北海道のスキー場、星野リゾートトマムを中国の商業施設運営会社が買収することになりました。買収額は183億円です。トマムスキー場は最近は中国人客に人気ですが、今後は所有会社も中国企業になります。なお、運営はこれまで同様、星野リゾートが継続します。
1998年に施設の4割を5億円で取引
トマムスキー場は1983年に開業したスキー場です。占冠村と関兵精麦、ホテルアルファの出資による第三セクターにより開発されました。国鉄も開発にかかわり、北海道では珍しい駅直結型スキー場としても知られてきました。
しかし、バブル崩壊とともに経営難に陥り、施設の4割を保有していたホテルアルファ(のちアルファ・コーポレーション)は1998年に自己破産しています。
このとき、占冠村は5億円でアルファ・コーポレーション所有分のトマムの資産を買い取りました。民間取引なら25億円かかるところを、自治体が買収することで非課税として5億円に収めたそうです。
2003年には、関兵精麦が民事再生法を申請しますが、このときに、関兵精麦保有分の施設が星野リゾートに売却されています。この売却額はわかりませんが、当時の経済状況からみて、やはり20~30億円程度とみられます。
米系ファンドから中国企業に
星野リゾートが発表した2015年11月11日のプレスリリースによりますと、「星野リゾートトマムを所有する投資会社は、今日まではアメリカ系投資ファンドでしたが、2015年12月1日より中国を代表するコングロマリットの1つであるFosunグループに変更になります」とのことです。
経緯が複雑でよくわからないのですが、トマムの所有権はすでに米系ファンドの手に渡っており、それが今回、183億円で中国企業に売却された、ということのようです。
1998年にトマムの4割の施設が5億円で取引されたことを考えると、今回の183億円という金額はあまりにも巨額です。上述のように、トマムは決して経営が順調だったわけではなく、どちらかといえば経営難のスキー場でした。
星野リゾートになってから経営は再建されましたが、それでも2014年の売上高は61億円、純利益は7億円に過ぎません。それが183億円という、ちょっと信じられないような高値で売れたのです。
ちなみに、加森観光が近隣のサホロリゾートを2001年に買収したときの金額は、わずか10億円です。それと比較しても、183億円は驚きとしかいいようがありません。
今回、中国企業が買収ということで不満に思われている方も多いようですが、これだけの巨費を投じてくれるのなら、ありがたい話ではないか、と筆者は思います。
日中両国の利用者が満足できるスノーリゾートに
正直なところ、トマムはコースのメリハリに難のあるスキー場です。冬季の晴天率は高いですが気温が低く、あまりにも寒いことを欠点に挙げる人もいます。
しかし、初心者が練習するにはいいコースがありますから、雪に慣れていない外国人には向いているかもしれません。寒すぎることは南方からの観光客には楽しみになりますし、晴天率が高いことは遠方からの客が訪れやすい要素といえます。また、最近は雲海も知れ渡るようになり、外国人が楽しめる要素はほかにもありそうです。
今後も運営は星野リゾートが継続するそうですし、日中両国の利用者がそれぞれ満足するような新しいスノーリゾートとして進化することを祈りたいところです。