2014年度の航空会社別「定時運航率」「欠航率」の統計がまとまりました。国土交通省の「特定本邦航空運送事業者に関する航空輸送サービスに係る情報」で公表されています。
ここでは「定時運航率」と「欠航率」の2014年度(2014年4月~2015年3月)の数字をランキングにまとめて、順にみていきます。なお、統計上の「日本航空」は、日本航空、ジェイエア、ジャルエクスプレスの合計、「全日空」は、全日本空輸、ANAウイングスの合計です。
この統計では、客席数が100または最大離陸重量が5万kgを超える航空機を使用する航空会社のみが対象ですので、小型機使用のフジドリームエアラインズやアイベックスなどは対象外です。
大手2社の運航は安定
まずは、定時運航率をみてみましょう。
【定時運航率ランキング】(単位:%、カッコ内は前年)
- 日本航空 93.04(93.55)
- 全日空 92.45(92.60)
- 春秋航空日本 91.37(–)
- スターフライヤー 90.85(91.83)
- バニラ・エア 90.27(73.10)
- エアドゥ 90.25(90.87)
- ソラシドエア 88.81(90.53)
- 日本トランスオーシャン 87.99(91.56)
- ジェットスター 85.33(87.69)
- スカイマーク 83.75(87.22)
- ピーチ 78.17(83.12)
平均 90.86(91.80)
定時運航率は、出発予定時刻より15分以内に出発した便のことをいいます。「出発」とはブロックアウトした時間。つまり、機体が動き出した時間のことです。定時運航率は運航した便に対する率ですので、欠航は反映していません。
首位は日本航空で93.04%。続く全日空が92.45%で2位です。両社は前年度も同水準の定時運航率でしたので、やはり大手の運航は安定しているといえます。全体平均では昨年より1ポイント近く数字が落ちていて、ほとんどの航空会社が前年より定時運航率が低くなっています。
春秋航空が初登場3位
2014年度の定時運航率で健闘したのは新規格安航空会社(LCC)でしょう。春秋航空日本が初登場3位、バニラ・エアは前年最下位から5位に浮上しています。春秋航空日本は大手に匹敵する数字ですが、2014年8月運航開始で、現段階では余裕を持った機材繰りをしているためか、高い定時率を達成することができたようです。
一方、既存LCCのジェットスターとピーチはそれぞれ数字を落とし、とくにピーチは5ポイント近く悪くなり80%を割りました。定時運航率が80%を割ると、大事な用事では使いづらくなりそうです。
ピーチはなぜ遅れるのか?
では、ピーチはなぜこんなに遅れるのでしょうか。ピーチの遅延の原因を見てみると、2014年度の遅延便数のうち機材繰りを理由とするものが2,728便もあります。遅延便全体が3,563便ですので、その76%が機材繰りによって遅延しているのです。LCCはスケジュールを詰めて運航していますので、そのしわ寄せがきているとみてよさそうです。
これに比べてジェットスターは機材繰りによる遅延は60%に過ぎません。かわりに「その他」を理由とする遅延が36%にも達しています。「その他」の内容は統計からはわかりません。
遅延理由は外部からはわからない
ちなみに、日本航空は遅延便総数が15,137で、そのうち機材繰りが10,492(69%)、その他が3,466(22%)、全日空は遅延便総数が21,975で機材繰りが6,390(29%)、その他13,824 (62%)です。日本航空と全日空でこんなに遅延理由が異なるというのも考えづらく、分類の仕方が会社によって異なる、ということなのでしょう。
全日空やジェットスターは、「機材繰り」の定義が狭く、遅延の多くを「その他」に分類する傾向があるようです。
つまり、遅延理由の本当のところは、外部からはよくわからない、ということです。
欠航率はピーチが2年連続首位
次に、欠航率を見てみましょう。
【欠航率ランキング】(単位:%、カッコ内は前年)
- ピーチ 1.11(0.55)
- スターフライヤー 1.20(1.59)
- 全日空 1.31(1.21)
- バニラ・エア 1.31(2.00)
- 日本航空 1.34(1.26)
- ソラシドエア 1.40(0.85)
- 日本トランスオーシャン 1.44(1.13)
- スカイマーク 1.63(1.03)
- ジェットスター 1.68(1.00)
- 春秋航空日本 1.84(–)
- エアドゥ 2.32(1.50)
平均 1.22
欠航率は運航予定便数に対する欠航便の割合です。運航予定便数とは当日運航する予定だった便のことで、事前に運航を撤回する「運休」とは異なります。
欠航率では、意外なことに定時運航率ワーストだったピーチが一番少なく、首位となりました。ピーチは前年度も0.55%と非常に低かったですが、2014年度も1.11%という好成績を残しました。バニラ・エアも前年の2%から挽回して大手航空会社並みになっています。
遅れるけれど欠航はしない
一方で、ジェットスターは数字を落とし1.68%。欠航率ではピーチと明暗を分けました。とはいえ、1.68%というのは、60便に1便程度の欠航ということで、逆にいえば60回のうち59回は飛ぶわけで、それほど気になる数字ではありません。
2014年度は日本のLCCが3年目に入った時期で、運航も安定期に入りました。総括すると、定時運航率は大手に比べて劣ることが数字に表れていますが、欠航率ではそれほど大きな差はありません。日本のLCCは、「たまに遅れるけれど、ほとんど欠航はしない」という形で根付きつつあるようです。