特急「やくも」の後継車両はどうなる? 新型車両登場で381系は引退、国鉄型特急電車は消滅へ

最後の国鉄型特急電車となりそうな「やくも」。その後継車両がようやく具体化しそうです。JR西日本が2022年度をめどに新型車両導入をめざし、社内手続きに入ると報じられました。後継はどんな車両になるのでしょうか。

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2022年度導入を検討

山陰中央新報2017年5月19日付は、JR西日本が伯備線特急「やくも」の新型車両について、「2022年度の導入をめどに検討する見通し」と報じました。島根、鳥取、岡山県の国会議員や県議がJR西日本幹部と非公式会談をし、「22年度までの新型車両の導入を求め、JR西は社内手続きを進める考えを伝えた」とのことです。

現在「やくも」に使われている車両は、国鉄時代に開発された381系電車です。伯備線に投入されたのは1982年。導入から35年が経過しており、2022年度に置き換えられるとすれば、車齢が約40年となります。

頑丈な国鉄型車両とはいえ、相当な長寿。引退が残念というよりも、あと5年も381系が走るのか、と驚いた人も多いのではないでしょうか。記事では「2022年度の導入をめどに検討する見通し」という腰の引けた言い回しを用いていますが、車齢を考えればこのあたりが限界でしょう。

やくも

振り子式の問題点

よく知られている通り、381系電車は日本初の「振り子式」営業車両(自然振り子式)です。振り子式は車体を傾斜させることで曲線での高速運転を可能にした車両で、中央西線特急「しなの」や紀勢線特急「くろしお」などで使われてきました。

しかし、自然振り子式は、揺れ方が大きく、乗り心地に難があります。その後、乗り心地を改良した「制御付き自然振り子式」も開発され、各地の特急車両に広く導入されましたが、製造やメンテナンスに費用がかかりすぎる、という問題が残りました。

そのため、最近のJR各社では、振り子式にかわり「空気バネ車体傾斜式」が導入されるケースが増えています。中央東線「あずさ」に新たに導入されるE353系も空気バネ式です。

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「JR他社の車両で試験走行」

「やくも」の後継車両が、制御振り子式を使うのか、空気バネ式を使うのか、明らかではありません。山陰中央新報では「JR西は今後、他のJRが保有する『空気ばね式車両』を借り、伯備線で試験走行を実施」したうえで、「自社保有する『制御付き自然振り子車両』などを含めて効果を検証し、その後、新型車両の設計構想を固め、生産を始めたい考え」としています。

JR西が借りようとしている「他のJRが保有する空気ばね式車両」がどの形式なのかは明らかではありませんが、JR四国の8600系が想像されます。同紙によれば、「JR西は今後行う試験走行の結果などを踏まえ、最終判断するとみられる」としており、曲線の多い伯備線に適した車体傾斜方式を模索しているようです。

最近の技術の流れを見ると空気バネ式が有力と思われますが、伯備線で十分な時短効果が得られないと判断されれば、制御振り子式もあり得る、というところでしょうか。

タイミング的には北陸新幹線敦賀開業時と重なるので、特急「サンダーバード」「しらさぎ」の運転区間短縮で余剰となる683系を転用するという可能性もありそうですが、記事の文脈を見る限り、新車になりそうです。

最後の国鉄型特急電車

国鉄分割民営化から30年。国鉄型車両は次々引退しており、定期運用の国鉄型特急電車は185系「踊り子」と381系「やくも」だけになっています。「踊り子」の185系は数年以内に退役する方針が報じられており、「やくも」が最後の定期運用の国鉄型特急電車となりそうです。

381系「やくも」の引退は、国鉄型特急電車の消滅を意味します。寂しい面もありますが、新技術を投入した新型車両が誕生するのであれば、それはそれで楽しみです。

話題性のある新型車両が登場すれば、山陰エリアの観光振興にも役立つことでしょう。(鎌倉淳)

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