中国横断新幹線(伯備新幹線)

岡山市~松江市

中国横断新幹線は、岡山市から島根県松江市に至る新幹線です。全国新幹線鉄道整備法における基本計画路線と位置づけられています。「伯備新幹線」とも呼ばれます。

詳細なルートは未決定で、着工の予定はいまのところなく、開業予定時期も未定です。

中国横断新幹線(伯備新幹線)の概要

中国横断新幹線は、岡山市から島根県松江市に至る新幹線の基本計画路線です。「中国横断新幹線」が正式名称ですが、伯備線に沿うルートなので「伯備新幹線」とも呼ばれます。

1973年に「建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画」に盛り込まれました。しかし、現在に至るまで建設へ向けた動きはなく、具体的なルートや途中駅などは一切未定です。

建設する場合、岡山駅から新見市、米子市を経て松江市に至るルートが想定されます。中国横断新幹線の距離は約150kmとされていますが、これは伯備線で岡山~米子間の距離に相当します。米子~松江間は山陰新幹線も基本計画にあることから、同区間は山陰新幹線との共用を想定して、計画距離を150kmと定めたようです。

ただ、現実には山陰新幹線と伯備新幹線が同時着工する見通しはありません。そのため、伯備新幹線を単独で整備する場合、岡山~出雲市間が計画区間になるとみられます。沿線自治体で組織する「中国横断新幹線(伯備新幹線)整備推進会議」でも、岡山~出雲市間を想定しています。

中国横断新幹線(伯備新幹線)ルート
画像:中国横断新幹線(伯備新幹線)整備推進会議ウェブサイトより


 

所要時間と建設費

京都大学の藤井聡教授による『伯備新幹線の意義とプロセス』(2019年)によりますと、岡山~出雲市間をフル規格で整備した場合、岡山~米子間が33分、岡山~松江間が44分、岡山~出雲市間が58分で結ばれます。

新大阪までは岡山から45分ほどかかりますので、新大阪~松江間が89分、つまり約1時間半という試算になります。

建設費は、岡山~出雲市間をフル規格で整備すると約1兆2700億円、単線の場合は1兆1100億円と試算しています。

伯備新幹線地図
画像:『伯備新幹線の意義とプロセス』(藤井聡、2019)より


 

中国横断新幹線(伯備新幹線)の沿革

1970年の全国新幹線整備法制定後、1973年11月15日に「建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画」に中国横断新幹線が盛り込まれました。いわゆる「基本計画路線」の一つです。

ただ、その後建設に向けた具体的な動きはほとんどありませんでした。伯備線に関しては、1990年代からフリーゲージトレインによる山陽新幹線直通列車導入を目指す運動が、沿線自治体で続いてきたためです。沿線3県では「JR伯備線フリーゲージトレイン導入促進鳥取、島根、岡山三県協議会」を設置して運動を続けていました。

しかし、フリーゲージトレインの技術開発が停滞していること、開発しても山陽新幹線への乗り入れにJR西日本が難色を示していること、時短効果に乏しいことなどから、協議会は2017年に方針を転換。フル規格新幹線の導入を目指し、中国横断新幹線の整備新幹線への昇格に目標を切り替えます。

おりしも整備5新幹線の完成が視野に入ってきた段階でもあり、「次の整備新幹線」に乗り遅れまいとする動きです。結局、2019年に「中国横断新幹線(伯備新幹線)整備推進会議」を設立し、フル規格新幹線の建設促進運動に本腰を入れ始めます。

その後は、新幹線整備へ向けての調査を実施したり、陳情をおこなったりしていますが、建設へ向けた具体的な進捗はありません。


 

中国横断新幹線(伯備新幹線)のデータ

中国横断新幹線(伯備新幹線)データ
営業構想事業者 JR西日本
整備構想事業者 鉄道・運輸機構
路線名 中国横断新幹線(伯備新幹線)
区間・駅 大阪市~松江市
距離 約150km
想定輸送密度
総事業費
費用便益比
累積資金収支黒字転換年
種別 第一種鉄道事業
種類 新幹線鉄道
軌間 1,435mm
電化方式 交流25,000V
単線・複線 未定
開業予定時期 未定
備考 全国新幹線整備法

中国横断新幹線(伯備新幹線)の今後の見通し

中国横断新幹線(伯備新幹線)は、山陰新幹線と密接に関わる路線です。山陰新幹線は、北陸新幹線の東小浜から分岐して、舞鶴、豊岡を経て鳥取、米子に至るルートを想定しています。このルートの場合、大阪から松江方面は遠回りになります。

そのため、山陰新幹線が小浜ルートで建設運動をしている以上、松江方面には迂遠なので、島根県としては伯備新幹線の建設を促進する立場となります。その想定区間は岡山~出雲市間で、中国横断新幹線の基本計画の岡山~松江間よりも長くなっています。

ただ、フル規格で作るとなると1兆円規模の事業になりますし、並行在来線である伯備線の扱いも問題になります。伯備線の普通列車の利用者は少なく、特急を抜きにして旅客鉄道として維持するのは難しい水準です。しかし、貨物列車が走っていますので、廃止するわけにもいきません。

財源問題にくわえ並行在来線問題もあるわけです。こうしたことから、伯備線のフル規格建設は、当面難しいというほかなさそうです。