テレビ東京系列の「ローカル路線バス乗り継ぎの旅Z」第11回が放送されました。田中要次と羽田圭介のコンビが、路線バスだけを乗り継いで旅をする番組です。今回のマドンナは、2児のママでもある優木まおみです。
お題は、大分県の別府駅をスタートし、宮崎県の日南駅、鹿児島県の鹿児島中央駅を経て、3泊4日で熊本県の阿蘇に到達するというものです。例によって正解ルートを検証してみます。なお、以下はネタバレ100パーセントです。また、結果論100パーセントです。行ってない筆者が机上で語っているだけです。ご理解ください。
※以下、掲載時刻は確認しましたが、間違いや勘違いがあると思います。ご容赦ください。また、間違いを見つけましたらご指摘ください。文中は敬称略です。
実際ルート
最初に、番組で3人が実際に旅したルート(実際ルート)をたどってみましょう。時刻表上の定刻を確認してみました。
▽1日目
別府駅前09:54→10:26大分駅前→徒歩0.3km→中央通り11:45→13:36佐伯駅14:00→14:54河内→徒歩4.6km→道の駅かまえ→徒歩3.4km→猪串
▽2日目
猪串09:35→10:05波当津集会所前→徒歩6km→直海→徒歩5.7km→古江14:06→14:47延岡駅15:08→16:05都町→徒歩0.2km→日向市駅東口17:40→18:29宮の下→徒歩1.3km→あけぼの団地→徒歩4.8km→道の駅つの
▽3日目
道の駅つの06:55→08:58宮交シティ09:55→11:37日南駅前13:44→14:52幸島入口→徒歩6km→大納18:32→19:07串間駅→徒歩7.9km→大黒リゾートホテル
▽4日目
大黒リゾートホテル→徒歩7km→志布志駅前07:15→09:46鹿児島中央駅11:02→11:05加治屋町11:37→13:34川内駅13:42→14:40阿久根駅前15:16→16:29水俣駅前→徒歩1.2km→産交バス営業所17:42→18:52道の駅たのうら
道の駅たのうらで、18時20分発の八代行き最終バスに乗り継げず、ゴールまで100km以上を残しての失敗となりました。キートン山田のナレーションの言葉を借りれば「惨敗」です。正解ルートを検証してみましょう。
地図はおおよそのルートです。正確に表記しているとは限りません(以下同)
ローカル路線バス乗り継ぎの旅Z 第11弾 大分県・別府~熊本県・阿蘇
【出演者】田中要次、羽田圭介、優木まおみ
【ナレーター】キートン山田
歩くか、待つか
別府駅前から大分駅前に向かった一行の、最初の大きな分岐点は大分駅でした。九州の東海岸に沿うルートと、竹田方面から内陸に入るルートが選択肢です。一行は、案内所の情報で東海岸ルートを選択、佐伯方面へ向かいました。竹田方面に向かったらどうなるかは、長くなるので後述します。
東海岸へ向かった一行は、佐伯行きバスに乗車。佐伯駅に14時前に到着し、次に乗るべき蒲江(道の駅かまえ)へ向かうバスの時刻を確認したところ、16時20分とわかりました。
一行は待ちきれず、先を急いですぐに出るバスで河内へ向かい、蒲江まで4.6kmを歩くことにします。この徒歩は難なくこなしたものの、蒲江から先の波当津行きコミュニティバスは日曜運休。このエリアのバスは軒並み休日運休で、一行は早くも行き詰まりました。
波当津までは15km。マドンナ優木は、道の駅かまえで、「4時間、5時間歩くか、明日の朝一を待つかの選択」と、先へ進むやる気をのぞかせます。しかし、体力消耗もあったのか、結局は3km先の民宿に泊まって1日目が終わりました。
15kmを歩いたら
このとき、マドンナのやる気に答えて、波当津まで歩いていたらどうなったでしょうか。一行が佐伯16時20分発のバスに乗り体力を温存していたと仮定すると、以下のようになります。
▽1日目
別府駅前09:54→10:26大分駅前→徒歩0.3km→中央通り11:45→13:36佐伯駅16:20→17:12道の駅かまえ→徒歩15km→波当津集会所前
▽2日目
