栃木県のマウントジーンズ那須スキー場が、2023-24シーズンを以て営業を終了します。首都圏の人気スキー場の閉鎖には、衝撃が走りました。
ポスト・バブルスキー場
東急リゾーツ&ステイは、運営するマウントジーンズ那須スキー場について、2023-24年シーズンの営業をもって施設を閉鎖すると発表しました。
マウントジーンズ那須は1994年12月にオープンしました。バブル期に着工し、バブル崩壊後に開業した「ポスト・バブルスキー場」の一つです。
開設したのは丸紅が出資する第三セクターでしたが、同社が2005年にスキー場事業から撤退。東急リゾーツが引き継いで運営しています。
その東急が、開業30年目となる2024年春を以て営業を完全終了し、施設を閉鎖すると発表したわけです。
混雑で知られる人気ゲレンデ
マウントジーンズ那須のスキー場面積は約33ヘクタールで、ゴンドラ1基、リフト3基を備えます。コースは6つあり、最長滑走距離は約2000m。中規模ながらゴンドラを備えた高品質のスキー場です。
スキー場としては比較的新しいこともあり、ゲレンデレイアウトは効率的で、評判は悪くありません。首都圏から近いため、週末には数多くの日帰りスノーボーダー/スキーヤーが集まり、混雑することでも知られています。
東急の運営になってから、2009-10年シーズンにピークとなる約149,000人の利用者数を記録。コロナの影響が残る2022-23年シーズンでも、約65,000人が来場しました。営業利益は減少傾向だったそうですが、それでも黒字は維持していて、経営状況は悪くなかったようです。
理由は「雪不足」だが
そんな人気スキー場が、なぜ閉鎖されてしまうのでしょうか。
東急リゾーツは、営業終了を決めた理由として、地球温暖化による雪不足を挙げています。那須エリアはもともと積雪の多い土地ではないため、このまま温暖化が進めば、スキー場を維持していくことは困難と判断したようです。
開設から約30年というタイミングもあるとみられます。リフトの更新時期にあたるため、施設を存続するなら相応の設備投資が必要です。しかし、雪不足で営業が不安定になると、投資の回収に不安が残ります。
「いま設備投資をして、また30年続けるか」という命題を前に、東急として、ここで手を引くという結論にいたったのでしょう。理由として挙げられた「雪不足」には、そうした意味が含まれているとみられます。
マウントジーンズ那須の2023-24シーズンの営業は、12月23日から3月10日までの予定です。もともと国有地を借りていたようで、営業終了後はリフトなどの施設を取り壊し、ゲレンデに植林のうえ、土地を国に返還するということです。
大手リゾート運営なのに
これまでも、降雪量の少ない地域のスキー場が閉鎖したケースは少なくありません。雪不足への対策は人工降雪機の導入ですが、コストがかかるので、相応の来場者が見込めなければ、簡単には導入できません。
しかし、マウントジーンズは大手リゾート会社が運営する中規模スキー場で、首都圏から近いという好条件です。近隣にある同社運営のハンターマウンテンでは、2017年に山麓コースに自動人工降雪機を導入し、今シーズンは新たに山頂コースにも追加導入するなど存続へ向けて手を打っています。
マウントジーンズはハンターマウンテンには規模ではやや劣るものの、施設は新しく、一定の人気もあります。そこが閉鎖されてしまうというのは、やはり衝撃的です。
心配なスキー場は他にも
雪不足がゲレンデの設備投資にカゲを落とすのであれば、心配なスキー場は他にもあります。
バブル期には全国で多数のスキー場が開業しましたので、設備更新の時期を迎えているのはマウントジーンズだけではありません。いうまでもなく、地球温暖化による雪不足も、程度の差こそあれ、全国的です。
そう考えると、とくに積雪が不安定な地域のスキー場の存続は、今後、ますます厳しくなりそうです。(鎌倉淳)