北海道新幹線の並行在来線の函館線余市~小樽間について、JR北海道は赤字補填を前提として、運営委託の要請があれば検討する姿勢を示しました。実現すれば、同区間がJR北海道の路線として存続することになります。
並行在来線の議論
北海道新幹線は新函館北斗~札幌間の延伸工事が進められています。開業時には、並行在来線である函館線・函館~小樽間287.8kmがJR北海道から経営分離される予定で、この区間を鉄道として残すか、バス転換するかの議論が続いています。
並行在来線を鉄道として存続させる場合、第三セクターの鉄道会社を設立して移管するのが通例ですが、JR北海道に運営を委託するという考え方もあります。
これについて、2021年12月27日に開かれた「北海道新幹線平行在来線対策協議会」の後志ブロックの第11回会合で、JR北海道は、鉄道存続が検討されている余市~小樽間について、赤字が補填されるという前提で、要請があれば運行委託について検討する方針を明らかにしました。
経費負担が前提
公表された議事録によると、JR北海道は、「鉄道事業を運営するにあたり、鉄道事業法など関係法令、規則に則って、可能な業務の範囲について、関係各所と相談しながら検討する必要がある」と原則を説明。そのうえで、仮に運行委託の話があった場合、「必要な経費を負担していただくという前提で、運行委託について検討する用意がある」との姿勢を明らかにしました。
運行委託の形態など詳細が定まった話ではありませんが、自治体の出資する第三セクターが施設を保有し、運行をJRに委託する形が想定されます。
上下分離で
2022年秋に開業する西九州新幹線の並行在来線では、上下分離のうえJR九州が運行を継続します。並行在来線となった長崎線肥前山口~諫早間について、一般社団法人佐賀・長崎鉄道管理センターが第三種鉄道事業者として施設を保有し、JR九州が第二種鉄道事業者として施設を借り、運行を担います。JRの運賃体系は維持します。
並行在来線ではありませんが、「運行委託」という形を明確に取り入れた例としては、北近畿タンゴ鉄道も挙げられます。同社は2015年に上下分離を実施し、北近畿タンゴ鉄道は施設保有者となり、ウィラーに運行を委託しました。ウィラーが年1億円程度の施設使用料を北近畿タンゴ鉄道に支払い、沿線自治体も北近畿タンゴ鉄道に10年間で合計約77億円の補助を行っています。
小樽~余市間の運行をJR北海道に委託する場合のスキームは未定ですが、巨額の赤字が見込まれるため、施設使用料は減免し、自治体がJRに対し欠損補助をする形が考えられます。
根本解決にはならず
JRが運行することにより、経費を減らす効果は見込めそうです。一方で、当該区間が独自の営業施策を打ち出しにくくなるという側面もあり、かえって赤字が増える可能性もあります。いずれにせよ、利用が伸び悩めば巨額の赤字が自治体の負担となることに変わりありません。
余市~小樽間の赤字は年間4~5億円に達すると見込まれています。JRが運行を検討するというのは悪い話ではありませんが、財源という根本的な問題を解決するわけではありません。
一方で、JR北海道としては、実現すれば赤字区間に上下分離を導入するモデルケースになります。他路線にも導入可能な上下分離の仕組みを作れるなら、JR北海道にとってはいい話でしょう。(鎌倉淳)