日韓共同きっぷの販売が終了することになりました。日本国内主要駅から韓国ソウル駅までの鉄道・船がセットになった片道きっぷで、1988年に販売開始された歴史あるきっぷです。販売終了は2015年6月30日です。
ソウルオリンピック時に販売開始
日韓共同きっぷは、ソウルオリンピックの開催時に、日韓間の航空輸送が不足すると懸念されたことを受けて発売されたと記憶しています。オリンピック終了後も販売が継続され、当時はまだ航空運賃が高かったことから、このきっぷはそれなりに人気がありました。
しかし、日韓間の格安航空券が往復3万円台になった頃から価格優位性が薄れ、趣味的なきっぷに変わったような気がします。筆者も2000年頃に一度だけ利用しましたが、ジェットフォイルを使っても大阪~ソウルが丸一日かかり、実用性はないなあ、と実感しました。
日韓間で販売不均衡
日韓共同きっぷは、韓国側でも販売されています(韓日共同乗車券)。利用状況の詳細は明らかになっていませんが、2010年の韓国紙報道によりますと、2009年は韓国側2104人、日本側1572人だったとのこと。1枚あたりの価格は2万円台ですから、日本側の売り上げは年間3000万円~4000万円程度だったと推定されます。
韓国への日本人観光客が激減した現時点では、日本側の売り上げはもっと低くなっているとみられ、すでに商売としては成り立っていなかったと思われます。一方、日本への韓国人観光客の急増を受けて、韓国側と日本側の販売不均衡が広がっていたようです。
新きっぷは「往復」がポイント
こうしたことを背景として、日韓共同きっぷは廃止となります。代替として、JR西日本と韓国鉄道公社は、両国の鉄道路線と船舶をセットにした新しい旅行商品を発売します。これは、往復切符とフリー切符を組み合わせたものです。
この新商品は、日本国内の出発地から韓国・釜山までのJR線・船舶の往復と、「コリアレールパス」をセットにしたもの。韓国側は、韓国内の出発地から釜山までの韓国高速鉄道(KTX)、釜山からの船舶、「JR-WEST RAIL PASS」をセットにして販売します。
日韓共同きっぷとの最大の違いは「往復きっぷ」である、という点でしょう。それぞれの鉄道フリーきっぷがセットになっていることから、ある程度の期間を滞在する旅行者向けといえるかもしれません。
LCCが普及したいま、鉄道と船で日韓間を往復旅行するニーズがどれだけあるのかはわかりません。ただ、「鉄道・船往復+フリーエリア」という伝統的なスタイルで、セットのチケットが残されたのは幸いというべきかもしれません。