青春18きっぷの2013年夏シーズンの利用期間が開始されました。ここ数年、格安の高速ツアーバスの攻勢で販売に陰りがみえていた青春18きっぷですが、今年8月から高速ツアーバスの制度が事実上廃止されます。そのため高速バスの価格が上昇しており、青春18きっぷに利用者が回帰する動きが出ているようです。
高速バスは、これまで「高速路線バス」と「高速ツアーバス」の2つの種類がありました。なかでも、新規参入が容易な「高速ツアーバス」が格安価格を掲げて急成長。東京~大阪間で2000円台の価格を提示する会社まで登場し、若者を中心に人気を集めてきました。
東京~大阪間は、青春18きっぷで普通列車を乗り継いでも2300円で移動できますが、それは5回分の1回あたりの価格でのこと。金券ショップでばら売りを買えば3000円くらいはかかります。いっぽう、ツアーバスならば乗り換えがなく、普通列車を乗り継ぐよりもラク。そのため、鉄道ファンでない青春18きっぷユーザーが、ここ数年は高速バスに流れる傾向が強まっていました。
実際、青春18きっぷの売上ピークは2006年度で、それ以降は漸減傾向が続いています。これは、高速ツアーバスの成長と逆相関を描いているといえます。このまま販売枚数が減少すれば、いずれ青春18きっぷは廃止されるのでは、という観測も生まれていました。
ところが、その高速ツアーバスの制度が、この2013年8月より事実上廃止され、「新高速バス」という制度になります。新高速バスへの移行はハードルが高く、中小のツアーバス会社のなかには移行を断念した会社も少なくありません。そのため、高速バスでは供給が減っており、価格は全体に上昇傾向にあります。たとえば、8月以降の東京~大阪間のバス料金を調べてみると、平日でも4列シートが軒並み5000円以上。3列となると8000円以上が相場で、10年前に逆戻りした観があります。
となると、格安を求める利用者が青春18きっぷに回帰する可能性は十分にあります。実際、JR関係者に尋ねてみると、「今年は販売の出足がいいようだ」という答えが帰ってきています。実際の販売結果がまとまるのはまだ先の話でしょうが、このまま好調が続けば、近年の漸減傾向に歯止めがかかるかもしれません。