光バスの乗り入れが禁止されれば、不利益を受ける事業者も出てきそうです。合意形成は簡単ではないでしょうし、事業費の捻出のハードルも高そうです。
ただ、富士山に登山鉄道を敷設することが環境面で大きなメリットがあるのは事実ですし、「登山路面電車」は観光面でも魅力的。ぜひ実現してほしいものです。