ANAの定時到着率が8割を切り、国内主要航空会社で最低となりました。JALも低迷しています。2025年3月までの航空会社別「定時運航率」の統計がまとまり、定時到着率で首位となったのはスターフライヤーで90.39%、ついでスカイマークが88.07%です。
国土交通省の2024年度統計
航空会社の国内線の「定時運航率」は、国土交通省の「特定本邦航空運送事業者に関する航空輸送サービスに係る情報」で公表されています。2025年発表の最新のデータとして、2024年度(2024年4月~2025年3月)の数字がまとまりました。
航空輸送サービスに係る情報は、今回より発表内容が変わりました。これまでは出発予定時刻より15分以内に出発した便の割合を「定時運航率」として公表していましたが、今回からは、「15分以内に出発」のほかに「15分以内に到着」も発表しています。
旅客にとって重要なのは、「定時に出発したか」ではなく、「定時に到着したか」です。したがって、まずは「定時到着率」をランキングにまとめてみてみましょう。

2024年度定時到着率ランキング
2024年度定時到着率ランキングは以下のとおりです(配信先などで表の表示が崩れる場合は、こちらをご覧ください)。
| 順位 | 航空会社名 | 定時到着率 |
|---|---|---|
| 1 | スターフライヤー | 90.39 |
| 2 | スカイマーク | 88.07 |
| 3 | ソラシドエア | 87.27 |
| 4 | 日本トランスオーシャン航空 | 85.04 |
| 5 | ピーチ | 84.56 |
| 6 | スプリング・ジャパン | 83.90 |
| 7 | エアドゥ | 82.00 |
| 8 | 日本航空 | 79.69 |
| 9 | ジェットスター | 78.87 |
| 10 | 全日空 | 78.15 |
統計上の「日本航空」は、日本航空、ジェイエア、日本エアコミューター、北海道エアシステム、日本トランスオーシャン航空(一部路線)の合計、「全日空」は、全日本空輸、ANAウイングスの合計です。
この統計は、客席数が100または最大離陸重量が5万kgを超える航空機を使用する航空会社が対象です。小型機使用のフジドリームエアラインズやアイベックスなどは対象外です。
スターフライヤーが首位
「定時到着率」で首位に輝いたのはスターフライヤーです。90.39%と、主要航空会社で唯一の90%超えとなりました。つづいてスカイマークが88.07%、ソラシドエアが87.27%で追います。中堅航空会社が上位に名を連ねました。
いっぽう、低迷したのは大手航空会社です。全日空(ANA)は78.15%と最下位。日本航空(JAL)も79.69%で8割を切りました。
LCCでは、ジェットスターが78.87%と二番目に低い数字でしたが、ピーチは84.56%と5位に踏みとどまっています。
2024年度定時出発率ランキング
次に、従来から公表されてきた「定時出発率」で見てみます。以下のようなランキングになっています。前年度比較も添えました。
| 順位 | 航空会社名 | 2024年度 | 2023年度 |
|---|---|---|---|
| 1 | スターフライヤー | 92.67 | 90.73 |
| 2 | スカイマーク | 91.57 | 91.38 |
| 3 | ソラシドエア | 86.98 | 89.12 |
| 4 | 日本トランスオーシャン航空 | 86.53 | 91.55 |
| 5 | ピーチ | 85.60 | 79.65 |
| 6 | スプリング・ジャパン | 84.06 | 90.75 |
| 7 | エアドゥ | 83.95 | 81.87 |
| 8 | 日本航空 | 83.70 | 84.75 |
| 9 | 全日空 | 82.73 | 83.47 |
| 10 | ジェットスター | 78.15 | 83.49 |
ジェットスターが最下位に
定時出発率も上位の順位に変わりはなく、スターフライヤーが92.67%で首位、スカイマークが91.57%で2位となりました。90%台にのせたのはこの2社だけで、「定時運航率の高い会社」と分類していいでしょう。
下位では順位が入れ替わって、全日空が9位、ジェットスターが10位の最下位となりました。全日空は定時出発率では82.73%と80%台を維持しています。いっぽう、ジェットスターは78.15%と、唯一の70%代に沈みました。
運航中に遅延を拡大
ここで興味深いのは、全日空は定時出発率は82.73%とそれなりの数字なのに、定時到着率は78.15%と、4ポイント以上も数字を下げていることです。「運航中に遅延を拡大させている」ことになります。
逆に、ジェットスターは、定時出発率は78.15%と低いのですが、定時到着率は78.87%と、わずかながら改善させています。こちらは「運航中に遅延を取り戻している」わけです。
定時運航率の発着差
ここで、全社の定時出発率と定時到着率の差を見てみましょう。「定時運航率の発着差」と呼びます。
| 順位 | 航空会社名 | 定時出発率 | 定時到着率 | 発着差 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | スターフライヤー | 92.67 | 90.39 | 2.28 |
| 2 | スカイマーク | 91.57 | 88.07 | 3.50 |
| 3 | ソラシドエア | 86.98 | 87.27 | -0.29 |
| 4 | 日本トランスオーシャン航空 | 86.53 | 85.04 | 1.49 |
| 5 | ピーチ | 85.60 | 84.56 | 1.04 |
