全日空の定時運航率、ジェットスター以下に。「定時運航率・欠航率ランキング」2024年版

羽田の混雑が背景に?

日本航空、全日空をはじめとした航空各社で定時運航率が急激に悪化しています。2024年3月までの航空会社別「定時運航率」「欠航率」の統計がまとまりました。

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国土交通省の2023年度統計

航空会社の国内線の「定時運航率」と「欠航率」は、国土交通省の「特定本邦航空運送事業者に関する航空輸送サービスに係る情報」で公表されています。2024年発表の最新のデータとして、2023年度(2023年4月~2024年3月)の数字がまとまりました。

ここでは、その数字をランキングにまとめて、順にみていきます。(配信先などで表の表示が崩れる場合は、こちらをご覧ください)

2023年度定時運航率ランキング(単位:%)
順位 航空会社名 2023年度 2022年度
1 日本トランスオーシャン航空 91.55 95.03
2 スカイマーク 91.38 95.90
3 スプリング・ジャパン 90.75 94.93
4 スターフライヤー 90.73 95.35
5 ソラシドエア 89.12 93.47
6 日本航空 84.75 92.04
7 ジェットスター 83.49 87.79
8 全日空 83.47 90.56
9 エアドゥ 81.87 87.59
10 ピーチ 79.65 81.35

 

統計上の「日本航空」は、日本航空、ジェイエア、日本エアコミューター、北海道エアシステム、日本トランスオーシャン航空(一部路線)の合計、「全日空」は、全日本空輸、ANAウイングスの合計です。

この統計は、客席数が100または最大離陸重量が5万kgを超える航空機を使用する航空会社が対象です。小型機使用のフジドリームエアラインズやアイベックスなどは対象外です。

定時運航率は、出発予定時刻より15分以内に出発した便のことをいいます。「出発」とはブロックアウトした時間。つまり、機体が動き出した時間のことです。定時運航率は運航した便に対する率ですので、欠航は反映していません。

ANA787

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スカイマークが7年ぶり失冠

定時運航率首位となったのは、日本トランスオーシャン航空で、91.55%。前年度より数字を落としたものの、他社の下落幅より小さく、首位に輝きました。

6年連続首位を維持してきたスカイマークは91.38%で、僅差の2位にとどまり、7年ぶりの失冠です。それでも、今年度の91.38%という数字は悪くありません。前年度の95.90%より下がったものの、好成績です。

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大手2社が急落

今回の統計で目立つのは、日本航空と全日空という大手航空会社2社の定時運航率が、前年度から急落したことです。日本航空は前年度92.04%から今年度84.75%へ7.29ポイント下落。全日空は90.56%が83.47%に7.09ポイント下落しています。

全日空の定時運航率83.47%は、格安航空会社LCCのジェットスターを下回りました。大手の航空会社の定時運航率が「格安航空会社以下」というのは、衝撃的でしょう。

なぜ定時運航率が急落したのか

なぜ、大手2社の定時運航率が急落したのでしょうか。遅延理由をみてみると、「天候」や「機材故障」は前年度と大差なく、両社とも激増しているのが「機材繰り」です。日本航空は前年度4.99%が今年度10.49%に、全日空は4.61%が9.44%になっています。

機材繰りによる遅延が増えているのは、大手2社に限った話ではなく、多くの航空会社に共通します。したがって、「機材繰り遅延」増加の原因は航空会社側ではなく、空港側にあるとみたほうがよさそうです。

最近の空港は、新型コロナ禍からの利用回復にともない混雑しています。一方で、地上業務では人手不足が深刻化しており、旅客需要の急増に対応できていないことが報じられています。空港の混雑と人手不足が、定時運航率の低下につながっている可能性がありそうです。

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LCCは悪化が小さいが

それでも、LCC2社の定時運航率は、前年からあまり悪化していません。その理由はどこにあるのでしょうか。

遅延理由をみてみると、「機材繰り」による遅延は、ピーチが7.62%から6.07%に減少しています。ジェットスターは4.88%から5.98%に増えていますが、JALやANAに比べれば、あまり増えていません。

両社に共通するのは、羽田空港発着の国内線を運航していないということです。定時運航率首位の日本トランスオーシャン航空も、那覇空港を拠点としているので、羽田便の割合は僅かです。

羽田空港の混雑と人手不足

要するに、大手2社の定時運航率の低下の背景には、羽田空港の混雑または地上職員の人手不足があるのではないか、ということです。羽田発着枠を多く持つ会社ほど、定時運航率が下がりやすい構造になっている可能性があります。

スカイマークの定時運航率7連覇を阻んだのも、羽田空港の混雑と人手不足が原因かもしれません。

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2023年度欠航率ランキング

次に2023年度の欠航率を見てみましょう。欠航率は低い方が優秀なので、「低欠航率」という形でランキングしてみます。(※配信先で表が崩れる場合は、こちらをご覧ください。)

2023年度欠航率ランキング(単位:%)
順位 航空会社名 2023年度 2022年度
1 スプリング・ジャパン 0.56 0.51
2 スカイマーク 1.14 0.76
3 スターフライヤー 1.24 1.46
4 ピーチ 1.38 1.33
5 エアドゥ 1.45 1.25
6 ソラシドエア 1.46 1.10
7 ジェットスター 1.82 1.30
8 日本航空 1.97 1.55
9 日本トランスオーシャン航空 2.53 1.32
10 全日空 2.65 1.06
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スプリング・ジャパンが最優秀

低欠航率の最優秀は、前年度に続き、スプリング・ジャパンとなりました。わずか0.56%で、欠航のきわめて少ない航空会社といえます。ただ、スプリングは国内線の運航規模が小さいので、他社と同列に比べられない面があります。

2位に入ったのはスカイマークで1.14%。こちらも前年に続いての2位です。主要航空会社のなかでは、最も「定時性が高く欠航率が低い」わけで、信頼感の高い航空会社といえます。ただ、前年度の0.76%に比べると、数字をだいぶ落としています。

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沖縄の天候不順も影響

一方、最下位に沈んだのが全日空で、欠航率は2.65%です。日本航空も1.97%と低迷。大手2社は「定時運航率が低く、欠航率は高い」わけで、統計上は信頼感の低い航空会社になってしまいました。

定時運航率首位の日本トランスオーシャン航空も2.53%と厳しい数字となりました。ただ、欠航の理由をみると、日本航空と全日空は「機材繰り」が多いのですが、日本トランスオーシャン航空は「天候」が多めです。とくに、第2四半期(7月~9月)の天候理由による欠航率は7.43%に達し、前年度の4.13%を大きく上回りました。

沖縄路線を運航するだけに、夏場の欠航率が高いのは同社の宿命ですが、2023年度はとりわけ夏の天候が不順で、欠航が増えてしまった、ということのようです。(鎌倉淳)

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