波当津集会所前→徒歩6km→直海→徒歩5.7km→古江10:21→11:13延岡駅11:20→12:15都町→徒歩0.2km→日向市駅東口13:30→14:19宮の下→徒歩1.3km→あけぼの団地→徒歩4.8km→道の駅つの16:18→16:51高鍋バスセンター17:00→18:27宮交シティ19:00→20:39日南駅前
1日目の波当津到着は22時頃になりそうですが、強行軍のおかげで2日目に日南駅までたどり着けます。道の駅かまえから古江まで、あわせて約27kmもの長距離徒歩となりますが、途中1泊しますし、脚力自慢の一行ならこなしきれない距離ではないでしょう。
日南駅に2日目に着けば、実際ルートをたどったとしても、以下のようにつながります。
▽3日目
日南駅前10:14→11:22幸島入口→徒歩6km→大納14:42→15:32串間駅16:35→16:55イルカランド→徒歩7.6km志布志駅18:51→20:46本町(垂水)
▽4日目
本町(垂水)05:45→06:41検校橋07:00→08:14鹿児島中央駅09:41→11:14宮之城/鉄道記念館前11:59→12:38出水バスセンター12:58→13:29水俣駅前13:50→14:50道の駅たのうら15:00→15:40八代駅前16:13→17:02松橋産交17:23→18:12熊本バスターミナル19:15→20:07大津駅/肥後大津20:40→21:35阿蘇駅
このように、ゴール可能です。日南以降の乗り継ぎについては後述しますが、1日目の夜に15kmの徒歩に挑んでいれば、展開は大きく変わっていた可能性があったわけです。
とはいえ、1日目の17時過ぎから15km歩くというのは、ちょっと現実感がありません。これを「正解」とはいえなさそうです。
2日目の粘り腰
実際ルートに戻りましょう。2日目、一行は平日運転のコミュニティバスで波当津集会所前までは行けましたが、そこでバスは途絶えます。波当津から直海を経て古江まで、11.7kmも歩くことに。途中、直海から古江へは宮崎交通のバスがありますが、早朝1便だけなので、直海に泊まらない限りつかまえられません。
古江にたどり着いてからは順調な乗り継ぎで日向市に至り、19時にあけぼの団地到着。宿を探してもよさそうな時間ですが、羽田が「行く時間を確かめないと今日は終われない」と粘り腰を見せ、さらに5km近くも歩いて20時すぎに都農(道の駅つの)に達します。
2日目の一行の徒歩は18kmに及びました。もう少しマシな乗り継ぎがないかと、いろいろ探してみましたが、実際ルートに優るルートは見当たりません。
日南駅前の選択
努力のかいあって、一行は3日目、道の駅つのを06時55分に出る宮交シティ直行便に乗車。順調に乗り継いで、最初のチェックポイントである日南駅前に11時37分に到着します。
ここで一行は幸島行きバスを一本見逃し、コミュニティバスの新村、南平行きの運転手に聞き込んで、改めて次の幸島行きに乗りました。運命の分かれ目があったとすれば、この日南駅前の選択でしょう。
仮に、ここでコミュニティバスに乗っていたらどうなっていたでしょうか。
まず、南平に至った場合、金曜日なら山を越えて4kmほど歩けば、大平付近で串間駅行きのコミュニティバスに乗り継げます。月水木曜日なら、さらに4km程度歩けば串間駅行きのバスに乗れます。しかし、ロケ日は火曜日で、串間駅まで16kmも歩かなければバスはありませんでした。
新村行きのバスの場合、終点新村から山を越えて都城市に入っても近くにバス停はなく、都城市街地まで少なくとも20km、都城駅までなら約28kmも歩くことになったとみられます。
つまり、一行が幸島行きのバスに乗ったのは正しい選択といえます。
一本前の幸島行きに乗っていたら
幸島行きを選んだのはいいとして、一本逃したのはもったいなかったように感じてしまう方もいるでしょう。仮に、一行が見逃した12時04分発のバスに乗っていたらどうなっていたでしょうか。
▽3日目
日南駅前12:04→13:12幸島入口→徒歩6km→大納14:42→15:32串間駅16:35→16:55イルカランド→徒歩7.6km→志布志駅18:51→20:46本町(垂水)
