JALが2020年度を最終年とする中期経営計画を発表しました。旅行者からみたポイントは、エアバスA350を2019年度から国内線に導入することと、離島路線などにATR42-600を導入すること、JAL SKY NEXTの展開を完了することでしょうか。全体に、LCCとは一線を画すプレミアム路線を強調しています。
ボーイング787よりちょっと広い
JALの新中期経営計画は、2017年4月28日に公表されました。「フルサービスキャリア
事業を磨き上げる」「事業領域を拡げる」の2点を骨子としています。LCCとは対極にある「プレミアムエアライン」としての存在感を高めながら、航空関連事業への進出を目指す、ということのようです。
旅行者に関係のあるポイントだけを抜き出すと、最も大きなトピックはA350の2019年度国内線導入でしょう。A350は2015年にカタール航空で初運用開始となったばかりのエアバス最新鋭機で、ボーイング787型機の対抗機種となる存在です。大きめの中型機で航続距離が長く、燃費性能に優れるという特徴があります。
787に比べると、客室の最大幅が約12.7cm広くなっています。横9列の配置で比べた場合、単純計算でA350のほうが一席当たり1cmほどシート幅が広くなります。JALは現在国内線でB787を運用していませんが、ANAのB787に比べた場合、JALのA350は少しだけシート幅が広くなりそうです。
離島路線にも新機種
もう一つの新規導入機種ATR42-600は、2012年に運航を開始した新鋭機です。座席数50人程度の小型機で、JALグループの日本エアコミューターが導入します。同社は奄美方面の離島路線が多いので、そのエリアに出かける人には注目の新機種となります。
一方、32機を確定発注しているMRJについては、2021年度以降の導入とされました。いうまでもありませんが、これは航空機メーカーの都合でしょう。
JALグループ全体の現有230機は2020年度末に231機になります。機体数は大きく変わらないものの、リージョナル機を除くと174機が182機と増えるとのことで、リージョナル機を絞り込むようです。
国際線を重視
中期経営計画の今後4年間で注力するのは、国際線です。航空会社の輸送能力を示す座席キロ(ASK=座席数×飛行距離)の計画は、国内線が2021年3月期までに5%増なのに対し、国際線は23%増を目指します。
運用する機数が大きく変わらないため、深夜・早朝枠などを活用することで効率化し、国際便の就航都市や便数を増やすとみられます。全体の海外需要比率を高め、50%超を目指すとも記されており、北米とアジアの乗り継ぎ需要を重視していくようです。
一方、国内線ではJAL SKY NEXTを全77機で導入を完了させ、機内Wi-Fiの無料化も継続するそうです。「フルサービスキャリア事業を磨き上げる」のキャッチフレーズ通り、全体的にプレミアム戦略を重視する姿勢が見て取れます。
ジェットスター・ジャパンの記述なし
ところで、JALは格安航空会社LCCのジェットスター・ジャパンにも出資していますが、中期経営計画では触れられていません。ANAが同日発表した中期経営戦略「ローリング版2017」で、ピーチとバニラの関連LCC2社について、「第4のコア事業化」を謳っているのと対照的に見えます。
ジェットスター・ジャパンが、豪カンタス航空との共同事業であることが、中期経営計画から外れている大きな理由でしょうか。世界の航空業界がLCCになびくなか、「フルサービスキャリア事業を磨き上げる」というJALの経営方針が利用者にどう受け入れられるかは、注目したいところです。(鎌倉淳)