JR西日本が、おもに近畿圏で適用されている特急料金制度を廃止して、実質的に値上げします。また、特急料金の乗継割引も縮小し、岡山駅などでの適用を廃止します。
AB特急料金を統合
JR西日本は、2023年4月1日より、在来線の「B特急料金」を廃止し、「A特急料金」に統合すると発表しました。B料金はA料金に比べ、指定席で8~18%程度割安に設定されています。そのため、A料金への統合は、実質的な値上げを意味します。
JRグループのB特急の適用区間は下図の通りです。JR西日本のB料金の適用区間は主に近畿圏で、山陰線(京都~浜坂間)、舞鶴線、福知山線、播但線、JR京都線、JR神戸線、大阪環状線、阪和線、関西空港線、きのくに線(和歌山~新宮間)、七尾線です。
「きのさき」「はるか」など値上げ
これらのエリアの特急料金が「A」に統合されることで、「きのさき」「まいづる」「こうのとり」「はるか」「くろしお」などの特急料金が、一部または全部の区間で値上げされます。
値上げ後の通常期の指定席特急料金は、50km以内が1,290円(現行1,190円)、50km~100kmが1,730円(現行1,520円)などとなります。該当区間では、特急用定期券「パスカル」の特急料金相当額も変更します。
距離 | 現行 | 改定 |
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50km まで | 1,190円 | 1,290円 |
100kmまで | 1,520円 | 1,730円 |
150kmまで | 1,950円 | 2,390円 |
200kmまで | 2,290円 | 2,730円 |
300kmまで | 2,510円 | 2,950円 |
400kmまで | 2,730円 | 3,170円 |
401km以上 | 3,060円 | 3,490円 |
あわせて、一部区間で設定している「おトクな特急料金」(特定特急料金)も変更します。対象となるのは、津幡~和倉温泉間で51km以上の区間、鳥取~出雲市間、米子~益田間の自由席特急料金、岡山~児島間または同区間とJR四国にまたがる場合の50kmまでの自由席特急料金、博多南線の特急料金です。区間により30円~480円の値上げとなります。
岡山以西の乗継割引廃止
乗継割引も縮小します。山陽新幹線岡山~新下関間の各駅で、新幹線と在来線特急列車を乗り継ぐ場合に適用してきた乗継割引を廃止します。JR四国内で、在来線特急と「サンライズ瀬戸」を乗り継ぐ際の乗継割引も廃止します。
乗継割引の廃止により、現在、割引が適用されている本州・四国間の特急料金は、最大で1,590円も値上げされます。
新料金は、在来線特急料金が2023年4月1日購入分から、乗継割引が同日乗車分からの適用です。また、JR西日本~JR四国にまたがる特定特急料金の廃止は、2023年春のJR四国運賃改定に合わせて実施します。
1982年に設定
B特急料金は、国鉄時代の1982年に初めて設けられました。当時は急行の特急格上げが相次いでいた時期で、格上げされた「急行ぽい特急」が多い区間を対象に設定されました。最初に設定されたのは房総や伊豆方面などです。
その後、B特急料金の適用地域は拡大されましたが、最近では縮小の動きが続いています。そして、新型コロナで経営状況が厳しくなるなか、JR西日本が一気に廃止に踏み切った形です。
JR四国に増収効果
乗継割引も値上げですが、岡山~新下関間に限定しているので、対象となるの在来線特急は四国方面と、「やくも」「おき」に限られます。最もボリュームが大きいのは四国特急でしょう。
これにより、JR四国は、岡山での新幹線乗り継ぎ客から得られる特急料金を、値引きなしで受け取れるようになります。つまり、岡山以西での乗継割引廃止の最大の受益者はJR四国とみられます。
そう考えると、岡山以西の乗継割引の廃止は、JR四国の運賃改定にあわせた増収策への協力にも感じられます。
JR西日本の中心である新大阪や京都での乗継割引を残していることからも、今回の措置はJR四国の要望にこたえたものかもしれません。
高速バスも値上げ傾向
気になるのは、値上げによる利用者減少です。在来線特急は高速バスとの競合が激しく、値上げにより客離れを起こす心配はあるでしょう。
ただ、昨今の燃油費の高騰などにより、高速バスもかつてのような低価格での運行は難しくなっていて、すでに値上げ傾向にあります。
つまり、JRだけが値上げするわけではないので、高速バスとの競合という観点での影響は限定的とみられます。
ネット割引きっぷで救済?
また、今回の値上げは、いずれも定価ベースの特急料金の話です。JR西日本では、インターネット列車予約e5489で割引きっぷを販売する方針を示しています。その割引率が高ければ、ネット利用者は、ある程度救済されます。
その場合、大きな影響を受けるのは窓口利用者ということになり、「紙からネットへの移行を促す施策」の一環とみることもできるでしょう。(鎌倉淳)