JR東日本とJR西日本は、北陸新幹線用の車両E7/W7系の座席の一部を改造して、荷物置場を作ると発表しました。外国人客やスキー、スノボなど大きな荷物を持つ旅客の増加に対応するためとのこと。座席数を減らしてまで荷物を置けるようにするのは、画期的といえば画期的です。
E2系などには荷物置場あり
新幹線では、これまでも一部の車両でデッキに荷物置場が設置されてきました。JR東日本のE1系、E2系、E3系、JR西日本の700系レールスターなどです。E1系、E2系は東北・上越エリア向けの新幹線車両で、やはりスキー・スノボ客への対応だったようです。
スキー・スノボ客の多い新幹線列車に乗ると、座席で板を抱えて固まっている旅客をみかけます。200系(2013年引退)やE4系にあたると荷物置場がないので、抱えるほかないのです。
座席上の荷物棚に乗せている人もいますが、かなりスペースを取るので周囲の迷惑になります。車両最後部座席の後ろならスペースがありますが、最後部座席を確保するのは簡単ではありません。
画像:JR西日本プレスリリース
「板持ち込み客」を切り捨てたと思ったら
という状況下で、E7/W7系の車内公開で荷物置場がないとわかったとき、JRはスキー・スノボ客を相手にするつもりがないのだな、と筆者は思いました。新幹線のE2系の荷物置場を見ても、たしかにそれほど利用されてはいませんし、スキー・スノボ客の多くは宅配を使っています。あまり多くない「板持ち込み客」を切り捨てて、座席数を多くするという決断を下したのだと解釈しました。
ところが開業1年も経たずに方針転換をしたわけです。できたばかりの車両を1年ほどで改造するというのは、あまり褒められたことではないでしょう。
背景として、JRの想定を超えるスキー・スノボ人気の復活と、外国人旅行者の急増が挙げられます。とくに白馬エリアは外国人スキー・スノボ客に人気ですので、JRとしては成田エクスプレス、北陸新幹線と乗り継いで来て欲しいところ。しかし、外国人のスキー・スノボ客の荷物量はハンパないので、荷物置場のない車両ではとても対応できません。
タテ・ヨコ・高さの合計が250cmまで持ち込み可
そもそも、JRの規則では、「3辺の最大の和が、250センチメートル以内のもので、その重量が30キログラム以内のものを無料で車内に2個まで持ち込むことができる。ただし、長さ2メートルを超える物品は車内に持ち込むことができない。」と定められています。かなりの大きさまで車内に持ち込んでいい、とルールで規定しているわけです。
しかし、実際にそんな荷物を荷物置場のない車両に持ち込んだら、置き場所に困ります。たとえば、80cm四方の立方体の荷物を2つ持ち込んだとして、どこに置いたらいいのでしょうか? つまり、JR自らが定めたルールに車両が対応していないわけです。
新幹線車内に持ち込むのに苦労するのはスキー・スノボだけではありません。大型のスーツケースやベビーカーを持ち込んでも、現在の新幹線車両の多くでは、置くところがありません。スーツケースを転がしてきた人が、荷物棚に上げることができず、足元に抱え込んでいるする姿は、日常茶飯事で見かけます。
ちなみに、TGVなどヨーロッパの長距離列車では、車両出入り口付近に荷物置場があります。それと比較しても、新幹線は荷物の持ち込みがしにくいです。
規則で認めているものを持ち込める車両を
E7/W7系の荷物置場で評価できるのは、デッキでなく客室内に設置されたという点です。これまで、新幹線の荷物置場があまり利用されてこなかったのは、デッキという人目の届きにくい場所だったから、という事情があるように思います。
客室内に荷物置場があれば、これまでよりも気軽に利用する人が増えるのではないでしょうか。普通車は偶数号車のみの設置ということですが、利用者が多ければ全車両に設置されるようになるでしょう。
いまの新幹線は、スキー、スノボだけでなく、大型スーツケース、ベビーカー、折りたたみ自転車、サーフボード、大型楽器などを持った人には使いにくい乗り物です。そして、これらの車内持ち込みはJRの規則で認められています。
規則で認めている大きさの荷物を、普通に持ち込める新幹線に。そのためには、E7/W7系だけでなく、全ての新幹線に荷物置場を作ってほしいものです。