ご覧のように、うまく乗り継げば、実際ルートより歩く距離を減らしたうえで、3日目に垂水市まで到達できます。徒歩を挟んだ2回の接続が時間的に厳しそうですが、田中・羽田コンビの健脚なら、なんとか乗り継げそうです。
垂水まで行かずに、途中の鹿屋に泊まるという選択もありますが、最近の一行の傾向として、先へ進める限り進むでしょう。となると、3日目の宿泊は垂水市内と予想され、さらに続けると、たとえば以下のようになります。
▽4日目
本町(垂水)05:45→06:41検校橋07:00→08:14鹿児島中央駅
4日目の朝8時過ぎに鹿児島中央駅に到着できます。垂水を早朝に出発する鹿児島空港行きのバスに乗り、検校橋で鹿児島中央駅行きに乗り換えるので、バスの乗務員などから正確な情報を得ている必要はありますが、不可能ではなさそうです。
鹿児島中央駅に9時前に到着すると、前出した以下の乗り継ぎが可能になります。
▽4日目
鹿児島中央駅09:41→11:14宮之城/鉄道記念館前11:59→12:38出水バスセンター12:58→13:29水俣駅前13:50→14:50道の駅たのうら15:00→15:40八代駅前16:13→17:02松橋産交17:23→18:12熊本バスターミナル19:15→20:07大津駅/肥後大津20:40→21:35阿蘇駅
鹿児島中央駅9時41分発のバスに乗り、宮之城を経由することで、4日目に阿蘇駅に着くことができ、ゴールとなります。肥後大津駅から阿蘇駅へは、不通となっているJR豊肥線の代替バスに乗車します。
鹿児島中央駅に9時前に到着しても、実際ルートと同様に川内駅を経由してしまうと、ゴールは不可能です。つまり、鹿児島から熊本への北上方法も、今回のポイントの一つでした。実際に一行がたどった「川内ルート」よりも、上記の「宮之城ルート」のほうが優れています。
「海を渡る路線バス」
日南駅で、幸島行きバスを乗り逃さなかった場合、以下のように乗り継ぐこともできます。
▽3日目
日南駅前12:04→13:12幸島入口→徒歩6km→大納14:42→15:32串間駅16:35→16:55イルカランド→徒歩7.6km→志布志駅前18:51→20:37垂水港
▽4日目
垂水港06:40→07:52鹿児島中央駅
この垂水港~鹿児島中央のバスは、鹿屋市を起点として錦江湾の垂水港~鴨池港をフェリーで渡ります。フェリーにバスごと乗るので「海を渡る路線バス」として知られています。
途中にフェリー区間をはさむものの、全体として「路線バス」には違いありませんし、テレビ映えもしますので、「ローカル路線バスの旅」でも利用できそうです。一行が3日目に垂水市に到着したとして、情報収集がうまくいけば発見できたルートでしょう。鹿児島中央駅に7時台に到着でき、上述した宮之城ルートでゴールできます。
いずれにしろ、一行が日南駅で幸島行きのバスを一本乗り逃さなければ、3日目に垂水市へ行くことができました。4日目に鹿児島中央駅で十分な時間を使って宮之城ルートを探し当てれば、ゴール可能でした。
日南駅で折り返したら
日南駅の判断として、宮崎市へ戻るという選択もありました。「日南駅折り返し」です。その場合、以下のようになります。
▽3日目
道の駅つの06:55→08:58宮交シティ09:55→11:37日南駅前11:44→13:27宮交シティ13:30→14:16青井岳温泉15:40→16:25都城駅前18:00→19:13霧島神宮前
▽4日目
霧島神宮前06:58→07:25重久車庫07:30→08:58鹿児島中央駅
このように、9時前に鹿児島中央駅に到着できます。この後は、「宮之城ルート」でゴール可能です。
ただ、上述の乗り継ぎは、日南駅前から宮交シティに戻って3分で青井岳温泉行きに乗り換えなければなりません。あらかじめ宮交シティの案内所で情報を得られたという仮定に立ったとしても、大きなバスターミナルでの3分乗り換えは、現実的とはいえません。
乗り遅れた場合はどうなるでしょうか。
▽3日目
宮交シティ09:55→11:37日南駅前11:44→13:42宮崎駅15:32→16:38雀ヶ野17:30→18:35中央待合所(都城)
▽4日目
