JR東海が、東海道新幹線に上級クラス座席として「半個室」を2027年度中に新設します。1編成あたり6席という限られた席数です。どのくらいの価格設定になるのでしょうか。座席面積やグランクラスとの比較などから予想してみました。
N700Sのグリーン車を改造
東海道新幹線に新たに導入される上級クラス座席の「半個室」は、現在グリーン車として運用している10号車に6席導入します。通路と座席の間に鍵付きの扉を設け、大型バックシェルタイプの座席を設置します。
座席の前後にカベがないので「半個室」にとどまりますが、プライバシーは保ちやすい構造です。座席を転換すれば、2人で対面利用することも可能です。

座席はレッグレスト付きのリクライニングシートとし、半個室タイプ座席専用の Wi-Fi環境や荷物スペースを整備します。
対象となるのは「N700S」の一部車両です。現在、10号車(グリーン車)の東京方にある20席を改造して設置します。

東京~新大阪間で実施?
運行区間や価格は未定です。
運行区間については、JR東海が単独で発表し、「東海道新幹線への導入」とニュースリリースで銘打っていることから、まずは東京~新大阪間を考えているのでしょう。
JR西日本では導入の告知をしていないので、半個室設置はJR東海保有車両に限られるとみられます。もちろん、山陽新幹線に直通する構想もあるのでしょうが、現時点では、東京~新大阪間で運行する列車におけるJR東海の新サービスとみておきます。
面積的には3.2万円
価格については、これまでのグリーン車20席を、半個室6席に改造するということから考えてみます。
東京~新大阪間のグリーン車の価格(のぞみ通常期)は、19,590円です。内訳は乗車券8,910円、特急料金4,960円、グリーン料金5,400円、のぞみ加算320円です
グリーン車20席の料金は5,400円×20で108,000円です。それを半個室6席に割り当てると1席あたり18,000円となります。
乗車券や特急券とあわせると、東京~新大阪間は32,190円となります。
グランクラス比較なら3.0万円
JR東日本のグランクラス料金とも比較してみます。グランクラスの東京~新大阪間相当(600km以内)の料金は10,640円です。
グランクラスが横3列に対し、半個室は2列です。その視点で考えると、半個室はグランクラスの1.5倍程度の値付けが可能でしょう。
その場合、半個室料金は、グランクラス料金10,640円×1.5=15,960円となります。東京~新大阪間は30,150円と計算できます。
どちらの考え方に依拠しても、東京~新大阪間の半個室の料金は1.6~1.8万円くらいという予想になります。運賃と料金の総額は3.0~3.2万円程度になりそうです。
飛行機の上級シートと比べると
では、この価格は妥当なのでしょうか。ライバルになりそうな、飛行機の上級シートと比べてみましょう。
飛行機は定価がわかりにくいですが、検索すると、JALのファーストクラスやANAのプレミアムクラスの東京~大阪間の運賃は、割引なしで4.5万円程度です。割引価格では、2.3万円くらいから見つけられます。
飛行機には供食サービスなどもありますので、その点は新幹線と異なります。それでも、新幹線の半個室の定価が3.0~3.2万円程度なら、高すぎることはないでしょう。
普通車指定席が14,720円なので、その倍と考えれば、一般的な利用者からみても、納得感のある値付けといえそうです。
個室料金はいくらになる?
JR東海では、半個室とは別に、完全個室も設置する予定です。完全個室は、グリーン車の喫煙スペースだった場所を充てるとみられています。
JR東海の発表によれば、完全個室には、個室専用のWi-Fi、レッグレスト付きのリクライニングシート、照明・空調・放送音量等の個別調整機能を備えます。
完全個室といえど、座席としては半個室と同等のようです。個室ならではの個別調整機能を備える点と、テレワークなどで音声通話ができる点が異なります。
つまり、完全個室と半個室の大きな違いはカベの有無であり、占有面積や座席設備ではそれほど違いがなさそうです。そうなると、価格的にも大差は付かず、東京~新大阪間の個室料金は2万円程度、運賃・料金の総額は3.5万円程度になるのではないでしょうか。(鎌倉淳)