岩手県宮古市と北海道室蘭市の間に、フェリーが就航することになりました。開設するのは川崎近海汽船で、時期は2018年春を予定しています。青春18きっぷなどを使った「本州~北海道」の新たなルートになるかもしれません。
でも、本州側の発着地が宮古というのは中途半端な気がします。なぜこの区間に航路ができるのでしょうか。
八戸~苫小牧に次ぐ新航路
川崎近海汽船は、八戸~苫小牧のフェリー航路「シルバーフェリー」を運航している会社です。現在、八戸~苫小牧は1日4往復運航していますが、これとは別に、2018年春に宮古~室蘭間325kmを1日1往復運航する予定とのことです。航海時間は10時間を計画しています。
写真:シルバーフェリーウェブサイトより
トラック運転手の労働条件が産んだ航路
なぜ、こんな中途半端な区間にフェリーができるのか、と思い調べてみると、開設される背景として、トラック運転手の労働条件があるようです。
労働大臣告示「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」によりますと、トラック運転手の1日(24時間)の拘束時間は16時間が最大で、休息期間は継続8時間以上必要とされています。拘束時間と休息期間は表裏一体で、1日(24時間)=拘束時間(16時間以内)+休息期間(8時間以上)いう組み合わせでしか運転を継続させることができません。
フェリーに10時間連続して乗らなければならない
ただし、フェリーによる特例があり、運転手が勤務の途中でフェリーに乗船する場合には、フェリー乗船時間のうち2時間については拘束時間として取り扱い、その他の時間については休息期間として取り扱うことができます。すなわち、フェリーにトラックが連続10時間以上乗れば、休息時間の1日8時間をクリアできるのです。
そのため、トラック業界は、この条件を満たせる本州・北海道航路を求めていました。シルバーフェリーの八戸~苫小牧は航海時間が8時間で条件を満たせません。10時間連続して乗らなければならないからです。
そのための適当な区間を探すと、宮古~室蘭間が速力20ノットで10時間の所要時間になり、ちょうどいい、ということで、この区間の航路開設が決まったようです。船会社としても、10時間の所要時間なら各2時間の停泊で1つの船体を回すことができ、効率的です。
宮古市は現時点では東北自動車道と高速道路ではつながっていません。しかし、三陸沿岸道路や東北横断自動車道、宮古盛岡横断道路などの整備が異例の速さで進んでおり、2020年代前半には整備が完了しそうです。それも考慮されたとみられます。
東京~宮古は青春18きっぷで同日着できる
ということで、トラック向け100%の航路のようですが、鉄道旅行者にもメリットがありそうです。というのも、東京~宮古は青春18きっぷで同日着が可能なため、接続がよければ青春18きっぷを使った北海道へのワープルートになりうるからです。
フェリーのスケジュールは、まだ発表されていません。とはいえ、10時間就航、2時間停泊を予定しており、一つの船体が単純往復するとなると、ある程度は想定できます。すなわち、北行きか南行きのどちらかが夜行、どちらかが昼行、ということになるでしょう。
宮古発着は夜か
トラックの役割として重要なのは、首都圏の市場に北海道の農産品を運ぶということでしょう。となると、トラックが東京に早朝に到着する必要があり、逆算すればフェリーの宮古発着は夜でなければなりません。したがって、まったくの妄想ですが、以下のようなダイヤになるのではないかと考えます。
宮古21:00→07:00室蘭
室蘭09:00→19:00宮古
仮に宮古が上記のように21時発だとすると、19時頃までに宮古駅に到着すれば、宮古港からのフェリーに余裕で乗ることができそうです。2015年3月ダイヤでは、上野5時46分発の東北本線に乗ると、普通列車だけを乗り継いで18時55分に宮古駅に到着することができます。すなわち、フェリーが21時以降出発なら、東京からの旅で青春18きっぷと組み合わせることができます。
音威子府まで同日着
そして朝7時に室蘭に着けば、室蘭駅7時59分の普通列車に乗り、10時40分に札幌に着くことができます。さらに乗り継げば音威子府まで同日着可能です。おお、夢が広がりますね。
といっても、ダイヤが決まっていない以上、現時点ではやっぱり妄想以外の何ものでもありません。でも、旅の選択肢が増えることは楽しみです。いまは「北海道&東日本パス」がありますが、急行「はまなす」の存続が不透明ななか、本州と北海道の間に新たなルートができるのは大歓迎です。