中央待合所07:08→08:13霧島神宮前08:18→08:45重久車庫08:47→10:20鹿児島中央駅
10時過ぎに鹿児島中央駅に到着します。実際ルートでは09:46着ですので、少し遅い程度で、この後は実際ルートに収斂します。最終的にゴールはできないにしても、日南駅からまったく歩かずに、実際ルートとほぼ同じ時間に鹿児島駅に着けるわけで、串間を経由するルートよりは優れています。
ただ、実際問題として、一行は宮交シティの案内所で、都城へつながる路線バスルートを聞き出せませんでした。バスの案内所の係員が、「路線バスだけで旅をしたい」という奇特な問いへの答えを持ち合わせていないのは当たり前ですし、話の流れなど運不運の要素もあり、仕方ないことです。
また、町で聞き込んで得られる情報でもなさそうです。となると、一行が「日南駅折り返し」の判断をしなかったのは、やむを得ません。
串間からの粘り
日南駅からの実際ルートに戻りましょう。一行は幸島入口に到達しましたが、その先は串間市のコミュニティバス市木線が水曜日のみ運行しているだけです。ロケ日は火曜日なので、乗車不能。一行は徒歩で大納まで6km歩きました。
実際は、大納の手前に名谷というバス停があり、そこまでなら徒歩4.5kmほどで済みますので、1kmあまり余計に歩いてしまったことになります。ただし、大勢に影響はありません。
一行がようやく串間駅に到着したのが、19時すぎ。宿泊してもいい時間ですが、羽田は「県境を越えてバスの管轄を変えないと眠れない」と主張し、マドンナ優木も「朝まで待つのは得策ではない」と同調します。途中、回転ずしを頬張って、鹿児島県に入り大黒リゾートホテルまで、さらに7.9kmを歩き切りました。
この粘りが奏功します。翌朝、早起きしてさらに7km歩き、志布志駅を7時15分に発車する鹿児島中央駅直行のバスを掴まえることができました。鹿児島中央駅に10時前に到着し、奇跡を予感させる雰囲気すら漂わせます。
逆転ゴールの可能性はあったか
では、鹿児島中央駅に午前10時前に着いた一行に、逆転ゴールの可能性はあったのでしょうか。
一行が実際にたどった「川内ルート」では、ゴール不可能でした。では、先に示した「宮之城ルート」はどうでしょうか。
▽4日目
鹿児島中央駅12:41→14:14宮之城/鉄道記念館前14:59→15:38出水駅15:58→16:29水俣駅前
このように、鹿児島中央駅での待ち時間が長く、先へ急げません。水俣駅前到着で実際ルートに収斂し、道の駅たのうらでギブアップするという結果は同じです。
鹿児島空港ルート
鹿児島中央からのもう一つのルートとして鹿児島空港ルートがあります。鹿児島空港~水俣間のバスを使えば水俣までスムーズに行けます。
▽4日目
鹿児島中央駅10:11→11:03加治木本町11:26→11:50鹿児島空港12:25→14:22水俣駅前15:00→16:00道の駅たのうら16:10→16:50八代駅前17:23→18:12松橋産交18:30→19:18熊本バスターミナル20:15→21:07大津駅前
肥後大津駅まではたどり着けますが、そこから阿蘇へのバスがありません。ギリギリで失敗となります。
結論としては、4日目に志布志駅前7時15分発の鹿児島中央行きバスに乗って、阿蘇までゴールできる道筋は見つかりませんでした。
志布志でもっと早起きしたら
では、4日目、もっと早起きしたらどうでしょうか。じつは、志布志駅前を5時59分に出発する鹿児島空港行きバスがあります。
▽4日目
志布志駅前05:59→07:26国分山形屋前/国分07:39→08:58鹿児島中央駅09:41→11:14宮之城/鉄道記念館前11:59→12:38出水バスセンター12:58→13:29水俣駅前13:50→14:50道の駅たのうら15:00→15:40八代駅前16:13→17:02松橋産交17:23→18:12熊本バスターミナル19:15→20:07大津駅/肥後大津20:40→21:35阿蘇駅
薄氷を踏むような乗り継ぎですが、ゴール可能です。言葉を換えれば、4日目朝の時点で一行が大逆転するには、志布志駅前5時59分発のバスに乗るしかなかったことになります。
