ビューカードで、Suica非搭載、タッチ決済搭載を選べるようになります。交通系ICカードの「総本山」ともいえるJR東日本のクレジットカードで、タッチ決済が選択可能になるのは驚きです。
11月15日リニューアル
株式会社ビューカードは、クレジットカード「ビューカード」の「ベーシック・シリーズ」をリニューアルすることを発表しました。11月15日から発行を開始します。
リニューアルにより、「ビュー・スイカ」カードは「ビューカード スタンダード」、「ビューゴールドプラスカード」は「ビューカード ゴールド」へ名称を変更します。
デザインも一新し、カード番号などの情報を裏面に集約。署名欄も廃止します。また、ビューカード ゴールドにはJCBブランドに加え、新たにVISAブランドを追加します。
名称から「スイカ」が消える
リニューアルの最大のポイントは、名称変更でしょう。旧「ビュー・スイカ」は「ビューカードスタンダード」となり、名称から「スイカ」が消えます。
これには意味があり、リニューアル後のビューカードでは「Suicaなし」を選べるのです。
Suicaなしのカードは、「タッチ決済あり」となります。つまり、クレジットカードのタッチ決済機能が搭載されます。「Suicaあり」を選ぶと「タッチ決済なし」となり、Suicaが搭載されます。
法人向けのビューカードでは、すでにSuica非搭載、タッチ決済搭載ができますが、それを広く個人向けにも開放する形です。
Suica経済圏の拡大を掲げるが
いうまでもありませんが、JR東日本はSuicaを先駆けて導入した、いわば交通系ICカードの「総本山」で、株式会社ビューカードはJR東日本の完全子会社です。
JR東日本は中長期ビジネス成長戦略で「Suica 経済圏の拡大」を掲げていて、交通系ICカードの使用を強く推進しています。
そのJR東日本のクレジットカードが、Suicaのライバルであるタッチ決済を本格導入するわけで、意外感を覚える方も多いのではないでしょうか。
「仕方なく」導入?
背景を考えてみると、タッチ決済は国内外で急速に広まっていて、使用できないクレジットカードは不便、という単純な事情が垣間見えます。
タッチ決済を導入していないクレジットカードは使用率が下がりますので、クレジットカードとしての競争力を保つには、タッチ決済を導入せざるを得ないのでしょう。
今回のリニューアルを報じるプレスリリースには、タッチ決済導入は記されておらず、詳細ページをよく読めばわかる、という程度の扱いになっています。
他社のクレジットカードがタッチ決済を大々的にPRするなか、リニューアルの告知にすら盛り込まないのであれば、PRに消極的というほかありません。つまり、「仕方なく」導入したと感じられます。
モバイルSuicaを促す
Suicaについて、最近のJR東日本は、モバイルSuicaの利用を推進しています。還元率を高めに設定するなどして、アプリの導入や使用を促しています。
背景として、世界的な半導体不足のなか、ICカードが一時的に供給不能になってしまったことが挙げられます。
ただ、今回のリニューアルから振り返ると、モバイルSuica推進は、ビューカードのタッチ決済搭載を見据えた施策にも感じられます。クレジットカードでのSuica搭載にこだわらず、アプリを強化するという方針でしょう。
鉄道でも導入する?
今後の注目は、JR東日本が鉄道利用でタッチ決済を導入するか、という点でしょうか。
タッチ決済は、全国の交通事業者で急速に広まりつつあり、首都圏でも東急などがすでに導入しています。外国人には使いやすいシステムなので、インバウンド対応としても注目されています。
現時点でJR東日本がタッチ決済を導入する予定はありません。しかし、ビューカードが導入したとなれば、潮目の変化がうかがえます。
将来的には、JR東日本が鉄道利用でタッチ決済に対応する可能性が出てきたといえるかもしれません。(鎌倉淳)