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青春18きっぷ、利用者7~8割減でも悪くない理由。新ルールで「都合のいい存在」に

分割利用ができなくなり

「青春18きっぷ」の2024年度の販売枚数が、約41万枚と明らかにされました。2023年度に比べて3割減ですが、新ルールになってからに限ると、7~8割の減少となったようです。

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62万枚から41万枚に

読売新聞オンラインは、2025年8月9日付で、JRの企画乗車券「青春18きっぷ」の2024年度の販売枚数について、約41万枚だったと報じました。前年度(2023年度)が62万枚であったことも明らかにし、「3割以上減った」としています。

減少の理由は、2024年冬季から、「青春18きっぷ」に新ルールが導入されたためです。それまでの「5日分割利用可」のルールを改め「3日または5日連続使用」を条件としたため、使い勝手が悪化し、利用者離れを招いたといえます。

下灘駅

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2024年夏までは旧ルール

企業で「年度」という場合、4月~3月を指します。そのため、青春18きっぷの「2024年度」の販売枚数とは、2024年4月~2025年3月を指します。

「青春18きっぷ」は、2024年度の夏季まで旧ルールでした。そのため、「3割減」といっても、2024年冬季以降の減少を反映しているだけです。となると、実際は、新ルールになっての減少率は3割では収まらないでしょう。

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新ルールでどれだけ減ったのか

では、新ルールになってから、販売枚数がどのくらい減ったのでしょうか。

青春18きっぷの販売日数は、夏季53日間、冬季32日間、春季41日間の計126日間です。日数で夏季は42%を占めます。旅行者の多い夏季の販売枚数は、日数の割合以上に高いことが予想され、1年間の5割に達するとみられます。

夏季の販売枚数を年間の5割と仮定し、2024年度の青春18きっぷの販売枚数が2023年並みとすれば、夏季だけで30万枚程度の販売数になっていた計算です。2024年度の合計は41万枚ですので、この場合、冬季と春季で10万枚程度しか売れなかったことになります。

2023年度の冬春季の販売枚数は、全体の5割という仮定ですので、約30万枚です。となると、新ルールになって販売枚数は30万枚から10万枚に、7割近くも減少してしまった可能性があります。

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実際には8割以上も減少?

現実には、2024年夏は、コロナ禍の影響も薄れて旅行者が多かったので、販売枚数が2023年度と同水準ということはなさそうです。つまり、2024年夏季の販売枚数はもっと多かったとみられ、35万枚程度を売っていた可能性があります。

その場合、冬春季で、6万枚しか売れなかったことになります。旧ルールのままなら、35万枚が売れていたと想定されますので、新ルールになって8割以上の減少ということになります。

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悪くない数字

まとめると、青春18きっぷは、新ルールになって、7~8割の売上げ減少に見舞われたことが推測されます。

近年の青春18きっぷの販売枚数に、この割合を当てはめると、2025年度の販売枚数は、15万~20万枚程度になるとみられます。単価の安い3日間用(10,000円)が多いでしょうから、平均単価は1.1万円程度で、売上総額は年間20億円前後にとどまるのではないでしょうか。コロナ前までは、平均すれば年間80億円規模の売上げだったので、4分の1になってしまいます。

ただ、20億円というのは、企画きっぷとしてみれば、悪くない売上高です。「ご利用状況」から、にわかに廃止されるような数字ではありません。

一方、自動改札対応になったことで、改札係員の負荷が小さくなりましたし、一部区間の列車の激しい混雑も緩和されたようです。

JRからみると、青春18きっぷの本来の目的である、学休期の普通列車の空席利用としては、適度な利用状況になったともいえます。これにより、青春18きっぷは「刷るだけでお金になるきっぷ」という、JRにとって都合のいい存在に収まったようにも見受けられます。

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「移動需要」は喪失したが

一方で、利用者としては、分割利用ができなくなったことで、使い勝手は大幅に悪化しました。とくに、1日ずつの「移動」利用ができなくなり、数日まとめての「旅行」利用のみに、使い道が限られるようになりました。

結果として、東海道線のような「移動需要」の強い路線の混雑が、とくに目立って緩和したように感じられます。いっぽう、地方ローカル線など、鉄道ファンの旅行先として選ばれるような路線は、青春18きっぷ客が、大きく減少したとまでは感じられません。

これは筆者の印象なので、どこまで当たっているかは定かではありませんが、新ルールになっても、鉄道旅行のきっぷとしての存在価値は、ある程度維持されているように感じられます。

とはいえ、実質的な値上げになってしまったことにより、「旅をしたいけれどできない」層が増えてしまっているのではないか、という点は気がかりです。(鎌倉淳)

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