新生エアアジア・ジャパンが国内線で新規就航し、日本のLCCは5社体制となりました。一方、既存4社のうち、2017年に発表された決算で黒字を計上したのは2社。残り2社が赤字に沈みました。
ここでは、2017年に発表された既存国内LCC4社の決算を比べてみましょう。
ジェットスター・ジャパン
■第6期決算公告(2017年6月期) 2016.09.27官報
資本金205億円 資本剰余金205億円 利益剰余金-295.94億円
売上高528億円 営業利益10.99億円 経常利益14.10億円 当期純利益4.98億円
【参考】第5期決算公告(2016年6月期)
資本金205億円 資本剰余金205億円 利益剰余金-300.93億円
売上高522億円 営業利益13.05億円 経常利益1.53億円 当期純利益0.63億円
売上高首位のジェットスター・ジャパンは、営業利益こそ減らしたものの、売上高、純利益とも増益で、増収増益となりました。最終損益にあたる純利益は約5億円を確保し、累積損失(利益剰余金のマイナス)は、そのぶん改善しました。
しかし、累積損失は依然として295億円と大きく、現在の利益のペースでは、解消まで単純計算で59年かかることになります。
ピーチ・アビエーション
■第7期決算公告(2017年3月期) 2017.06.29官報
資本金75.15億円 資本剰余金74.85億円 利益剰余金50.34億円
売上高517億円 営業利益63.02億円 経常利益53.87億円 当期純利益49.44億円
【参考】第6期決算公告(2016年3月期)
資本金75.15億円 資本剰余金74.85億円 利益剰余金20.40億円
売上高479億円 営業利益61.81億円 経常利益47.59億円 当期純利益27.44億円
売上高2位のピーチも増収増益です。売上高、営業利益、経常利益、最終利益の全てで前年度を上回り、好調を維持しています。ピーチは前年度までに累積損失を一掃していますが、今年度は利益剰余金を50億円にまで積み増しました。
売上高の伸び率は鈍っており、高成長から安定成長に移りつつある、ともいえそうです。
バニラ・エア
■第6期決算公告(2017年3月期) 2017.06.22官報
資本金75億円 資本剰余金75億円 利益剰余金-120.23億円
売上高239億円 営業損失0.60億円 経常損失2.08億円 当期純損失7.11億円
【参考】第5期決算公告(2016年3月期)
資本金75億円 資本剰余金75億円 利益剰余金-113.12億円
売上高217億円 営業利益14.99億円 経常利益13.85億円 当期純利益24.35億円
バニラエアは赤字転落です。前期で初の黒字を計上しましたが、1年で赤字に逆戻り。約7億円の最終損失を計上しました。
バニラエアの赤字の理由は、同社の主力である台湾線と香港線が、供給過多に陥ってしまったことにあるそうです。そのため客単価が下落して利益率が落ち、黒字を確保できませんでした。
春秋航空日本
■第5期決算公告(2016年12月期) 2017.04.25官報
資本金114億円 資本剰余金54億円 利益剰余金 -152.98億円
売上高51.62億円 営業損失38.17億円 経常損失37.83億円 当期純損失37.91億円
【参考】第4期決算公告(2015年12月期)
資本金106.55億円 資本剰余金46.55億円 利益剰余金 -115.07億円
売上高25.21億円 営業損失48.39億円 経常損失48.78億円 当期純損失49.00億円
春秋航空日本も赤字決算です。とはいえ売上高が倍増し、損失額は縮小しており、経営状況は改善しています。
春秋航空日本では、現在の売上高が約51億円と小さいため、LCCとして利益を生み出せる規模に達していないようです。黒字化にはもう少し規模の拡大が必要になりそうです。
国内5社体制でどうなる?
2017年10月29日には、新生エアアジア・ジャパンが中部~札幌線で就航しました。これで、国内LCCは5社体制となります。
既存LCC4社の売上高の伸び率が鈍っているなか、中部拠点のエアアジア・ジャパンには厳しい船出も予想されています。
一方で、インバウンドは依然好調で、今後も訪日客需要を取り込めば、各社とも成長は期待できそう。5社が全て生き残っていけるのか、注目したいところです。(鎌倉淳)