スカイマークが東京証券取引所に再上場を申請しました。株主構成の変化により、ANAとの関係がどう変わるかが注目です。
年内にも再上場
スカイマークは、ANA、JALに次ぐ国内第3位の運航規模の中堅航空会社です。2015年1月に経営破綻したものの、経営再建に成功し、2016年3月に民事再生手続きを終結。2019年10月に、東証へ再上場の申請をしていました。
しかし、新型コロナウィルス感染症の影響で業績が急速に悪化。2020年4月に上場申請を取り下げ、再上場の時期を模索していました。
各社報道によると、スカイマークは11月2日までに再上場を東京証券取引所に申請。早ければ、年内に上場する見通しとのこと。同社は、上場で調達する資金を活用して、新型コロナウイルス感染拡大で痛んだ財務基盤を修復するほか、航空機更新などの投資をおこないます。
ANAとの関係はどう変わるか
ここで気になるのは、ANAとの関係です。スカイマークは経営再建に際し、ANAの出資を受け入れています。そのため、現在もANAホールディングスは議決権の16.5%を保有する第3位の株主となっています。
スカイマークの筆頭株主は、議決権の50.1%を保有するインテグラルで、経営再建を主導しました。第2位株主は日本政策投資銀行と三井住友銀行が設立した投資ファンドUDSエアライン投資事業有限責任組合で、33.4%を保有します。
再上場に際し、これらの既存株主がどれだけスカイマーク株を手放すのか、明らかではありません。
共同運航をしてこなかったが
ANAは、これまで中堅航空会社に出資し、予約システムを共有し、共同運航をすることでネットワークを拡大し、羽田空港の発着枠を自社配分より多く活用してきました。
具体的には、スターフライヤーに17.125%、ソラシドエアに対し17.01%、エアドゥに13.41%を出資しており、いずれの会社とも共同運航を実施しています。
一方、スカイマークは、これらANAの出資を受け入れている中堅航空会社と異なり、ANAと予約システムの共有をせず、共同運航もしてきませんでした。背景として、株式の過半数を確保しているインテグラルの強い意向があったようです。
株主構成の変化でどう変わるか
とはいえ、インテグラルは投資ファンドですから、いずれ投資を回収しなければならず、再上場となれば一定数の株式を手放すのは間違いありません。一部株の保有は続けるでしょうか、過半数を失うならば、ANAの発言権が増す可能性があります。
一方で、ANAとしても、新型コロナで財務が痛んだ財務を立て直すため、上場に際しスカイマーク株を手放す可能性もあります。そうなると、スカイマークにおいてANAの存在感は小さくなるでしょう。
逆に、ANAが株式を買い増して出資比率を上げることは、現在の同社の経営状況では難しそうですし、買い増す意味も乏しいように感じられます。20%以上を出資すると、羽田発着枠の活用で規制を受けるため、出資を増やしたとしても20%までにとどまるでしょう。
手荷物連帯運送はJALと
スカイマークは2021年にJALグループと手荷物連帯運送を開始しています。JALとの乗り継ぎで、一定の条件を満たす場合に、最終目的地まで手荷物を預かるサービスです。
ANAの出資を受け入れている他の中堅航空会社は、ANAと手荷物連帯運送をしています。スカイマークがJALと手荷物連帯運送を開始したことは、再上場を視野に、同社の独立性を示す動きにも感じられました。
再上場により、株主構成が変わることで、スカイマークの経営方針がどう変わるのか。利用者としても注目せざるを得ません。(鎌倉淳)