そのためには、大黒リゾートホテルを午前4時頃に出発する必要があります。前夜21時頃まで歩きに歩いた一行には過酷すぎますし、情報を得るのも容易ではなさそうなので、机上の空論に感じられます。しかし、一行がこの乗り継ぎ情報を知っていたら、挑戦していた可能性はありそうです。
惜しかった乗り逃し
さて、ここまで見てきたように、東海岸を通った一行の乗り継ぎで、惜しいミスがあったとすれば、日南駅でバスを一本乗り逃したことだけです。それも、情報収集に時間を費やしてのことですので、やむを得ない事情でした。
それ以外は、早朝から夜遅くまで、よく歩きよく粘り、健闘したとしか表現できません。2日目に都農まで歩いたことで、3日目の宮交シティ直行バスに乗れたわけですし、3日目も串間市内で泊まってもおかしくないところを、大黒リゾートまで粘りました。
番組前半では徒歩区間があまりにも長く、見ていて気の毒に思えるほどでした。疲労困憊ぷりが画面からも伝わってきて、視聴者としては「どこかでルートを間違えたのだろう」と感じてしまいます。
竹田方面へ向かったら
では、もう少しラクに乗り継げるルートがあったのでしょうか。キートンは冒頭のナレーションで、「内陸へ入り、熊本から鹿児島中央を先に攻める」という手法を紹介しています。一行が阿蘇経由を口にした場面も放送されていますし、内陸に向かう方法を考えてみましょう。
序盤のポイントとなった大分市内からは、竹田方面への路線バスが存在します。利用したらどうなっていたでしょうか。
▽1日目
別府駅前09:54→10:26大分駅前→徒歩0.3km→中央通り11:15→12:33道の駅おおの13:04→13:34竹田駅前13:36→14:22豊後萩駅前
このように、熊本県境に近い豊後萩までは路線バスで行けますが、そこで行き詰まります。手前の豊後大野から延岡に抜けるルートもなく、内陸を路線バスだけで乗り切ることはできません。
「やまびこ号」は使えるか
ここで注目したくなるのが、阿蘇方面へ抜ける「やまびこ号」という特急バスです。中九州横断道路の無料区間を走りますが、ウェブサイトには「高速道路は走行しません」と注意書きまでありますので、「高速バス」の要件からは外れそうです。
ただし、利用方法は「座席定員制(要予約)」と表示されています。実際に座席予約されているのは一部の座席のみで、予約なしでも利用できますが、最近の「ローカル路線バスの旅」のルールでは、予約制バスは利用できない傾向にあります。そのため、「要予約」と掲げられたバスを実際に利用できるかは疑問です。
「やまびこ号」が使えないと仮定すると、九州内陸へ向かうルートは断たれます。
「たかちほ号」との組み合わせ
仮に「やまびこ号」を使えるなら、大分駅前から以下のようにして延岡に抜けるルートが頭に浮かびます。
▽1日目
別府駅前09:54→10:26大分駅前→徒歩0.3km→中央通り10:50→14:27阿蘇くまもと空港16:28→19:57延岡駅
このうち阿蘇くまもと空港~延岡駅間は「たかちほ号」で、こちらは「座席指定制(要予約)」です。「座席定員制」よりも厳しい「座席指定制」なので、番組ルールでは利用できない可能性が高そうですが、仮に使えるとしたら、上記のように1日で延岡駅に着けます。
なお、「たかちほ号」は2019年9月14日にダイヤ改正が行われていますが、ロケはそれより前に行われたとみられるので、ダイヤ改正前の時刻で表示しています。
「やまびこ・たかちほ号」ルート
仮に初日に「やまびこ号」「たかちほ号」を乗り継いで延岡に宿泊した場合、2日目以降は以下のような乗り継ぎになります。
▽2日目
延岡駅07:40→08:37都町→徒歩0.2km→日向市駅東口09:40→10:29宮の下→徒歩1.3km→あけぼの団地→徒歩4.8km→道の駅つの12:58→13:35高鍋バスセンター14:00→15:22宮交シティ15:55→17:37日南駅前
▽3日目
日南駅前10:14→11:22幸島入口→徒歩6km→大納14:42→15:32串間駅16:35→16:55イルカランド→徒歩7.6km志布志駅18:51→20:46本町(垂水)
