JR北海道が快速「エアポート」を増発します。ただ、一部は普通列車を置き換える形で、「区間快速」なる種別も誕生。利用者は便利になるのでしょうか。
毎時6本運行
JR北海道は、2024年春のダイヤ改正で、快速「エアポート」を増発すると発表しました。
日中時間帯(9時~16時)の運転本数を現行の毎時5本から6本に増やします。うち毎時1本を「特別快速」とします。特別快速の札幌~新千歳空港間の途中停車駅は、新札幌、南千歳のみです。
また、毎時2本を新種別の「区間快速」とします。区間快速の停車駅は、新札幌と北広島~新千歳空港間の各駅です。つまり、通過するのは、苗穂、白石、平和、上野幌の4駅のみです。
あわせて、北広島~千歳間を走る現行の普通列車は区間快速へ置き換えます。これにより、普通列車は、毎時2本が札幌~北広島間で折り返す形となります。
そのほか、札幌~苫小牧直通の普通列車は千歳~苫小牧間の区間運転とし、毎時1本程度の運転となります。
現行ダイヤと比較
現行ダイヤと比較してみましょう。日中時間帯の1時間あたりの運転本数です。改正ダイヤの3種の快速は、まとめて「快速」と表示しています。
■札幌~北広島
【現行】 快速5、普通2
【改正】 快速6、普通2
■北広島~千歳
【現行】 快速5、普通2
【改正】 快速6
■千歳~南千歳
【現行】 快速5、普通1
【改正】 快速6、普通1
■南千歳~新千歳空港
【現行】 快速5
【改正】 快速6
ご覧いただければわかるように、増発となっているのは札幌~北広島間と千歳~新千歳空港間で、北広島~千歳間は減便です。
ただし、北広島~千歳間も1時間あたりの車両の総数は、現行ダイヤも改正後も36両で同じです。快速全てに「Uシート」が付くのであれば、そのぶん輸送力は若干落ちることになります。
利便性はどう変わる?
では、新ダイヤで利便性はどう変わるのでしょうか。
まず、空港利用の旅行者ですが、空港発着列車の輸送力が増えるので、混雑は緩和されます。その点で、空港利用者の恩恵は大きいでしょう。
ただ、快速の種別が3つに別れることについては、評価がしづらいところでしょう。
現行ダイヤの札幌~新千歳空港間の直通列車は、1日2往復運行される特別快速を除けば、すべて快速です。日中時間帯の所要時間は概ね同じで、37~39分です。
新ダイヤでは、特別快速と区間快速の停車駅は6駅も異なります。特別快速の所要時間は36分と見込まれている一方、区間快速は43~45分程度かかると予想されます。
つまり、所要時間に7~8分の差が生じます。区間快速と特別快速を続行運転させたら、終点に着く頃に追いつかれてしまいます。
フリークエンシーの改善は微妙
実際のダイヤがどのようになるのかは定かではありませんが、単線となる南千歳~新千歳空港間で、おおむね10分間隔と平準化するでしょう。
特別快速の後に区間快速を配するのであれば、出発時刻は10分間隔でも、到着時刻に20分近い差が付いてしまうことになります。快速の後に区間快速を配した場合でも、到着時刻に15分程度の差が付きそうです。
したがって、空港利用の旅行者としては、「10分間隔だから」と安心できるわけでもなく、都合のいい列車をあらかじめ調べておく必要があります。フリークエンシーという観点で見れば、現行ダイヤから大きく改善するわけではなさそうです。
途中駅利用者は?
利用しづらくなりそうなのは、現行ダイヤで快速通過駅となっている、島松、恵み野、札幌ビール庭園、長都の各駅利用者でしょう。改正後も発着本数は毎時2本で変わりませんが、区間快速化により、車内が混雑し、着席機会が減りそうです。一方で、札幌までの所要時間が数分短くなるというメリットもありそうです。
北広島、恵庭、千歳の利用者は、快速系統の運行本数は改正後も変わらないものの、運行間隔や所要時間が一定でなくなります。そのため、便利になるとはいえなさそうです。
南千歳~苫小牧間については、普通列車の本数は変わらないものの、札幌直通がなくなります。札幌~千歳間で快速系統を利用しなければならなくなり、着席機会は減るでしょう。また、737系の運行による編成数減、ワンマン化も視野に入っているとみられ、こちらも便利になるとはいえなさそうです。
全体としてみると、札幌~新千歳空港間の輸送力増強に力点が置かれていて、途中駅を利用する地元客にはやや厳しい改正内容です。
特別快速は必要か
最後に個人的な感想をいえば、限られた線路容量で空港アクセスの輸送力を増やすという点で、工夫されたダイヤに感じられます。普通列車を北広島折り返しにすることは、ボールパーク新駅開業後を見据えているのかもしれません。
一方で、よくわからないのが、特別快速の位置づけです。
たしかに速そうですが、毎時1本では乗車機会も少なく、到着時刻が一定でなくなるので、空港利用者にとってそれほど有り難いものに感じられません。
列車の混雑度の平準化や、地元利用者の利便性を考えれば、快速でもよいのではないか、と思います。(鎌倉淳)