JALが新たな格安航空会社LCCの設立を検討していることがわかりました。シンガポールで大川順子副会長が明らかにしました。
欧米路線を検討
ブルームバーグ2018年5月7日付は、JALの大川順子副会長がシンガポールでのインタビューにおいて「格安航空会社の設立は、商品ラインナップを広げるために必要なことの一つ」と発言したことを報じました。ただし、「会社が検討している選択肢の一つであり、まだ何も決まっていない」と付け加えたとのことです。
JALは現在、日本国内のLCCであるジェットスター・ジャパンに出資していますが、3割強の出資比率にとどまります。大川副会長が明かした選択肢の一つとは、JALが過半数の株式を握る新会社のLCCの設立とみられます。
さらに、ブルームバーグを後追いする形で日本経済新聞5月8日付夕刊も「日航、中長距離LCC参入」と報じました。日経によりますと、「新会社は成田国際空港を拠点に、日航の既存国際線が就航していない北米や欧州の中堅都市向けの路線を検討している」とのことで、「東京五輪・パラリンピックが開かれる20年に運航を始めたい考え」としています。
中期経営計画に記述なし
JALにおいて、ジェットスター・ジャパン以外のLCC設立計画が公表されたことはありません。2018年2月に発表された「中期経営計画ローリングプラン2018」にも独自LCCの記述はなく、「外資系本邦LCCとのパートナー関係を深め、低価格を武器に訪日と地方送客に貢献」と記すのみで、ジェットスターとの連携を深める方針を掲げています。
そのため、このJALの新LCC計画は、最近浮上してきた新しい選択肢なのでしょう。
副会長が自らメディアで発言したことから、JALの新LCC設立の方向性は固まっているとみられます。また、発言場所がシンガポールであることも勘案すれば、成田~シンガポールも含めた中距離路線も含まれる可能性が高いでしょう。
ANAに対抗
中距離LCCは、ANAも参入方針を明らかにしており、JALはそれに対抗する姿勢を明確にしたといえます。ジェットスター・ジャパンが参入していない分野であることから、グループ内競合が避けられると判断したのかもしれません。
最近のLCCの世界的な好調を見るにつけ、JALの新LCC計画の未来は明るいようにもみえますが、ジェットスター・ジャパン初期の増資に次ぐ増資を思い起こせば、LCCを軌道に乗せるのが大変であることも想像できます。
実現するのであれば、ジェットスター・ジャパンとピーチの2大勢力が翼を広げている日本のLCCに、新LCCがどう分け入っていくのか、大注目となりそうです。(鎌倉淳)