▽4日目
本町(垂水)05:45→06:41検校橋07:00→08:14鹿児島中央駅09:41→11:14宮之城/鉄道記念館前11:59→12:38出水バスセンター12:58→13:29水俣駅前13:50→14:50道の駅たのうら15:00→15:40八代駅前16:13→17:02松橋産交17:23→18:12熊本バスターミナル19:15→20:07大津駅/肥後大津20:40→21:35阿蘇駅
3日目の夜に垂水市に着いて、既出の乗り継ぎで阿蘇までゴール可能です。詳細は省きますが、2日目に「たかちほ号」で延岡に着いた後、わずかな接続で日向市まで乗り継げていたら、もっと早くゴールできます。
「やまびこ・たかちほ号ルート」は、両バスが使えるなら、大分・宮崎県境の難路を避けて東海岸をたどるという、わりと平易な道のりでゴールへ向かえます。ただ、「やまびこ号」はまだしも、座席指定制の「たかちほ号」は、最近のルールとしては使えないと判断するほかなく、このルートも「正解」たり得ないでしょう。
熊本回りルート
座席指定制の「たかちほ号」は使えないが、座席定員制の「やまびこ号」は使える、と判断すれば、熊本市内を経由するルートも検討に値します。たとえば以下のような乗り継ぎです。
▽1日目
別府駅前09:54→10:26大分駅前→徒歩0.3km→中央通り10:50→15:04熊本バスセンター15:30→16:23松橋産交17:00→17:43八代市役所前
▽2日目
八代市役所前07:51→08:40道の駅たのうら08:45→09:44水俣駅前10:34→11:05出水駅11:43→12:20鉄道記念館前/宮之城13:00→14:30鹿児島中央駅15:31→17:01重久車庫17:12→17:39霧島神宮前18:00→19:05中央待合所(都城)
▽3日目
中央待合所06:50→07:55雀ヶ野08:20→09:26宮崎駅09:40→11:37日南駅前12:54→14:37宮交シティ14:57→16:29小林駅16:50→17:28京町待合所→徒歩5.9km→吉松駅
▽4日目
吉松駅07:00→07:59大口08:30→09:15新水俣駅09:21→10:07道の駅たのうら10:20→11:00八代駅前11:48→12:37松橋産交13:30→14:19熊本バスターミナル15:02→16:59阿蘇駅前
徒歩区間はわずかで、きれいな「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」ができあがります。ゴールの阿蘇を先に通過し、チェックポイントを回ってからゴールに戻るわけで、ゲームとしてはこれを「正解」と呼んでもよさそうです。
ただ、テレビ番組としてはどうなのか、という気もします。ゴールを通ってからチェックポイントを回ると単純往復になりかねず、映像の撮れ高にも影響します。出演者も、これはゲームではなくバラエティ番組であることの認識は持っているでしょうから、多少は気をつかうでしょう。
さらにいえば、熊本回りも簡単とはいえず、えびの市と小林市を抜ける上記ルートを見つけ出さなければ、ゴールへの道のりは容易ではなさそうです。現実問題として、大分駅で先の見えない熊本経由を決断するのも難しいでしょう。
「やまびこ号」の予約制の扱いの不透明さも気になりますし、熊本経由を「正解」と呼ぶのも、やはり憚られます。
宇目ルート
では、気づかなかった別の「正解」があったのでしょうか。記事掲載後に、佐伯駅から山へ向かうルートの提案がコメント欄にありましたので、追加で検討してみましょう。以下の乗り継ぎです。
▽1日目
別府駅前09:54→10:26大分駅前→徒歩0.3km→中央通り11:45→13:36佐伯駅15:43→16:23直川振興局16:28→17:33ふれあいセンター宇目→徒歩6.6km→うめキャンプ村
▽2日目
うめキャンプ村→徒歩6.6km→下赤08:00→08:37北川総合支所/熊田08:55→09:25延岡駅
直川振興局~ふれあいセンター宇目の佐伯市コミュニティバスは日曜も運行しています。下赤~北川間の延岡市コミュニティバス上赤線は月・水・木の運行です。それぞれロケ日と運転日があいますので、一行は乗車可能でした。
