東京都が新たな地下鉄建設計画を公表しました。「都心部・品川地下鉄構想」と「都心部・臨海地域地下鉄構想」です。
後者については、中央区が「都心部と臨海副都心を結ぶ地下鉄新線」としてすでに発表してる構想とほぼ同一です。これについては、「銀座~臨海副都心の『地下鉄新線構想』を東京都中央区が発表。BRTとの競合路線は実現するのか?」で内容をまとめてあります。
一方、前者の「品川地下鉄構想」は、今回初めて公になった地下鉄構想です。これについて経路と運行形態を考えてみましょう。
品川~白金高輪間の新路線
「都心部・品川地下鉄構想」(以下「品川線」)は、東京都が2015年7月10日に発表した「広域交通ネットワーク計画について≪交通政策審議会答申に向けた検討のまとめ≫」で明記されました。具体的な区間は書かれていませんが、地図を見ると、品川駅と白金高輪駅付近を結んでいます。
東京新聞7月11日付け朝刊では、「都心と品川駅を結ぶ路線は赤坂、六本木方面からの乗り入れを想定。東京メトロ南北線の白金高輪駅などからの延伸が有力視される」としています。その他報道各社の記事内容を見ても、品川駅~白金高輪駅を結ぶ計画であることはほぼ間違いないようです。
「広域交通ネットワーク計画について」(東京都)より
南北線乗り入れが前提?
白金高輪駅には東京メトロ南北線と都営三田線が乗り入れています。「品川線」はそのどちらに乗り入れるのでしょうか?
上記東京新聞記事は東京メトロのコメントを載せており、それによると「近隣にある南北線の他の駅はトンネル構造上、分岐が難しい。白金高輪止まりとなっている電車を品川へ流すことができるので、運行面も合理的な場所だ」としています。つまり、南北線乗り入れを前提とした記事になっています。
南北・品川線と三田・目黒線に分ける?
現在、南北線は日中毎時10本のダイヤで、うち4本が白金高輪折り返しです。三田線も同様の日中毎時10本のダイヤで、うち4本が白金高輪で折り返します。それぞれの路線から毎時6本ずつが白金高輪~目黒に乗り入れており、この区間は日中毎時12本が走っています。
仮に品川線が建設されて、南北線にのみ乗り入れる場合、日中毎時4本というわけにはいかないでしょう。やはり最低毎時10本は必要でしょうから、南北線を全て品川に流すのが合理的です。そして三田線をすべて目黒に流せば、運行形態もすっきりします。品川~赤羽岩淵という「南北・品川線系統」と、目黒~高島平という「三田・目黒線系統」に分ける形です。
しかしそうなると、東急目黒線から地下鉄南北線への乗り入れがなくなってしまいます。目黒線沿線から南北線沿線へ通勤・通学している利用者からは苦情が来るでしょう。
南北線・三田線に分けて乗り入れさせたら?
では、品川線を南北線と三田線に分けて乗り入れさせた場合はどうなるでしょうか。その場合は、毎時12本として、6本ずつを南北線・三田線に振り分けることになるでしょう。南北線、三田線、東急目黒線、品川線のいずれも日中5分間隔となります。
品川駅から南北線・三田線の全ての駅に乗り換えなしで行けることになりますので、品川線の価値を最大化させるなら、この運行形態が有力でしょう。
ただ、三田線は三田~大手町間でJRと併走します。品川からこれらの方面へ向かうにはJR利用のほうが便利でしょうから、品川・三田線直通利用者はそれほど多くないかもしれません。
また、白金高輪駅の構造も問題になりそうです。現在は三田線は1、4番線にしか入ることができず、南北線は2、3番線にしか入れません。
品川線を白金高輪駅でどう接着させるのかはわかりませんが、仮に現在ある2本の引き上げ線を品川方面に伸ばす形にするのなら、品川線から三田線に乗り入れる系統と目黒線から南北線に乗り入れる系統で平面交差が発生します。日中はともかく、ラッシュ時に交互乗り入れさせる場合、この構造がネックになるでしょう。平面交差を避けるには、南北・品川線と三田・目黒線で系統を分けるか、別の接着方法を採る必要があります。
運行主体はメトロか都営か?
「品川線」の運行主体については未定です。南北線だけに乗り入れるのなら東京メトロになるのでしょうが、三田線に乗り入れるのなら、どちらかが1種事業者となり、どちらかが2種事業者になるでしょう。
現在の白金高輪~目黒間は、東京メトロが1種事業者として南北線を運行し、東京都交通局が2種事業者として東京メトロから施設を借りて三田線を運行しています。白金高輪~品川もそれと同じか、逆になるかもしれません。
品川~白金高輪間の経路についても発表はありません。桜田通りから第一京浜に抜けるまでがなかなかの難工事になりそうです。途中駅が作られるかどうかもわかりませんが、作られるとすれば明治学院のあたりでしょうか。
品川以南の延伸はあるか?
もし、品川線が建設されたとすれば、その後は品川以南の延伸が議論される可能性もあります。それについては、現状ではもちろん全く白紙です。品川シーサイドや八潮方面へ伸ばすのが自然に思えますが、JR羽田アクセス線構想と重なりそうです。
筆者の勝手な妄想をいえば、大井町まで伸ばして東急大井町線と乗り入れて欲しいところです。そうすれば田園都市線から大井町を経て品川へ行けることになり、田園都市線の混雑も少しは解消されるでしょう。
なんであれ、この計画は発表されたばかりで、事業化するのかどうか、総工費はいくらか、いつ開業するのか、などは何も決まっていません。品川駅に地下鉄があったほうがいいと思いますし、採算面も問題は小さそうなので実現可能性は高いと思いますが、できるとしても2030年頃になるのではないでしょうか。