| 6 | スプリング・ジャパン | 84.06 | 83.9o | 0.16 |
| 7 | エアドゥ | 83.95 | 82.00 | 1.95 |
| 8 | 日本航空 | 83.70 | 79.69 | 4.01 |
| 9 | 全日空 | 82.73 | 78.15 | 4.58 |
| 10 | ジェットスター | 78.15 | 78.87 | -0.72 |
定時運行率の発着差が最大となったのが全日空で、運航中に4.58ポイントも定時率を悪化させています。つづいて、日本航空の4.01ポイント、スカイマークの3.50ポイント、スターフライヤーの2.28ポイントがつづきます。
いっぽう、運航中に定時率を改善させているのが、ジェットスターとソラシドエアの2社です。改善には至らないものの、スプリング・ジャパンやピーチも発着差が小さいです。
運航中の遅延はなぜ生じるか
では、「運航中の遅延」が生じる理由は何でしょうか。お察しの方も多いでしょうが、おそらくは空港の混雑が原因で、出発時、到着時に滑走路の順番待ちが発生するためでしょう。
ゲートを離れてから順番待ちで離陸まで時間がかかることもありますし、到着時に順番待ちで上空を旋回することもあります。
こうした順番待ちが多いのが混雑空港です。航空法第107条の3第1項で指定されている混雑空港は成田、羽田、関西、伊丹、福岡の5空港ですが、法的に混雑空港に指定されていなくても、新千歳や那覇空港でも離発着の順番待ちは多く発生しています。
全日空、日本航空の大手2社は、混雑空港の便数が多く、「運航中の遅延拡大」が生じやすい傾向があります。とりわけ、最近の羽田空港の混雑は深刻で、羽田発着枠の多い大手2社の定時運航率が低迷している理由にもなっているとみられます。
スターフライヤーの定時出発率
ちなみに、スターフライヤーは、路線別の定時出発率を公表していて、2024年度のデータでは、次のようになっています。
・羽田~山口宇部 95.0%
・羽田~関西 94.2%
・羽田~北九州 92.9%
・羽田~福岡 91.7%
・中部~福岡 91.2%
意外なことに、定時出発率がもっとも低いのは羽田路線ではなく、中部~福岡線です。そして、福岡空港に絡む2路線の定時率が低くなっています。
最近の福岡空港は、たしかに混雑が激しく、空港での離陸待ちや着陸待ちが多いようにも感じられます。
運航中の遅延拡大が多いのは、全日空、日本航空、スカイマーク、スターフライヤーの順でした。この4社に共通するのは、羽田~福岡線を有することです。つまり、羽田だけでなく、福岡空港も、遅延が頻発しやすい状況になっていることがうかがえます。
機材故障の割合
国交省の統計には、遅延理由も開示されていて、各社とも圧倒的に多いのが「機材繰り」です。一度遅延が生じると、それが次の便の「機材繰り」に影響して、遅延が拡大していきます。そのため、「機材繰り」の遅延が多いのは当然です。
次に多いのが「その他」で、その次が「機材故障」です。全遅延に占める機材故障の割合は、航空会社によってだいぶ異なります。
| 順位 | 航空会社名 | 機材故障数 | 遅延数 | 機材故障率 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | ピーチ | 392 | 6088 | 6.44% |
| 2 | 全日空 | 2349 | 44771 | 5.25% |
| 3 | スターフライヤー | 87 | 1661 | 5.24% |
| 4 | スカイマーク | 198 | 4767 | 4.15% |
| 5 | スプリング・ジャパン | 11 | 385 | 2.86% |
| 6 | 日本航空 | 1108 | 43492 | 2.55% |
| 7 | エアドゥ | 89 | 3780 | 2.35% |
| 8 | ソラシドエア | 78 | 3766 | 2.07% |
| 9 | 日本トランスオーシャン航空 | 61 | 3283 | 1.86% |
| 10 | ジェットスター | 101 | 6714 | 1.50% |
運航規模が近い会社で比較すると、全日空の5.25%に対し、日本航空は2.55%。ピーチの6.44%に対し、ジェットスターは1.50%と差が大きくなっています。総じていえば、ANA系列(ANA、ピーチ)に機材故障の割合が高くなっています。
ANA系列でなぜ機材故障の割合が高いのかは不明です。ANAグループもJALグループも、保有機材の平均機齢はともに10年程度で、大差はありません。
そのため、機材の古さより、機材繰りの余裕に起因しているのかもしれません。ANAグループのほうが余分な機材が少なく、故障時に代替機を用意する余力が小さい可能性がある、ということです。
ちなみに、欠航便に於ける機材故障率は、全日空が4.46%、日本航空が5.75%で、日本航空のほうが若干高くなっています。日本航空のほうが、機材故障時に遅延より欠航で処理をすることが多いのかもしれません。なお、全体の欠航率は、今年度は発表されていません。
空港混雑に起因
まとめてみると、日本の航空会社では、運航中に遅延が拡大する傾向があることから、空港混雑に起因する遅延が多いことを示唆しています。
空港混雑は利用者数の多い拠点空港で起こりがちなため、拠点空港の発着便が多い全日空、日本航空の大手2社の定時運航率が低くなる傾向があります。
ただ、拠点空港間の路線が多いスカイマークでは、定時運航率を高く維持していますので、空港混雑だけが原因だけでもなさそうです。機材の状態や、それ以外の要因も影響している可能性がありそうです。(鎌倉淳)























