東海道新幹線で改札口を「スキップ」できる日はいつ来るか? JR東海が「EX予約アプリ」と「スマートEX」を発表

JR東海とJR西日本は、東海道・山陽新幹線のエクスプレス予約の公式アプリとして「EX予約アプリ」を提供開始すると発表しました。

同時に、交通系ICカードによる新たな新幹線チケットレスサービスの名称を「スマートEX」とすることも発表しました。Suica、PASMOなどの交通系ICカードで東海道・山陽新幹線に乗車できるようになります。

QRコードによるチケットレスサービスの実験も続けられており、全て揃えば東海道新幹線の改札口を「スキップ」できる日も近そうです。

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エクスプレス予約会員向けのアプリ

「EX予約アプリ」は、エクスプレス予約会員向けのスマートフォンアプリです。エクスプレス予約に専用アプリを導入することは2016年9月に公表されていましたが、2017年2月23日に、その提供が開始されました。

「EX予約アプリ」では、iPhoneなどのiOS用とAndorid用が用意されています。エクスプレス予約による新規予約・購入や変更、払い戻しなどの手続きが可能です。エクスプレス予約の基本的な機能が一通り揃ったアプリといえます。

利用可能なのは、JR東海エクスプレス・カード会員、J-WESTカード(エクスプレス)会員、ビュー・エクスプレス会員のみ。現時点では、プラスEX会員の利用はできません。

EX予約アプリ

東海道新幹線がSuicaで利用できる

同時発表された「スマートEX」は、2016年1月に導入が予告されていた新サービスです。当時は、「東海道新幹線がSuicaで利用できるようになる」と報じられました。

予告されていたサービスの名称が「スマートEX」と決まり、その概要が今回発表された、というわけです。サービス開始は2017年9月の見込みです。

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一般のクレジットカードで利用できる

現在、東海道・山陽新幹線には、チケットレスサービスとして「EXサービス」があります。このサービスを利用できるのはエクスプレスカードや提携クレジットカードを保有する会員(エクスプレス会員、プラスEX会員)だけで、一般のクレジットカードだけを持っている人は使えません。

「スマートEX」では、SuicaやICOCAといった交通系ICカードの保持者で、一般のクレジットカードを持っている人なら、誰でもサービスが利用可能です。

パソコンやスマートフォンなどで東海道・山陽新幹線の指定席を予約・購入し、新幹線改札で交通系ICカードをかざせば、列車に乗車できるようになります。

申込み、年会費は不要

JR東海が今回発表した概要によりますと、「スマートEX」を利用する手続きは、初回にクレジットカードと交通系ICカードを登録するだけです。

列車予約後、手持ちのクレジットカードで決済すると、登録した交通系ICカードが新幹線チケットになります。クレジットカード会社への申込みは不要で、年会費もかかりません。

利用可能なクレジットカードは、ビザ、マスター、JCB、アメックス、ダイナース、J-WESTカードです。主要国際ブランドは網羅していますので、日本で流通しているほとんどのクレジットカードが利用可能になるとみられます。

利用可能な交通系ICカードはKitaca、PASMO、Suica、manaca、TOICA、PiTaPa、ICOCA、はやかけん、nimoca、SUGOCAの10種類。相互利用が行われている全国の交通系ICカードが全て入っています。

スマートEXとEX予約

特定市内駅制度を適用しない?

「スマートEX」のチケット価格について、JR東海では「駅とほぼ同じ価格」としています。「ほぼ同じ」とは、言葉を換えれば「少し差がある」ことを意味します。その差がいくらになるのかはわかりません。

筆者の予想ですが、「スマートEX」は、現在の「EXサービス」と同じく、特定市内駅制度を適用しないとみられます。つまり、「新宿駅から乗っても東京駅から乗っても価格は同じ」という制度を取らないでしょう。

ならば、その対価として、「スマートEX」では、都市内移動の差額相当額を値引くのが妥当です。

たとえば東京~新大阪のチケットなら、東京駅~新宿駅間の200円と大阪駅~新大阪駅160円の、計360円くらいを割り引くのではないか、と筆者は予想します。ちなみに、プラスEXでは、同区間を510円割り引いています。

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「スマートEX」でもアプリが利用可能に

気になるのは、「EX予約アプリ」と「スマートEX」の関係です。JR東海は、2016年9月にアプリ導入を発表した際、「新しいチケットレスサービス」でもこのアプリを利用できるとの見通しを示しました。

となると、2017年9月までに、「EX予約アプリ」は、「スマートEX」利用者が使えるように仕様が変更されることになります。

QRコードも実証実験中

一方でJR東海は、QRコードによる新幹線乗車の実証実験も2016年10月に行っています。ICカードがなくても、チケットレスで新幹線を利用できるようにするためです。すでに、QRコード対応の自動改札機が東海道新幹線に試験導入されています。

EX予約QRコード

QRコード対応の自動改札機が実用化されれば、スマホアプリを利用したチケットレスサービスも可能になるはずです。アプリでスマホ画面にQRコードを表示させ、自動改札口の読取装置にかざせば新幹線に乗車できる、という形です。いわば、ANAの「スキップサービス」やJALの「タッチ&ゴー」の新幹線版です。

こうした「新幹線版スキップサービス」が実現すれば、「スマートEX」の端末は必ずしも交通系ICカードでなくてもよくなります。アプリを使ってQRコードを表示させれば、新幹線改札口を「スキップ」できるのです。スマホを持っていない人向けには、紙にQRコードをプリントアウトさせても使えることになるでしょう。

EX予約QRコード

外国人旅行者にも対応できる

2016年1月のプレスリリースで、JR東海は、「新しいチケットレスサービス」(スマートEX)の導入理由の一つとして「外国人旅行者への対応」を挙げていました。とはいえ、外国人が国外で交通系ICカードを入手するのは難しく、非現実的です。

しかし、QRコードを利用したチケットレスサービスができれば、交通系ICカードを入手できない外国人旅行者も、東海道・山陽新幹線のチケットレスサービスを利用できるようになります。逆にいえば、「スマートEX」導入目的を実現させるためには、QRコード導入が欠かせない、というわけです。

「一般クレジットカード」「スマホアプリ」「QRコード」。この3つが、いつ繋がるのか、まだ明らかではありません。そう遠くない将来に、実現することを期待しましょう。(鎌倉淳)

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