北海道新幹線は、青森県青森市から北海道札幌市を経て旭川市までを結ぶ計画の新幹線です。このうち、青森市から札幌市までの区間が整備計画路線(整備新幹線)、札幌市から旭川市までが基本計画路線です。
現在、新青森駅~新函館北斗駅間148.8kmが開業済みで、新函館北斗~札幌間211.5kmが建設中です。この記事では、基本計画路線の札幌~旭川間を取り上げます。
北海道新幹線旭川延伸の概要
札幌~旭川間は在来線で136kmです。北海道新幹線旭川延伸促進期成会によれば、旭川新幹線のルートは、現在の函館線に沿って、最高速度360km/hが可能になるよう、できるだけ直線的に設定します。
フル規格単線の新幹線路線を想定します。駅位置、駅数については、現在の特急停車駅、人口集積度、在来線との接続を考慮して設定します。
こうした条件でみてみると、候補となる途中駅は、岩見沢、美唄、滝川、深川あたりでしょうか。
所要時間
札幌~旭川間の現在の所要時間は在来線特急で約1時間25分です。この区間に新幹線を建設し、最高速度を360km/hとした場合、29分で結ばれます。最高速度260km/hの場合は35分です。
東京~旭川間の所要時間については、最高速度が360km/hの場合で4時間25分、260km/hの場合で5時間50分とされています。なお、現状は9時間23分です。
需要予測
駅間通過人員は、旭川~滝川間で8,734人、旭川~岩見沢間で9,866人、岩見沢~札幌間で9,945人になると予想しています。
新幹線整備により、おおよそ50%増えるという見込みです。
JR北海道による在来線高速化計画
JR北海道は、北海道新幹線の旭川延伸について、特段の動きをみせていません。いっぽう、2026年までの中期経営計画で函館線札幌~旭川間の高速化を掲げていて、現在1時間25分の所要時間を最速60分にすることを目指しています。
JR北海道の構想は在来線の高速化であって、新幹線建設ではありません。新幹線計画路線に並行する在来線で高速化を掲げたことは、「新幹線建設ではなく、在来線改良で高速化を実現する」姿勢を示したともいえます。
ただ、在来線高速化は必ずしも新幹線計画と相反するものではありません。というのも、国土交通省は、「新たな新幹線整備手法」として、在来線改良による高速化を検討しているからです。その目標は最高速度200km/hです。
JR北海道は、この方式で「旭川新幹線」を実現しようとしているのかもしれません。言い方を変えれば、JRの構想は、新幹線の基本計画路線を在来線改良に落とし込む内容といえます
つまり、将来的には、在来線改良による「最高時速200km/hの狭軌新幹線」として、北海道新幹線旭川延伸が実現する可能性もあるということです。
北海道新幹線旭川延伸の沿革
北海道新幹線は、「全国新幹線鉄道整備法」に基づいて整備が進められている新幹線です。1972年7月3日運輸省告示第243号により青森市~札幌市が基本計画区間に追加され、1973年11月13日に、同区間の整備計画を決定しています。同日、札幌市~旭川市も基本計画区間に追加されました。
このうち、新青森~新函館北斗間は2016年3月26日に開業しています。新函館北斗~札幌間は2030年度末の開業を目指していますが、工事は順調に進んでおらず、開業は2030年度半ば以降になりそうです。
札幌~旭川間は「基本計画路線」と位置づけられていて、現時点で着工の見通しはありません。事業着手するとしても、新幹線の札幌開業後ということになります。
そもそも、旭川に新幹線という考え自体が、かつては夢物語でした。しかし、札幌開業の実現が視野に入ってきたのを受け、建設促進運動が始まりました。2021年3月29日に「北海道新幹線旭川延伸促進期成会」が設立され、毎年夏に、与党や国交省に陳情をしています。
いっぽう、JR北海道は、上述のように2024年に公表した中期経営計画で、在来線の高速化を盛り込み、将来的に函館線札幌~旭川間を60分で結ぶことを目標にすると明らかにしています。完成時期は明確ではありませんが、「新幹線札幌開業後」と位置づけています。
北海道新幹線旭川延伸のデータ
営業構想事業者 | JR北海道 |
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整備構想事業者 | 鉄道・運輸機構 |
路線名 | 北海道新幹線 |
区間・駅 | 札幌~旭川 |
距離 | 136km(在来線) |
想定輸送密度 | — |
総事業費 | — |
費用便益比 | — |
累積資金収支黒字転換年 | — |
種別 | 第一種鉄道事業 |
種類 | 新幹線鉄道 |
軌間 | 1,435mm |
電化方式 | 交流25,000V |
単線・複線 | 単線 |
開業予定時期 | 未定 |
備考 | 全国新幹線整備法 |
※データはおもに北海道新幹線旭川延伸促進期成会ウェブサイトに基づく。
北海道新幹線旭川延伸の今後の見通し
新幹線の基本計画路線は全国で11路線あり、その多くの沿線で「整備新幹線」への格上げを求める運動が始まっています。旭川延伸に向けた期成会設立は、その波に乗り遅れまい、という動きとみられます。
現段階で即座の着工を求めているわけではなく、「次のリスト」に盛り込まれることを目的としているのでしょう。
実際に建設するとなれば採算性が問われますし、財源や並行在来線の問題も生じます。「次のリスト」に盛り込まれたとしても、着工へのハードルは低くありません。
いっぽう、JR北海道は、2024年に在来線の高速化構想を掲げました。JR北海道が、このタイミングで、新幹線札幌開業後の目標として在来線高速化を掲げたのは、旭川新幹線建設運動の動きが影響しているのかもしれません。
背景として、仮に旭川新幹線を建設した場合、並行在来線の扱いに困る、という点が挙げられます。輸送密度からすれば、函館線岩見沢~旭川間の維持が困難になりますが、廃止となると、旭川で接続する富良野線や宗谷線、石北線が宙に浮きます。JRとしては、新幹線を作るより、並行在来線問題が生じない在来線高速化のほうが都合がいい、ということでしょう。
新幹線札幌駅は2面2線の通過式で、線路は旭川方面へ抜けられるようになっています。しかし、線路容量は小さく、ホームの増設余地も乏しく、延伸を考慮した形になっているとも言いがたいです。
こうしたことからも、フル規格の新幹線を旭川方面に伸ばすより、在来線高速化のほうが現実的です。いずれ、新幹線建設スキームを在来線高速化に適用する形が検討されるかも知れません。