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東海道・山陽新幹線「特大荷物コーナー」の末路。予約不要の「荷物置場」に転換へ

2025年7月1日より

東海道・山陽新幹線のデッキに設置されている「特大荷物コーナー」が、事前予約不要で利用できるようになります。2025年7月1日からの試験運用ですが、終了時期は未定で、そのまま予約不要の荷物置場に転換されてしまう可能性もありそうです。

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7月1日から予約不要に

JR東海とJR西日本は、東海道・山陽新幹線の「特大荷物コーナー」を、2025年7月1日から、事前予約不要で利用できる「荷物置場」とすることを明らかにしました。試験的な実施ですが、試行期間の終了時期は未定で、「当面の間」継続する見通しです。

東海道・山陽新幹線(16両編成)の「特大荷物コーナー」は、3、5、7、9、13、15号車の6か所に設置されています。列車内に縦・横・高さの3辺合計が160cm超、250cm以内の「特大荷物」を持ち込む際には、この「特大荷物コーナー」か、各車両最後列の「特大荷物スペース」を予約のうえ、置くことがルールとなっています。

JR東海とJR西日本では、こうした荷物スペースを予約をしていない場合、手荷物を座席上の荷物棚などへ収納するよう求めています。7月1日からは、荷物棚に加えて「デッキの荷物置場」も、予約不要で荷物を置けるようになるわけです。いっぽう、予約制の「特大荷物コーナー」の運用は停止されます。

特大荷物コーナー

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なぜ転換するのか

なぜ、「特大荷物コーナー」を、予約不要の「デッキの荷物置場」に転換するのでしょうか。両社は理由として、「昨今の観光等によるご利用の増加」を挙げています。観光客の増加により、座席上の荷物棚に収まりきらないスーツケースなどの置き場に困るケースが増えているということでしょう。

言い換えれば、「特大荷物コーナー」の運用停止は、いわゆる「特大荷物」に満たないサイズの荷物の置き場所が足りなくなっていることや、予約せずに大きな荷物を持ち込む旅客への対処と言えそうです。

さらにいえば、「特大荷物コーナー」は、利用されていない状態を見ることも多いので、スペースが必要な人にきちんときっぷを販売できていないのかもしれません。特定の座席に紐付けて売るという仕組みが、その一因とみられます。

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荷物置き場所をめぐるトラブル

東海道・山陽新幹線の旅客の手荷物については、最後列座席の「特大荷物スペース」でのトラブルをよく聞きます。

スペースを予約していない客が、荷物の置き場所に困り、最後列座席の後方の予約スペースに勝手に荷物を置いてしまうことで、予約者とトラブルが起きているのです。デッキの「特大荷物コーナー」の予約制廃止は、こうしたトラブルを減らしたり、トラブルが発生したときに対処しやすくする目的もありそうです。

荷物スペースを、乗車直前に確保することが難しくなっている状況もあります。当日、駅で新幹線チケットを求めても、荷物を置ける座席が確保できなければ、旅客は荷物置場の予約なしで乗車するほかありません。そうした旅客が、乗車後に荷物を置けるように、いわば「荷物置場の自由席」を設ける目的もあるのでしょう。

また、デッキの「特大荷物コーナー」自体が、予約していない客に勝手に使われてしまうケースもあるようです。デッキの荷物置場として早い者勝ちにしてしまえば、予約にまつわるトラブルはなくなります。

特大荷物スペースつき座席
画像:JR東海プレスリリース

 

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ガイドラインが制定されたが

新幹線への荷物置場の設置は、2018年に成立した改正国際観光振興法で努力義務となりました。法整備を受けて制定されたガイドラインでは、「長距離の利用が見込まれる(略)鉄道車両(略)の内部においては、大型荷物が複数収納できる荷物置き場を乗客の利便性を考慮した箇所に設置すること」を定めています。

ガイドラインの制定を受け、JR東日本では、東北・北海道・上越・北陸新幹線の車両で、客室内座席の一部を撤去して、荷物置場を設置しています。JR西日本も、北陸新幹線ではJR東日本と足並みを揃えています。

しかし、JR東海は、東海道新幹線の客室内に荷物置場を設置せず、最後列座席の後ろを荷物スペースと指定したり、一部デッキにある洗面スペースを荷物置場に改造したりすることでお茶を濁しました。前者が特大荷物スペース、後者が特大荷物コーナーです。これらにより、座席数を維持したままで、ガイドラインを形式上クリアしたわけです。

東海道新幹線は、荷物の少ないビジネス客が多いため、JR東海としても、この程度の対処で足りるとみていたのでしょう。

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多少は改善するかもしれないが

しかし、インバウンドの旅行者は激増しています。そして、東海道新幹線は、日本観光の「ゴールデンルート」を担っています。東海道新幹線のビジネス客利用の割合が高いとはいえ、外国人旅行者の割合は、以前よりはるかに高くなっているでしょう。

外国人観光客がグループで乗車した際などには、荷物棚がスーツケースで埋まってしまっている状態をみることもあります。その場合、後から乗車した旅客は、ちょっとした荷物でも置くスペースに困ってしまいます。

荷物スペースをほとんど増やさない状況で、荷物の多い旅行者が増えたのですから、置き場所が不足するのは当然の話です。最後部座席の後方をめぐるトラブルも、「荷物置場を予約する」という仕組みがわかりにくいことに加え、荷物スペースが絶対的に足りていないことが根本原因のように思えます。

今回、デッキの予約不要の荷物置場を設けることで、東海道新幹線の荷物置場問題は、多少は改善するかもしれません。ただ、「デッキの荷物置場」は16両編成で6か所にすぎず、問題が解決するかは疑問です。

デッキの荷物置場
画像:JR東海プレスリリース

 
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個室を作るのであれば

「特大荷物コーナー」の末路は、東海道新幹線に、適切な荷物置場を設けてこなかったことの帰結と言えるかもしれません。

JR東海・西日本では、「デッキの荷物置場」をいつまで継続するかについて、「試行期間中のご利用実態を踏まえ、終了時期は別途お知らせします」としています。「特大荷物コーナー」に戻す余地を残しているものの、永続的に予約不要の「荷物置場」転換してしまう可能性もあるといえます。

一方で、JR東海は、東海道新幹線に個室や半個室の整備を進める方針を示しています。それも大事なことですが、座席数の統一を崩して個室や半個室を作れるのならば、荷物置場を作ることもできるでしょう。

そろそろ東海道新幹線も、ガイドラインの本来の趣旨に沿う形で、「大型荷物が複数収納できる荷物置き場を乗客の利便性を考慮した箇所に」きちんと設置する時期にきているのではないでしょうか。

端的にいえば、客室内の座席を減らしてでも、誰でも自由に使える荷物置場を作ってはどうか、ということです。(鎌倉淳)

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旅行総合研究所タビリス代表。旅行ブロガー。旅に関するテーマ全般を、事業者側ではなく旅行者側の視点で取材。著書に『鉄道未来年表』(河出書房新社)、『大人のための 青春18きっぷ 観光列車の旅』(河出書房新社)、『死ぬまでに一度は行きたい世界の遺跡』(洋泉社)など。雑誌寄稿多数。連載に「テツ旅、バス旅」(観光経済新聞)。テレビ東京「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」ルート検証動画にも出演。