マレーシアの格安航空会社LCCエアアジアの子会社「エアアジア・ジャパン」が2016年春に国内線に再参入すると発表しました。拠点を中部国際空港として、国土交通省に航空運送事業の許可を申請しています。
中部空港を拠点とするLCCは初めてですが、成田や関空拠点よりも条件面では厳しそう。はたして成功するのでしょうか?
楽天、アルペン出資の航空会社
エアアジアは2011年にANAと共同でエアアジア・ジャパンを設立し、日本の国内線事業に初参入しました。しかし、業績低迷で2013年6月に撤退、合弁を解消しています。その後、2014年7月に新生エアアジア・ジャパンを設立し、楽天やアルペンなどから出資を受けて事業化を目指してきました。
再参入発表時点から、中部空港が拠点の最有力候補と目されてきました。そのため、今回の発表はいわば「既定路線」なわけですが、それでもちょっとばかりの驚きを以て迎えられているようです。「中部拠点でLCCはやっていけるのか?」という疑問が誰の頭にも浮かぶからでしょう。
中部の旅客は少なくない
中部空港発着の国内路線の旅客数は少なくはありません。2014年度の「特定本邦航空運送事業者に係る情報」によりますと、中部~札幌の旅客数は年間で122万1,374 人(搭乗率66.7%)、中部~仙台が13万4,414人(同53.9%)、中部~福岡が74万9,776人(同65.4%)、中部~那覇が96万9,516人(同74.0%)となっています。
これを関西空港と比較すると、関西~札幌は131万4,014人(同77.4%)、関西~仙台は29万368人(同87.4%)、関西~福岡は54万7,851人(同75.9%)、関西~那覇は115万7,212人(同75.1%)です。関西発着よりも中部発着のほうがおおむね旅客数は少ないですが、極端な差はありません。
関西空港には近くに伊丹空港や神戸空港があってこの数字ですから、単純な比較はできません。とはいえ、中部路線にも多くの旅客がいるのですから、搭乗率を上げることができれば、中部発着のLCCでも成功の可能性はある、と思えます。
問題点があるとすれば、客単価でしょう。高搭乗率を誇るピーチも国内線の客単価は低く、2014年度の一人あたりの旅客収入は7,200円に留まっています。新生エアアジア・ジャパンがこれと同水準の単価しか得られないとすれば、やっぱり苦しいでしょう。
国際線に重点
新生エアアジア・ジャパンは、当初は保有機2機でスタートし、2016年末に6機、2017年末に11機、2018年末に16機と年5機ずつ増機するとのことです。最大で20機程度まで増やす見通しです。
就航開始は2016年3月下旬の夏ダイヤ開始時を予定しています。具体的な就航先は「未定」としていますが、主に国際線に重点を置くようで、東南アジアからの訪日外国人客や乗り継ぎ客の獲得などを念頭に路線を検討します。アジア各地から中部へ国際線で運び込み、国内線に乗り継いでもらう、というネットワークを想定している様子です。
日本発着の国際線のアジア路線は軒並み好調です。ピーチの黒字の要因も国際線の好調に支えられているようです。現在の日本のLCC各社の国内線の状況を見ている限り、新生エアアジア・ジャパンも国内線で採算を取るのは難しそう。しかし、国際線でうまく集客できれば、トータルで採算を取ることは可能なのかもしれません。