東京メトロが新しい中期経営計画を発表しました。丸ノ内線への新型車両の導入のほか、新プロジェクトも続々発表されています。
中期経営計画の内容は多岐にわたりますので、ここでは、乗客が日常的に触れる部分を中心に紹介します。これから東京メトロがどう変わっていくかを、路線別にまとめてみました。
銀座線
路線別に話題豊富なのは銀座線。現在、全駅でリニューアル工事を進めており、ホームドアを全駅で2018年度までに設置します。新型車両は2012年度に導入開始した1000系を、2016年度までに全40編成を配備する予定です。また、標準電圧を600Vから750Vに切り替えます。
施設面では、浅草駅構内で折返し線を整備します。これにより、上野駅~浅草駅間の列車増発が可能となり、一部の上野駅折返し、上野駅止まり列車を浅草駅まで延長します。2020年度実施予定です。
渋谷駅は移設・改良工事中で、2019年度に新ホーム供用開始予定です。
新橋駅でも改良工事を実施しており、渋谷方面行ホームを延伸し、階段・エスカレーター・エレベーターを再配置するとともに、ホーム幅員を広げます。2022年度供用開始予定です。
再開発関連では、虎ノ門駅周辺も注目です。日比谷線が虎ノ門新駅(仮称)を設置しますが、これに伴い、銀座線虎ノ門駅も、周辺開発等と連携した改良を実施します。隣接する再開発用地を活用して、渋谷方面ホームを拡幅。地下駅前広場も整備し、桜田通りに出入口も新設します。
日本橋駅や京橋駅でも、周辺再開発事業と連携した改良工事が予定されています。ホーム・コンコースの拡幅や、エスカレーター・エレベーターなどの増設をおこないます。
丸ノ内線
丸ノ内線にも大きな動きがあります。まず、新型車両6両編成全53編成を2018年度に投入開始し、2022年度に完了します。新型車両には操舵台車を導入し、走行安全性を向上させます。また、銀座線とともに、標準電圧を600Vから750Vに切り替えていきます。
方南町駅のホーム延伸も注目です。当初計画より遅れているようですが、2019年度には供用開始されるとのこと。これにより、新宿・池袋方面からの6両編成列車直通運行を実施。その後、早朝・深夜時間帯の池袋方面行中野坂上駅折返し列車の一部を新宿三丁目駅まで延長する計画です。
丸ノ内線では、CBTC(無線式列車制御)システムの導入も計画されています。CBTCは、先行列車の位置から後続列車が走行可能な位置を算出し、無線を介して後続列車に伝えるシステムです。これにより、後続列車は自ら走行可能な速度を計算し移動ことができ、列車間隔をさらに短くすることが可能になります。
今回導入するシステムは、日本の鉄道環境に合わせ、高密度運転でも安定的に通信を維持する機能を備えています。また、等間隔運転機能や、駅間の停止を防ぐ機能も備えています。
日比谷線
日比谷線については、新型車両13000系を全44編成を2016年度に導入開始し、2020年度に配備を完了します。丸ノ内線同様、操舵台車を導入し、走行安全性を向上させます。日比谷線の狭軌用操舵台車は、新たに開発されたものです。
これにより、日比谷線・東武線直通車両のすべてを4扉車両(20m化7両編成)に統一します。これを受けて、ホームドアの設置を開始。2022年度までに完了する予定です。
また、上述しましたが、日比谷線では虎ノ門に新駅も設置予定。銀座線と接続します。
乗換駅の追加設定も行われます。築地駅と有楽町線新富町駅、人形町駅と半蔵門線水天宮前駅が乗換駅に設定されます。人形町駅については、改札通過サービスを新規導入し、メトロ、都営双方の出入口を、いずれの利用者が通過できるようになります。
東西線
東西線も動きが多いです。車両関連では、ワイドドア車両3編成を2016年度に投入します。あわせて、既存車両のリニューアルも実施。2012年度より17編成の更新を続けており、2021年度完了予定です。
施設関連では、飯田橋駅~九段下駅間の折り返し線を改造します。既存の折返し線を本線化し、交差支障を解消します。これにより折返し列車と後続列車の同時運行が可能となり、列車増発が可能になります。2019年度供用開始予定です。
茅場町駅では、ホーム延伸を含めた大規模改良を行います。ホームを40m延伸し、列車停止位置を変更。エスカレーターを増設します。混雑緩和を図るとともに、日比谷線への乗換えをスムーズにします。2020年度供用開始予定です。
