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京急、羽田空港へ有料特急導入か。京成新型車両と共通化、成田空港へ直通も?

「羽田・成田ライナー」

京急が有料特急車両の導入を検討することを発表しました。京成電鉄と共通の車両を検討することから、羽田空港~成田空港間を結ぶ「羽田・成田ライナー」が登場する可能性が高まりました。

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新型有料特急車両を導入へ

京浜急行電鉄と京成電鉄は、2025年10月31日に、空港アクセスの更なる充実などを図ることを目的とした「共同検討」に関する合意書を締結しました。そのなかで、京急が新たな輸送サービスの検討に着手することを明らかにしました。

このサービスでは、「京成電鉄が2028年度より運行を計画している新型有料特急車両との共通化」を検討することが明記されました。

すなわち、京急が有料特急車両を新たに導入し、その仕様は京成の「新型特急車両」と同じになる、ということです。

京急600系羽田空港行き

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「羽田・成田ライナー」

京成の「新型有料特急」は、押上~成田空港間での運転を予定しています。これと同仕様の車両を京急が用意するということは、共通運用を想定していることになります。

京成の新型有料特急が、都営浅草線を介して京急線に直通運転するということです。その発着地は、おそらく羽田空港でしょう。

つまり、羽田空港~品川~押上~成田空港間を結ぶ有料特急を、両社共同で運行する計画が動き出した、ということです。これを「羽田・成田ライナー」と呼ぶことにしましょう。

京成新型有料特急
画像:京成電鉄中期経営計画 D2プランより

 
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京成社長も発言

京成の新型特急については、同社の天野貴夫新社長が、朝日新聞電子版2025年9月3日付で、「将来的に押上から先に入っていけるとよりいい」と発言しています。

都営浅草線や京急線への直通に意欲をみせていたわけです。「羽田・成田ライナー」計画が、現実に動き出していることを裏付けています。

新型有料特急の車両は、地下鉄直通可能な仕様で設計され、京成、都営、京急線内を相互直通運転できる形になる、ということです。

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地上設備も整備中

京急では、品川駅の2面4線化や、羽田空港第1・第2ターミナル駅での引き上げ線の整備をおこなっています。これらは2030年ごろまでに完成する予定です。完成すれば、羽田空港発着の列車を毎時3本増発できる見通しで、有料特急の受け入れ余力が生まれます。

羽田空港の引き上げ線は2線を作るので、1線を一般列車用にして、もう1線を有料特急用に回すことができます。これにより、車内清掃などの問題もクリアできます。

つまり、2030年頃に、羽田・成田ライナー運行のための、地上設備の準備が整うわけです。今回、京急が、京成と同仕様の車両の導入方針を示したことで、地上面でも車両面でも、「羽田・成田ライナー」実現への道筋が明確になりました。

京成の車両への設備投資額から、押上~成田空港間の新型有料特急の運転間隔は40分間隔になるとみられています。それがそのまま都営・京急に直通するのであれば、40分間隔で、羽田空港に有料特急が発着することになります。

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三浦半島方面向けではないのか

念のために書きますが、羽田空港~成田空港間の有料特急について、公式に発表されたことはありません。公式に発表されたのは、京急が「京成新型有料特急車両との共通化の検討」を始めた、というだけです。

仮に京急が有料特急を導入するにしても、たとえば品川~三崎口間に設定する可能性もあるでしょう。その場合は、三浦半島への観光特急や有料ライナーという位置づけになります。

ただ、京成が開発するのは、空港アクセス向けの新型特急車両ですので、荷物スペースなどが広く取られるはずです。それと同仕様の車両を、京急が観光特急に充当するのは考えづらく、やはり、羽田空港アクセス用に導入すると考えるのが自然でしょう。

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JR羽田空港線開業を視野に

羽田空港アクセスに関しては、JRが羽田空港アクセス線を建設しており、2031年度に開業する予定です。JRが開業すれば、羽田空港アクセスで京急のシェアが落ちるのは避けられません。

ただ、JR線の羽田空港駅は第2ターミナル付近になります。国際線主体の第3ターミナルへのアクセスは不便です。

したがって、京急としては、JR線開業後、羽田空港アクセスで国際線利用者を重視し、客単価を上げる戦略に出るのが得策です。となると、羽田空港へ有料特急を導入するのは当然の考え方です。

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当然の帰結

羽田空港への有料特急を運行するのであれば、品川発着にするのではなく、都心に乗り入れて利便性を高めたいと考えるのも当然でしょう。都心に乗り入れるには都営浅草線に直通するほかなく、浅草線で折り返せるのは押上駅しかありません。

その場合、押上発着の京成の新型有料特急と発着地が同じになるので、両特急を共通運用にして直通運転するというのは、当然の帰結といえます。

結果として、羽田空港と成田空港が有料特急で直結できることにもなります。それは、両空港の連携強化にも資するでしょう。

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JRに対抗

JR羽田空港アクセス線には、グリーン車が連結される見通しです。しかし、グリーン車で座席指定はできません。

それに対し、京急の新型有料特急は座席指定できる形になるでしょう。そうすれば、着席保証を求める日本人客のニーズにも応えられます。

JR羽田空港アクセス線の弱点が「第2ターミナル発着、着席保証なし」ならば、京急が「全ターミナル発着、着席保証あり」という選択肢を提示することで、JRに対抗できるわけです。

京急が羽田空港へ有料特急を導入するのであれば、こうした狙いも込められているのではないでしょうか。(鎌倉淳)

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