北海道新幹線「2039年札幌延伸開業」の影響大きく。並行在来線廃止も後ろ倒しに

さらなる遅延も

北海道新幹線札幌延伸開業の時期が、2038年度頃を軸に調整されることがわかりました。北海道新聞が報じています。道内の鉄道路線など、多方面に影響が出そうです。

広告

さらに遅れる可能性も

北海道新幹線は、新青森~新函館北斗間が開業済みで、新函館北斗~札幌間が建設中です。札幌までの開業時期は、当初2035年度とされていましたが、2015年に5年の前倒しを発表。2030年度となっていました。

しかし、トンネル工事などで遅延が発生し、2024年5月に、建設主体の鉄道・運輸機構が目標通りの開業が困難と発表。新たな開業時期について「具体的な時期を示すことは技術的に困難」として、明確にしていませんでした。

その時期が、ようやく明らかになるようです。

北海道新聞2024年12月27日付は、「国土交通省が札幌開業の時期について2038年度を軸にその前後で調整している」と報道。「さらに遅れる可能性がある半面、工夫によっては工期短縮の余地」もあるとしました。

新幹線の開業時期は、だいたい期末(3月)ですので、2038年度開業とは、2039年春開業を意味します。

北海道新幹線h7系

広告

無理のないスケジュールに

鉄道・運輸機構は、北海道新幹線のトンネル工事の状況について、2024年5月の段階で、「3~4年程度の遅延が生じている」と発表しています。

遅延の原因として、「トンネル発生土受入地確保の難航」「予期せぬ巨大な岩塊の出現」「想定を上回る地質不良」などを挙げていました。

発表後、発生土の受入地に関してはメドが立ちつつあるようですが、新たな岩塊の出現による掘削停止などが発生していて、トンネル工事そのものでは、遅延が拡大している様子もうかがえます。

とくに、渡島トンネルは全7工区のうち、台場山工区と南鶉工区の掘削が難航していて、現在の掘削ペースが続けば、トンネル貫通まで8年程度を要する計算です。トンネルが完成してから、線路敷設などに4年程度を見込むことから、単純計算で、開業まであと12年程度はかかります。

今回明らかになった、「2038年度」という開業時期は、そうした新たな遅延要因も織り込んで、無理のないスケジュールにしたとみられます。開業時期の遅延発表を繰り返すのを避けるために、遅めの時期を示したうえで、状況が許せば前倒しするほうがよい、という考え方かもしれません。

広告

並行在来線が10年以上存続へ

新幹線開業時期の後ろ倒しは、道内の鉄道ネットワークに大きな影響を及ぼします。

まず、並行在来線の函館線長万部~小樽間は、新幹線開業後に廃止が予定されていますが、開業遅延により廃止時期も後ろ倒しになります。同区間は、あと10年以上存続することになります。

また、バス運転士不足により、廃止後のバス転換が難しいという指摘があるなか、検討する時間が増えます。

いっぽうで、2038年度となれば、バス運転士の不足はさらに深刻になっているとみられ、代替バスの設定は、より難しくなりそうです。

広告

車両更新にも影響

道内の在来線の車両更新にも影響を及ぼします。

これまでは、2030年度に函館~札幌間の在来線特急が新幹線に切り替わり、並行在来線の一部が廃止されるという前提で、車両の更新計画が立てられていました。

その計画が8年も後ろ倒しになるのであれば、計画も再検討する必要が出てくるでしょう。在来線で新たな特急車両の製造が検討されるかもしれません。

広告

東北新幹線にも影響

北海道新幹線が直通する東北新幹線の車両計画にも影響が出るでしょう。

現在の主力車両であるE5系は、2011年に営業運転を開始しており、すでに13年が経過しています。初期車両はそろそろ更新時期にさしかかります。

北海道新幹線札幌延伸開業が2030年度であれば、それにあわせて、最高速度を向上した新型車両が出るとみられていました。しかし、開業が8年も後ろ倒しになるのであれば、再検討されるかもしれません。

広告

函館駅への乗り入れ計画に時間

函館市が推進している、北海道新幹線の函館駅乗り入れ計画にも影響が及びます。

大泉潤函館市長は、北海道新幹線札幌開業と函館駅乗り入れの「同時開業」を目標に掲げています。2030年度ならば、実現は困難とみられていましたが、2038年度開業となれば、あと13年あります。

政治的な折衝も含めて、時間的に大きな余裕ができます。「同時開業」が、非現実的な目標時期ではなくなるでしょう。

沿線自治体のまちづくりにも影響します。とくに、並行在来線の廃止を前提にまちづくりを進めている倶知安町には大きな影響が出そうです。また、札幌駅周辺の再開発も、大きく後ろ倒しになってしまいます。

広告

JR北海道の経営自立も後ろ倒しに

最後に、大きな影響が出るのはJR北海道の経営でしょう。

同社は、北海道新幹線の札幌延伸開業が実現する2031年度の経営自立を掲げていました。新幹線の開業なくして経営自立はできませんので、その時期も遅れることになります。

すなわち、国のさらなる財政支援が必要になることを意味します。

広告

青函トンネル上回る工期に

札幌延伸工事の着工は、2012年8月でした。開業が2039年3月となれば、じつに26年半もかかることになります。

青函トンネルの工期が24年間でしたので、それを上回る期間です。それだけの難工事なので仕方ないともいえますが、もう少し早くできないのか、と感じられる方も多いでしょう。

完成すれば、劇的な効果を生む路線であることは確かなので、少しでも早い開業を願いたいところです。(鎌倉淳)

広告