木場駅では、ホームとコンコースを拡幅するとともに、エスカレーター・エレベーターを増設します。木場駅はシールドトンネルの地下駅ですが、列車を運行しながら地上から掘削を進め、既設のシールドトンネルを解体して新たな空間を生み出します。こうした工事は世界初とのこと。2021年度供用開始予定です。
南砂町駅では、ホーム1面、線路1線を増設し、2面3線化します。列車の交互発着が可能となり、ホーム上の混雑が緩和されます。2021年度供用開始予定です。
九段下駅の中野方面行ホームでは、新型ホームドア実証試験をおこないます。これは、車両のドア位置・ドア幅が異なる列車が運行されている路線でも対応できる新型ホームドアを設置するためのものです。
千代田線
千代田線では、16000系車両の増備を進め、全37編成の配備を2017年度に完了する予定です。また、北綾瀬駅のホームを延伸し、代々木上原方面からの10両編成列車が直通運転します。2018年度実施予定です。
ダイヤ関連では、朝ラッシュ時間帯の霞ケ関駅折返し列車の一部を代々木上原駅まで延長します。夕方~深夜時間帯の列車も増発します。
有楽町線・副都心線・南北線・半蔵門線
有楽町線では豊洲市場開場にあわせ、始発時刻を早め、早朝の列車を増発します。また、夕方~深夜時間帯の列車を増発します。
副都心線では、日中時間帯の新宿三丁目駅折返し列車を池袋駅まで延長します。
南北線では、9000系8編成をリニューアルします。2016年度営業開始、2018年度完了予定です。また、夜間、深夜時間帯の列車を増発します。
半蔵門線には大きな動きはありませんが、水天宮前駅が人形町駅の乗り換え駅となります。また、中期経営計画には記述されていませんが、永田町駅では押上方エスカレーターを3線から4線にし、エレベーターを設置する工事が進められています。
フリースペースを全車両に設置へ
各路線にまたがる計画としては、以下のようなものがあります。
まず、今後、新車両の導入や既存車両のリニューアル工事の際に、車いすスペースと同等の車両内フリースペースを増設し、全車両に1か所設けることを原則とします。ベビーカーの利用が増えていることへの対応とみられます。
また、優先席付近の吊り手は低いタイプへ交換していきます。永久磁石同期電動機(PMSM)や車両内LED照明など、省エネルギー装置の導入も進めます。
車両内には、セキュリティカメラの設置を検討します。駅構内においても、セキュリティカメラの増設や機能向上に向けた取組みを進めます。
トイレは温水洗浄便座に
バリアフリー工事としては、メトロ全駅でエレベーターによる地上までのルート整備を進めます。また、病院に近い駅、2020年東京オリンピック・パラリンピックの競技会場最寄駅などでは、複数ルートの整備を推進します。2019年度完了予定です。
全駅への多機能トイレの整備も進めています。和式トイレを洋式トイレに置き換えていくとともに、便座クリーナー、温水洗浄便座、手指乾燥機を設置していきます。また、ベビーチェアやオストメイト対応設備などを備えた多機能トイレを導入していきます。
駅構内にワークスペースも設置
ホームベンチは、座席形状を変更するとともに、ベンチの配置をバランスよく見直しています。
駅構内においては、ワークスペースも設置します。これは、PC・タブレット端末・スマートフォンによる作業ができる、電源設備やWi-Fi等の通信環境が整ったカウンターを整備するものです。
駅構内では、位置測位インフラ整備を整備し、ナビゲーションサービスを提供します。2020年度の提供開始予定です。
券売機もリニューアル
券売機も変わります。都営地下鉄と共同で次世代券売機を開発し、券売機操作に不慣れな人や訪日外国人にも容易に操作できるようにします。多言語対応、路線図や観光スポットから目的地を検索できるなど、シンプルでわかりやすい券売機を目指します。
すでに2016年3月に上野駅に試験導入しており、今後、浅草駅・新宿駅などにも設置。試験結果を踏まえ、本格的な設置を進めていきます。
また、1日乗車券などの企画乗車券についてはPASMOに搭載可能としていきます。
メトロはやっぱり話題豊富
それにしても、東京メトロは話題豊富です。他社ではPRしないようなこともきっちり広報しているという点もありますが、やはり東京の地下鉄だけあって、改良・更新点が多いのでしょう。
今回の中期経営計画には触れられていませんが、今後は豊住線(豊洲~住吉)や、南北線延伸(白金高輪~品川)などのプロジェクトも、準備が具体化するにつれ掲載されていくとみられます。
東京メトロは、首都を支える重要な交通インフラですから、今後も一層の改良・改善を期待したいところです。(鎌倉淳)