富士登山が空前の大ブーム。来年は世界遺産に登録される見込みで、混雑はさらに拍車がかかりそうです。
さて、冨士山に登る際に、いちばん悩むのが「どの山小屋に泊まるか」という点です。とくに吉田口から登る場合、山小屋は十数軒もありますので、「どう選んだらいいの?」という疑問に突き当たります。
標高が高い方が登頂には有利だが
富士山初心者が悩むのは、主に以下の二点です。
1 どの高さで泊まるのがよいか
2 食事や寝るスペースで、快適な山小屋はどれか
1については、なるべく標高の高いところで泊まる方が登頂には有利です。仮に一番高い位置にある御来光館で泊まれば、山頂までは1時間ほどです。頂上でご来光を見たい、という人はもちろん、そうでない人も、初日の登山でこの標高まで来られれば登頂はほぼ成功したようなものです。
ただ、標高の高い場所で泊まると、高山病になりやすいというマイナスポイントがあります。高度順応という視点でみれば、3000メートル以下の標高で泊まって身体を慣らしてから、最終日にアタックしたほうが無難、という考え方も成り立ちます。そうなれば、七合目あたりに泊まるのが適切、ということになります。
しかし、たとえば標高2800メートルの地点で泊まると、翌日は1000メートル近く登り、さらに下山をしないといけなくなります。2日目の負担が大きく、2800メートルから3700メートルに上がる際に、高山病の症状が出る可能性もあります。
ということで、1に完全な答えはありません。過去、3000メートル程度の標高で高山病の症状が出たことがある人は、それ以下で泊まることをおすすめします。そうでない方は、3400メートルの本八合目を目指すことをおすすめします。本八合目には収容力の大きな山小屋があり泊まりやすく、翌日の登頂がラクだからです。また、3000メートルが初体験の人は、七合目の上のほうか(東洋館など)、八合目の下のほう(白雲荘など)にしておけばいいでしょう。
快適さなら七合目の山小屋
2については、一般的には、上に行くほど山小屋は混雑し、詰め込みも激しくなります。なので、下の方の山小屋のほうが人が少なくて快適、といえます。といっても、八合目以上の山小屋はどこも大差ありません。七合目の山小屋は、空いている時期はゆったり泊まらせてくれる場合があります。食事に特徴を出している山小屋も、ほとんどが七合目です。
要するに、快適な山小屋ライフを味わいたいなら、七合目、という選択肢になるでしょう。とはいっても、七合目でもそれほど快適とはいえないのが、富士山山小屋です。とくに繁忙期は、七合目も八合目も大差ないくらい詰め込まれます。
当日ダメなら途中で泊まる
裏技としては、本八合目の山小屋を目指しながら、だめなら途中で泊まる、という方法があります。平日の場合、山小屋が完全に満室になることは珍しいので、予約無しでこの方法が使えます。週末は、予約無しで登ると泊まれない可能性があるので、本八合目の山小屋の予約をして、たどり着けなかったら、途中の空いている山小屋に泊まる方法がよいでしょう。この場合、途中の山小屋に泊まると、予約していた山小屋のキャンセル料を支払う必要があります。
唯一、「トモエ館」に限っては、本八合目と七合目に山小屋を持っていて、当日変更が可能です。なので、トモエ館の本八合目に予約を入れておき、途中でしんどくなったら七合目に泊まる、という手もあります(満室の場合は断わられます)。
ただ、率直な話、疲れて七合目で泊まるような人は、山頂まで行ける可能性は高くありません。なので、やはり目標を高く持って、八合目くらいまでは行くつもりで予約しておけばいいのではないでしょうか。八合目で泊まって高山病にならなければ、登頂に失敗する可能性は低いといえるでしょう。