これを「宇目ルート」と呼びましょう。宇目ルートの徒歩距離は13.2kmで実際ルートの蒲江~延岡間の15.1kmより少し短く、接続も良いので時間的なロスがほとんど生じません。そのため、2日目は以下のような乗り継ぎで、日南駅まで到達できます。
▽2日目
うめキャンプ村→徒歩6.6km→上赤08:00→08:37北川総合支所/熊田08:55→09:25延岡駅10:20→11:15都町11:15→徒歩0.2km→日向市駅東口11:35→12:24宮の下→徒歩1.3km→あけぼの団地→徒歩4.8km→道の駅つの14:23→15:00高鍋バスセンター15:10→16:36宮交シティ17:35→19:14日南駅前
3日目以降は既述のルートで、阿蘇へゴールできます。
「宇目ルート」の問題点は宿泊で、うめキャンプ村に泊まれればいいのですが、この乗り継ぎだと到着は19時頃。キャンプ場営業終了の17時を過ぎています。ホテルと違って、営業時間外は受付をしない可能性もあり、テントを持たない一行は泊まれないと考えた方がよさそうです。
宇目近辺には旅館も見当たらず、行き当たりばったりでは、文字通り路頭に迷う可能性すらあります。夕方のバスで山中に分け入るなら、それなりの情報が必要でしょう。
言い換えれば、佐伯駅周辺で、上赤からの延岡市コミュニティバスの運行日、時刻と、宇目付近の宿の情報をある程度仕入れておかなければ、直川行きバスに乗る決断はできません。乗ったとして、17時30分~翌朝8時の一晩14時間半で13kmを歩かなければならないのですから、やっぱり大変です。
要するに「宇目ルート」は見つけにくいですし、見つけたとしても実行決断のハードルが相当に高いです。したがって、残念ながら実現可能性は低そうで、これを「正解」と呼ぶのも、やはり憚られます。
「正解に近いルート」を考える
とはいえ、東海岸ルートで、他に「これが正解」と胸を張れそうなルートもありません。ここまでの検証で、宇目ルート以外でゴールするには、初日に夜22時まで15km歩くか、日南駅折り返しで宮交ターミナルで3分乗り継ぎを実現させるか、日南駅で一本見送らずに進むか、大黒リゾートで4時に出発をするか、という選択肢しか見当たらないからです。
これらの選択肢のうち、もっとも実現可能性があったとすれば、日南駅で幸島行きを見送らずに乗ることでしょうか。となると、それが「正解」に近い乗り継ぎということになります。
▽1日目
別府駅前09:54→10:26大分駅前→徒歩0.3km→中央通り11:45→13:36佐伯駅16:20→17:12道の駅かまえ→徒歩3.4km→猪串
▽2日目
猪串09:35→10:05波当津集会所前→徒歩6km→直海→徒歩5.7km→古江14:06→14:47延岡駅15:08→16:05都町→徒歩0.2km→日向市駅東口17:40→18:29宮の下→徒歩1.3km→あけぼの団地→徒歩4.8km→道の駅つの
▽3日目
道の駅つの06:55→08:58宮交シティ09:55→11:37日南駅前12:04→13:12幸島入口→徒歩6km→大納14:42→15:32串間駅16:35→16:55イルカランド→徒歩7.6km→志布志駅18:51→20:46本町(垂水)
▽4日目
垂水港06:40→07:52鹿児島中央駅09:41→11:14宮之城/鉄道記念館前11:59→12:38出水バスセンター12:58→13:29水俣駅前13:50→14:50道の駅たのうら15:00→15:40八代駅前16:13→17:02松橋産交17:23→18:12熊本バスターミナル19:15→20:07大津駅/肥後大津20:40→21:35阿蘇駅
4日目は、テレビ映えする「海を渡る路線バス」を入れてみましたが、検校橋経由でもかまいません。
「モデルルート」も考えてみる
次に実現できそうなのは、蒲江から夜間15km歩く乗り継ぎでしょうか。日南駅折り返しを組み合わせると、以下のようなルートが考えられます。
▽1日目
