ANAは、成田空港発のパリ線を2015年10月下旬の冬ダイヤから運休します。一方、羽田空港発のパリ線の機材を大型化することを発表しました。また、新たに成田-ブリュッセル線を開設します。
羽田線にB787-9を投入
ANAの成田─パリ線は1日1便毎日運航していますが、運休後も共同運航(コードシェア)はしない予定です。羽田の昼間枠を使ったパリ線は、これまでB787-8型機(169席)を使用していましたが、これをB787-9型機(215席)に大型化します。
羽田空港の昼間帯に国際線を運航する場合、同じ国へ飛ぶ成田路線を維持しなければならない、という行政指導があります。これがよく知られた「成田縛り」ルールですが、ANAは羽田昼間枠でパリ線を運航する一方、成田発着のフランス路線を全廃し、コードシェアもしませんので、成田縛りルールに適合しないことになります。
ANAが成田縛りに適合しない路線運用をするのは、ロンドン線に次いで2例目です。ロンドン線については、「「成田縛り」ルールは崩壊するか。ヴァージン撤退でANAがコードシェア失い、羽田運航ができなくなる?」をご覧ください。
ロンドン線の場合はヴァージン撤退という、ANAにとっては外部要因による「ルール破り」でしたが、パリ線の場合は主体的にルールを破ったことになります。となると、成田縛りルールは事実上撤廃されたと考えていいのでしょうか。
地元自治体の了承があればよい?
Aviation Wireのコラム「ANA、成田-パリ線運休へ」によりますと、「ANAの成田路線拡大が続いていることから、地元自治体などもパリ線運休を了承したとみられる。」としています。ANAは成田から他の路線をたくさん運航してくれているからパリ線を止めてもいいよ、と地元が受け入れたので、成田縛りの例外にします、ということのようです。
この報道が事実なら、成田縛りルールそのものは今後も維持されるものの、成田から他国へ路線を新たに作っていけば、例外が適用されるということになります。実際、今回、ANAは成田-ブリュッセル線を開設しますので、フランス路線をベルギー路線に移しただけで成田空港の発着便数を減らすわけではありません。
しかし、成田から他国へ新路線を展開できるのは、事実上日本の航空会社だけでしょう。となると、たとえば、ブリティッシュ・エアウェイズが成田-ロンドン路線から撤退して羽田に集約する、ということは難しいことになります。
成田縛りは、成田空港建設の歴史的経緯を踏まえ、周辺自治体への配慮で設定されたルールです。したがって、地元が了承すればルールに適合しなくてもいい、という考え方は、行政の立場としてはありうるのかもしれません。
でも、こうなると外資系航空会社が不利になるアンフェアなルールといわざるをえませんし、対外的に通用するのでしょうか? 透明性のある基準を明らかにしてほしいものです。