ヨーロッパは遠くなりにけり。航空会社の日欧新ルートを比較する

フィンエアーは北極海横断

航空各社が日欧間を新ルートで運航しています。ルートは各社により異なりますが、ロシアを迂回するため、ヨーロッパは遠くなりました。

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フィンエアーは北極海横断

ロシアのウクライナ侵攻を受け、日本とヨーロッパを結ぶ航空機がロシア上空を飛行することが事実上、不可能になりました。

このため、日欧の航空各社がロシアを避ける新ルートを開拓しています。2022年3月9日に成田~ヘルシンキ線を再開したフィンエアー(フィンランド航空)は、北極海を横断する新ルートで運航しました。

フライトレーダー24のログを見ますと、3月9日のAY73便は、ヘルシンキを15時32分(協定世界時、以下同)に出発し、05時08分に成田に着陸しています。所要時間は約13時間半。通常は9時間半程度で到着しますので、約4時間も余計にかかったことになります。

フィンエアー73便
画像:フライトレーダー24

フライトレーダー24の地図では上にはみ出してしまうので、Googleマップで見てみると、以下のようになります。ロシアを横断するのに比べ、とても大回りであることがわかるでしょう。

AY073ルート

おおざっぱな当て込みですが、フィンランドからノルウェー領のスバールバル諸島上空を経て、北極点付近の北極海を横断。ベーリング海峡ギリギリのアラスカ上空を飛行した後、カムチャッカ半島や千島列島にかからないようにして、日本にたどり着いた形です。

いわゆる「北回り」ですが、アンカレジに寄るより距離が短くすみます。正確な距離はわかりませんが、地図で測ると11,000~12,000kmくらいでしょうか。

使用機材は最新鋭のA350-900。カタログ上の航続距離は14,350kmあるので、このくらいは飛べるのでしょう。

地球儀

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JALはグリーランド経由

JALは、羽田~ロンドン線を2022年3月4日から「北回り」で運航しています。3月10日の羽田発JAL43便をフライトレーダー24で見てみると、以下のようなルートです。

JAL43 瓶
画像:フライトレーダー24

アラスカからグリーランド上空を経てロンドンに到達しています。フィンエアーとは少し経路が異なります。

羽田出発が01時00分、ロンドン到着が16:46分で、約16時間かかっています。通常は13時間程度なので、3時間余計にかかっています。

Googleマップで見ると、以下のようになります。

JAL43便
画像:Googleマップ

日本を出て、カムチャッカ半島をかすめてアラスカ上空に達するのはフィンエアーと同じですが、JALはアラスカを縦断した後、カナダのクイーンエリザベス諸島からグリーンランドを横断し、アイスランド上空を経てイギリスに到達しています。

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ANAはカザフスタン経由

ANAは、3月5日から成田~ブリュッセル線を再開させ、その後羽田~フランクフルト線も運航しています。3月10日出発のフランクフルト行きNH203便をフライトレーダー24で見てみます。

NH203便
画像:フライトレーダー24

こちらは「南回り」で、韓国、中国、カザフスタン、アゼルバイジャン、アルメニア、トルコ、ブルガリア、ルーマニア、ハンガリー、オーストリアの領空を経由して、ドイツに到達しています。

羽田発15時42分、フランクフルト着07時23分で、所要時間は約15時間半です。通常は12時間半程度なので、3時間余計にかかっています。

こちらもGoogleマップで見てみます。

NH203便
画像:Googleマップ

冷戦時代の「南回り」は、バンコクやカラチを経由する大回りでしたが、いまは中央アジアを横断するので、そこまで大回りではありません。したがって、カザフ領空経由は「南回り」というより、「中央アジアルート」とでも呼んだほうがよさそうです。

冷戦時代はカザフスタンもウズベキスタンもアゼルバイジャンもソビエト連邦に属していました。いまはこれらの国が独立しています。

もし、いまもこれらの国がロシアと同じ国に属していたら、中央アジアルートは通れなかったでしょう。アフガニスタンの状況も考慮すると、やはりパキスタン上空まで迂回しなければならなかったかもしれません。

なお、ANAは成田発フランクフルト便を、3月17日以降、ウィーンで途中給油する形に変更します。旅客や貨物の輸送を最大化するためと説明しており、無給油飛行で積載量が制限されていたようです。

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いちばん近くて13時間半

フィンエアー、JAL、ANAの日欧新ルートを見てみましたが、エアフランスもANAと同じ中央アジアを横断するルートを通っています。ドーバー海峡以南の西ヨーロッパへは、この中央アジアルートが定着しそうです。

いずれにしろ、ロシアが起こした戦争により、我々は当分、ヨーロッパへ行くのに、ずいぶんと長い時間、飛行機に乗らなければならなくなりました。「最も近いヨーロッパ」とされていたヘルシンキから日本へが13時間半。日本からロンドンやフランクフルトへは15時間です。

冷戦時代と違うのは、航空機の性能が上がり、ロシアを通らずとも無給油で日欧間を飛べるようになったことでしょうか。それでも、ヨーロッパは遠くなりにけり、という現実に変わりはありませんが。(鎌倉淳)

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