「スカイマーク破綻」とはなんだったのか。わずか1年で民事再生手続き終結。国際線参入目指す

スカイマークは2016年3月28日、東京地裁が民事再生手続きを終結したと発表しました。債権者への弁済が計画通りに終わったためで、経営破綻から1年2カ月で法的な処理を終えました。同時に、2018年度までの中期経営計画も発表し、国際線の参入を目指すなど積極策も示しています。

広告

債権者への弁済を終了

スカイマークは中型機A330や大型機A380の導入失敗などで資金繰りが行き詰まり、2015年1月に東京地裁に民事再生法の適用を申請、投資ファンドのインテグラルやANAホールディングスの支援を得て再建に着手していました。

欧州エアバスなど債権者が届け出た再建は3089億円に上りましたが、その後の減額交渉によって1543億円にまで圧縮。インテグラルやANAなどから受けた180億円の出資金のうち161億円などを使い、ほぼすべての債権者への弁済を終えました。1年2ヶ月という短期間での再建手続終了で、順調と言っていいでしょう。

スカイマーク

アジアへの国際チャーター便を運航へ

業績も回復基調です。原油安による燃油費の減少が追い風となり、2016年3月期の営業損益は15億円強の黒字(前年同期は170億円の赤字)となる見込みです。不採算路線からの撤退などで搭乗率は向上し、業績好調だった4年前を上回る水準に回復してきました。

そのため、経営陣も強気。3月28日に国土交通省で記者会見したスカイマークの一江正彦社長は、経営破綻の引き金にもなった国際線への再挑戦する方針も示しました。

まずは、東アジアや東南アジアなどを候補地に当初は国際チャーター便での運航を目指します。国内線でも仙台や石垣など、破綻後に撤退した空港を中心に路線復活を検討し、2019年3月期に売上高800億円超、営業利益70億円超を目指すとのことです。

広告

国際線進出は当然

もともとスカイマークは羽田空港の発着枠を36も擁していて、インターネットを使った販売力もあり、手堅く運航していればそれなりに利益を計上できる経営体質です。したがって、民事再生が順調に終結して、新しい経営計画で国際線に進出しても全く驚きません。

むしろ、インバウンド需要が爆発した現在は、国内線よりも短距離国際線が航空各社の利益の金城湯地となっており、国際線進出は当然の経営判断といえるでしょう。

というよりも、手堅く経営していれば業績好調だったのに、あの破綻はなんだったのだろうか、という思いのほうが先に立ちます。

原油安があと1年早ければ……

スカイマークの経営破綻の背景には、原油高と円安が重なった点があげられます。そのタイミングにグリーンシートを装備したA330型機が導入され、運航経費がかさみ、資金繰りに行き詰まりました。

その後の原油安があと1年早ければ、スカイマークは経営破綻を免れていたかもしれません。A380型機でのニューヨーク就航が実現していたかもしれない、とすら思います。

あるいは、小型機で国際線へ進出し、ニューヨークでなく台北あたりに就航していれば、今ごろは国内線・国際線で大きな利益を挙げていたことでしょう。

ANAとの関係をどうするのか

スカイマークは、現在ANAから16.5%の出資を受け入れています。順調に経営再建に道筋を付けたスカイマークですが、今後はANAからの距離をどう取るのかも気になります。

ANAは自社の旅客管理システム「エイブル」の導入をスカイマークに働きかけています。しかし、スカイマークは好調な経営を背景に、エイブルの導入に消極的です。そのためか、両社のコードシェア便も運航されていません。

3月22日にANAが大規模なシステム障害を起こした際には、同じシステムを利用するエアドゥなども巻き添えを食い、欠航などの被害が広まりました。この事件を受けて、「スカイマークがエイブルを導入する可能性はかなり低くなった」と指摘する関係者もいます。

利用者としては、スカイマークは貴重な第3極の航空会社として、これからも経営独立性をできるだけ維持してほしいですが、ANAとしてはできるだけ自社の影響下におくことを狙うでしょう。

スカイマーク破綻とはなんだったのか。そう振り返ったとき、大手航空会社の子会社が一つ増えただけ、という結論にならないことを祈りたいところです。(鎌倉淳)

広告
前の記事「越後湯沢で最も古いスキーコース」が消える。湯沢高原スキー場の布場ゲレンデが2019年に閉鎖へ
次の記事LCC香港エクスプレス航空が高松、鹿児島、石垣に就航へ。2016年10月には成田線で大増便。時刻表も掲載!