スカイマーク(SKY)が、一部路線の機内で無料無線LANサービス「SKYMARK FREE Wi-Fi」の提供を開始すると発表しました。2014年8月7日に就航予定のエアバス製A330-300型1機で利用可能になります。同機で運航する羽田~福岡線、羽田~札幌(新千歳)線の一部便で利用できます。すでに新規導入したA330-300型2機にも、アンテナ搭載などの整備を行う予定で、2014年末までにA330-300型3機で無料Wi-Fiが利用可能になります。
スカイマークはパナソニック系を採用
航空機内で無料でWi-Fiが使えるのは、国内ではスカイマークが初めてです。
スカイマークが採用するのは米パナソニック・アビオニクスの航空機向け衛星通信システム「eXConnect」です。就航機の胴体には衛星通信用のアンテナが取り付けられ、ドーム状のカバーで覆われています。パナソニック・アビオニクス社は、アメリカで1979年に設立された会社で、世界の200社以上の約3,700機に機内エンターテイメント/通信システムを提供しています。
実効通信速度は明らかにされていませんが、メールなどテキストデータのやり取り程度の利用を想定しているとのこと。プレスリリースには、「通信衛星を介してご提供するサービスのため、動画再生といった通信容量の大きなデータのやりとりには適しておりません」と明記されています。
一般に、こうしたサービスは、航空機と衛星や基地局との間の通信速度が決まっていて、それを機内の利用者で分け合います。そのため、機内の同時利用人数によって個々の端末の通信速度は変動しますから、利用時の実効通信速度がどのくらいかは一概にいえません。「eXConnect」の場合、衛星の通信速度は10~50Mbps程度のようですので、仮に機内で100人が利用したら、0.1~0.5Mbps程度になるのでしょうか。
JALは国内線と国際線でサービス会社が異なる
パナソニック・アビオニクスの無線LANは、JALの有料国際線Wi-Fiサービス「JAL SKY Wi-Fi」でも使われていて、その利用者の経験談でも、通信速度は0.1Mbps~0.5Mbpsくらいのようです。仮に0.1Mbps程度なら、動画を見るにはつらいですが、それ以外のインターネットアクセスに大きなストレスはなさそうです。ただし、JALは有料なので利用者が限られますが、スカイマークは無料です。そのため、スカイマークの無線LANはJALよりは重くなるかもしれません。
JALは国内線においても、有料無線LANサービス「JAL SKY Wi-Fi」を2014年7月23日から3機体制で開始しています。JALの国内線Wi-Fiは、国際線と違い米Gogo社のシステムを採用しています。こちらの利用者の経験談では、1~2Mbpsくらいの速度が出るとのこと。1Mbpsあれば、動画も見ることができそうで、やはり、有料サービスは動作が軽いようです。
ちなみに、JAL SKY Wi-Fiは、国際線が1時間10.15ドル、24時間が18.80ドルです。国内線は距離と利用端末により異なりますが、フライトごとに500円~1200円です。東京~福岡の場合で、スマホが500円、ラップトップとタブレットが700円です。使用機材はボーイング777-300型機です。
ANAは機内Wi-Fiでは立ち遅れか
一方、ANAは国際線で公衆無線LANサービス「ANA Wi-Fiサービス」を2014年3月1日から提供開始しました。こちらはスイス・OnAir社のサービスを利用しています。OnAir社は2012年にエアバス社によって設立された会社ですが、報道によりますと、衛星~航空機間の通信速度は432kbpsとのことです。OnAir社は世界的なカバーエリアが広いのが強みのようですが、この通信速度が事実なら利用者にはつらいでしょう。さすがに近い将来に更新が予定されている様子です。
ANA国際線のWi-Fi使用料はデータ容量によって分けられています。5MBが6ドル、10MBが12ドル、20MBが24ドルです。JALの24時間で18.8ドル容量無制限に比べると、価格が高い割に容量が小さいことは否めません。通信速度の制約が価格体系に反映されているのでしょうか。機材はボーイング777-300ERとボーイング767-300型機です。ANAは国内線での公衆無線LANサービスは実施しておらず、予定も発表されていません。
機内Wi-Fiについて簡単にまとめると、速度はJAL、価格なら無料のスカイマークです。ANAは今のところ残念でした。