ANAグループが新たな中期経営戦略を発表しました。「ANA」「ピーチ」「エアージャパン」の3つのブランドをどう展開していくのでしょうか。
3ブランドを展開
ANAは、2023年度から2025年度の3年間の中期経営戦略を発表しました。航空事業では「ANA」「Peach(ピーチ)」の既存2ブランドに加え、新たに「AirJapan(エアージャパン)」を就航。3ブランドを展開します。
おおざっぱにいえば、「ANA」がメインブランドで、「ピーチ」が格安航空会社LCC、「エアージャパン」がLCCとフルサービスキャリアの両方の特徴を取り入れたハイブリッド形です。
具体的な役割分担を、中期経営戦略の記述から読み解いていきましょう。
ANAは日本全土をカバー
まず、「ANA」は、国内線で日本全土をカバーします。エアドゥやスターフライヤー、ソラシドエアといったパートナーキャリアとのコードシェアも活用します。幹線を中心にビジネス需要など幅広い客層を取り込みます。
国際線では、おもに羽田・成田路線を中心とした主要路線を運航し、接続機能も含めて、グローバルでのネットワークを構築します。
ピーチは気軽な空の旅へ
「ピーチ」については、合理的で納得感のある価格やシンプルで使いやすい仕組みを掲げ、気軽な空の旅を提供します。
関西・成田をハブとして、国際線は短中距離アジアに特化し、レジャー・訪日需要の多い路線を中心に展開します。
国内線では、高収益路線を選択してリソースを集中します。国際線の回復に応じて、国内線の便数を調整します。
国内線は、ANAとピーチが連携して運航スケジュールを策定します。エリア・空港・時間帯などで役割を分担し、旅客動向に応じて、就航路線や便数を機動的に調整します。
エアージャパン
「エアージャパン」は、2023 年度下期に就航する第3のブランドです。LCCと競合可能な運賃水準で、機内食などのサービスはフルサービスキャリアと同等のものを選べるようにします。
機材はANAが運航してる国際線用のボーイング787-8型機を転用し、2クラス、300席程度とします。
就航予定は2023年下期です。成田を拠点に中距離国際線のみ就航します。就航先は東南アジアの主要都市で、メインターゲットは訪日観光客です。価格と品質を両立させて、競争優位性を確立します。
国際線は、これら3ブランドにより、ビジネス、レジャー、訪日客の幅広い需要をカバーします。
中・小型機中心に
グループ全体の機材は、2022年度末の267機から、2025年度末までに290~295機に増やします。ANAとエアジャパンが250~255機、ピーチが35~40機です。コロナ前の2019年度がグループ全体で300機でしたので、それに近い水準に戻します。
機材の内訳では、大型機が減少し、中・小型機が増加します。なかでも、中型機のボーイング787型機を増備し、2030年度には100機以上とします。全体の35%以上を占める計算です。
成長分野が国際線であることから国際線機材を増やし、2019年度の40%から、2030年度は45%とします。
要は、国際線用の中小型機を増やしていくわけで、大型機は利用者の多い限られた路線でのみ、見られるようになりそうです。
なお、ANAは三菱航空機のスペースジェットを25機発注していましたが、これまでの開発遅延を受けて、すでに代替機種をある程度、手配済みです。具体的には、DHC-8-Q400型機を3機導入したほか、737-800型機をリースで4機導入しています。
まとめてみると
全体をまとめてみると、国内線では、ブランド力の強い「ANA」を全国に展開するものの、人口減少などを視野に中小型機での運用を増やし、エアドゥなど中堅航空会社との連携を強化していくようです。
「ピーチ」は、新型コロナ期に国内線を拡大してきましたが、国際線の回復とともに国内線の不採算路線から撤退し、高収益路線に集中するようです。
国際線では、「ANA」はビジネスクラスの需要が高い欧米路線など主要幹線を運航します。増加が見込まれるアジアの訪日観光客が多い路線に対しては、低価格の「ピーチ」を活用します。
ビジネスクラスの需要が一定程度あるものの、格安志向の訪日客も受け入れなければ成り立たないような路線には、「エアージャパン」を活用していくようです。航続距離の長いボーイング787型機を使いますので、ピーチの主力機であるエアバスA320型機が届かない場所も広くカバーするのでしょう。
旅行者としては、ANAのこうしたブランド使い分けを頭に入れながら、上手に利用したいところです。(鎌倉淳)