別府駅前09:54→10:26大分駅前→徒歩0.3km→中央通り11:45→13:36佐伯駅16:20→17:12道の駅かまえ→徒歩15km→波当津集会所前
▽2日目
波当津集会所前→徒歩6km→直海→徒歩5.7km→古江10:21→11:13延岡駅11:20→12:15都町→徒歩0.2km→日向市駅東口13:30→14:19宮の下→徒歩1.3km→あけぼの団地→徒歩4.8km→道の駅つの16:18→16:51高鍋バスセンター17:00→18:27宮交シティ19:00→20:39日南駅前
▽3日目
日南駅前06:59→08:39宮交シティ09:00→09:46青井岳温泉10:20→11:02都城駅前12:00→13:13霧島神宮前14:33→15:00重久車庫15:20→16:48鹿児島中央駅17:43→19:19宮之城/鉄道記念館前19:59→20:38出水バスセンター
▽4日目
出水バスセンター07:25→07:56水俣駅前09:07→10:07道の駅たのうら10:20→11:00八代駅前11:48→12:37松橋産交13:30→14:19熊本バスターミナル14:37→15:32大津駅前/肥後大津16:40→17:45阿蘇駅
初日の蒲江からの徒歩15kmがいかにも重く、現実感に乏しい乗り継ぎに違いありませんが、マドンナのやる気に田中や羽田が応えて歩き出していれば、3日目以降はラクな道のりでした。そのため、これを一つの「モデルルート」として挙げておきます。
青井岳温泉を抜けるルートについては、実際には宮交シティの案内所で聞き出せませんでしたが、運がよければ知ることは不可能ではなかったでしょうから、「モデルルート」には入れておきます。
熊本から阿蘇駅へのアプローチについては、特急バス「やまびこ号」か「九州横断バス」を使わない限り、JR豊肥線の代替バスに乗るしか方法がなさそうです。「やまびこ号」の利用の可否はなんともいえませんが、テレビ番組としては、映像に希少性があるJR代替バスを想定していたのではないか、と思います。
「モデルルート」と書きましたが、1日目に15km、2日目に18kmを歩く難行ですので、これを「正解」という認識はありません。「正解に近い」として挙げたその上のルートも、「正解」とするには徒歩が厳しすぎます。
ただ、第9弾で甲子トンネルを越えて13.7kmを歩ききりゴールした一行の驚異の脚力を思い起こせば、このくらいの徒歩移動を、制作陣が想定に織り込んでいても不思議はなさそうです。
お約束の仕掛け
まとめてみると、今回のお題も、一行の脚力が試された設定でした。初日に15km歩くか、実際ルートのように2日目、3日目に無理をするか、いずれにしても長距離の徒歩は避けられない形になっています。
鹿児島から熊本へ北上する西海岸は順調に進めますので、前半に苦戦して後半に盛り返すという、「ローカル路線バスの旅」のお約束の仕掛けになっていました。実際には、ゴールよりはるか手前で力尽きてしまいましたが、それも制作サイドからみれば、想定の範囲内でしょう。
特急バスについては、利用の可否はともかくとして、上述したように利用をあまり想定していなかったと考えます。
難易度は
今回のルートでゴールするには、綿密な情報収集力に加え、的確な判断力、大胆な決断力、強い脚力が求められたように思われます。ミスはほぼ許されません。したがって、難易度は非常に高かったと表現できます。
ゴール地点を熊本城にでもしておけば、難易度は多少下がったことでしょう。しかし、初日にモデルルートのような勢いで波当津まで至った場合、熊本ゴールでは早く着きすぎる恐れもありました。
連勝中でもあり、番組としては、失敗上等で、難易度が非常に高い阿蘇ゴールとしたのでしょう。仮に一行が熊本までたどり着いたとしても、阿蘇へ至るコースを見つけ出すのには、骨が折れたと想像できます。その点からみても、成功確率は非常に低いお題だったと感じます。
それにしても、一行の猛然たる歩きっぷりを見せられると、今後も徒歩の短いルートは設定されにくいのでは、考えずにはいられません。となると、これからも田中・羽田コンビとマドンナの脚力を試すようなルートが続きそうです。(鎌倉淳)