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東北新幹線E10系「グランクラス廃止」の衝撃。時速360km運転も先送りへ

2031年春に営業運転へ

JR東日本が、東北新幹線の新型車両E10系の開発に着手すると発表しました。しかし、最高速度は320km/hで、360km/h運転は先送りされます。さらに、看板車両のグランクラスが廃止されることも明らかになりました。

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2031年春運行開始

E10系は、E2系およびE5系の後継車両として開発されます。第1編成の落成予定は2027年秋以降で、走行試験を実施した後、2030年度内の営業運転開始を目指します。

「2030年度内」とは、2031年春までにという意味です。つまり、E10系は、2031年春のダイヤ改正をメドに運行を開始する予定ということです。

E10系の車両デザインは、JR東日本として初めて海外のデザインファームとなる、英タンジェリン社を起用。東北地方の山々を想起させる緑色を基調としました。

上部に明るい緑色の「津軽グリーン」を配し、下部は濃い緑色の「イブニングエルム」を据えています。「桜の花弁」の形状を模した曲線を、車両間にあしらいました。

E10系
画像:JR東日本プレスリリース

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「TRAIN DESK」車両を導入

E10系は10両編成、最高時速320km/hで、基本スペックはE5系と同じです。

日本経済新聞電子版によれば、第1編成でグランクラスは廃止されます。

一方で、「TRAIN DESK」車両を新設するのが、客室面でE5系との大きな違いです。

TRAIN DESKとは、いわゆるテレワーク向け座席です。既存車両では、普通車を充当していますが、E10系では4列シートの専用車両を設置します。

隣席との区間を広く取り、サイドウィングを大型化。プライベート感を高めて車内での仕事をしやすくします。

設定号車は明かされていませんが、グランクラスの代替ならば、10号車と考えるのが妥当でしょう。画像からも、編成末端であることがうかがえます。

E10系トレインデスク車両
画像:JR東日本プレスリリース

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荷物置き場も拡幅

このほか、各車両の荷物置き場を拡幅し、大型荷物を持ち込みやすくします。全座席に電源コンセントも設置します。

荷物輸送対応としては、5号車に荷物輸送用ドアを設置します。荷物の積み下ろしなど、「はこビュン」サービスの柔軟性を高めます。

制動距離は短く

技術面では、次世代新幹線の試験車両「ALFA-X」で検証してきたものを活用し、地震対策として逸脱防止用のL型車両ガイドを採用。高減速度ブレーキを導入し、制動距離を15%短くします。

左右動ダンパにより、地震時の揺れを吸収し、車両の損傷や脱線を防止します。また、運転台には、将来的な自動運転に向けた機能を搭載します。

E10系
画像:JR東日本プレスリリース

 
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速度向上は先送り

以上が、東北新幹線の新型車両E10系の概要です。大きな驚きは、最高速度の向上がなされないことと、グランクラスを廃止することでしょう。

最高速度については、JR東日本では、試験車両ALFA-Xを製造し、360km/h運転を目指して試験を続けていました。この知見を生かし、東北新幹線の次世代車両は360km/h運転対応になるとみられていました。

しかし、蓋を開けてみれば、E10系の最高速度は320km/hにとどまり、東北新幹線の最高速度向上は先送りされました。

最高速度向上が先送りされたのは、北海道新幹線の札幌延伸工事が難航し、開業時期の見通しが立たないことが理由でしょう。もともとは2030年度末開業予定となっていましたが、工事遅延により、早くても2030年代後半になることが確実視されています。

札幌延伸が先送りになるなら、最高速度を向上する理由が乏しくなります。そのため、当分は320km/h対応で十分ということになったのでしょう。

E10系グリーン車
E10系グリーン車。画像:JR東日本プレスリリース

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「やまびこ」「なすの」中心運用か

グランクラスについては、現在の東北新幹線でアテンダントによるフルサービスで営業しているのは、「はやぶさ」だけです。

「やまびこ」「なすの」では座席のみ営業となっていて、乗車率も芳しくない様子。ならば、これ以上、グランクラスを備えた車両を増備する必要性は乏しいといえます。

第1編成でグランクラスを設けず、最高速度320km/hで運行するのであれば、E10系をE2系の代替と位置づけ、「やまびこ」「なすの」を中心に運用することを示唆しています。「はやぶさ」は既存のE5系を中心に運用を続けるということでしょう。

「やまびこ」は「つばさ」と併結運転しますが、「つばさ」で用いるE8系の最高速度は300km/hです。その点からも、E10系の最高速度は320km/hで十分ということになります。

E10系普通車
E10系普通車。画像:JR東日本プレスリリース

 
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札幌開業時に「E10系α」?

要するに、JR東日本は、E10系を札幌延伸を考慮しない車両と位置づけているわけです。札幌延伸開業を視野に運用を開始する車両については、E10系をベースに、別途、仕様を検討する方針です。

となると、札幌延伸開業時には、360km/h対応の、グランクラス連結編成を投入する可能性も残されています。それを仮に「E10系α」とするならば、E10系αこそが、ALFA-Xの試験結果を十分に反映する次世代車両となることでしょう。

一方で、E10系αでも、グランクラスを搭載しないことになる可能性もあります。これについては、2030年以降に、最終的に判断されることになるのでしょう。

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札幌開業は相当先か?

気になるのは、JR東日本が、あえて「札幌延伸非対応」の車両を、2030年度に導入するということです。これは、札幌延伸開業の時期が相当先になることを、JR東日本が認識していることを示唆しています。

札幌開業時期は未発表で、報道では2038年頃とも伝えられています。しかし、最近の工事の進捗状況を見ると、もっと遅くなる可能性もありそうで、360km/h化の先送りは、それを裏打ちしているようにも感じられます。

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グランクラスの限界

個人的な感想としては、グランクラスのシートは非常に快適です。しかし、割高にも感じられます。新幹線はせいぜい4、5時間程度の乗車時間ですし、グリーン車で十分、というのが正直なところです。供食サービスは嬉しいものですが、車内販売か、東海道新幹線のモバイルオーダーのようなサービスがあれば事足ります。

もちろん、グランクラスを求める層もいるでしょうが、VIPなど、かなり限られるのではないでしょうか。アテンダントサービスも、人手不足の時代に維持していくのは大変です。そこがグランクラスの限界でしょう。

そのため、札幌開業時に投入される次世代車両がグランクラスを連結するかは、微妙ではないか、と筆者は考えます。導入可能性としては、個室のほうが高い気もします。VIPが求めているのも、プライバシーが保たれる個室でしょう。

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TRAIN DESKに定着の兆し

一方、新たに導入されるTRAIN DESK車両に関しては、4列シートになったことで、飛行機の「プレミアムエコノミー」的な位置づけとして、重宝されていくかもしれません。

ビジネス用シートですので、定価を支払う利用者が見込め、JRとしても座席を安売りを避けやすいというメリットがあります。人気がなくなれば、普通車として販売すれば済みますので、空気輸送は避けられます。

そう考えると、こうした「プレエコ車両」は、意外と定着していくかもしれません。(鎌倉淳)

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旅行総合研究所タビリス代表。旅行ブロガー。旅に関するテーマ全般を、事業者側ではなく旅行者側の視点で取材。著書に『鉄道未来年表』(河出書房新社)、『大人のための 青春18きっぷ 観光列車の旅』(河出書房新社)、『死ぬまでに一度は行きたい世界の遺跡』(洋泉社)など。雑誌寄稿多数。連載に「テツ旅、バス旅」(観光経済新聞)。テレビ東京「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」ルート検証動画にも出演。