幕張新都心に開業するJR京葉線の新駅の名称が「幕張豊砂」と決まりました。オーソドックスな命名で、わかりやすさと安定感があります。
2023年開業目指す
JR京葉線の新駅は、新習志野~海浜幕張間に設置されます。JR東日本と、イオンモール千葉県、千葉市による新駅設置協議会が2023年開業を目指して準備中。2021年6月には駅の正式名称を公募していました。
その結果が公表され、正式名称が「幕張豊砂(まくはりとよすな)」に決定しました。
駅名公募への応募総数は1万4715件。応募数上位の駅名は下記の通りです。
1位 幕張新都心 1887件
2位 新幕張 482件
3位 幕張ゲートウェイ 303件
4位 美浜 289件
5位 まくはり新都心 203件
「幕張豊砂」は13番目で得票数104件だったそうですが、「幕張」という地域名に、駅の南側に位置する地区の「豊砂」を加えることで、利用客へのわかりやすさと地域住民の愛着を得られるとして採用となりました。
応募数上位が採用されない理由
今回に限った話ではありませんが、駅名公募といっても、得票数上位から選ばれるとは限りません。得票上位の名称が駅名として適しているかは別問題だからです。
象徴的なのは、今回3位の「幕張ゲートウェイ」です。「高輪ゲートウェイ」の二番煎じですし、あれだけ物議をかもした「ゲートウェイ」を採用するわけにはいきません。
1位の「幕張新都心」という名称にしても、新都心の中核駅である「海浜幕張」を差し置いて名付ければ、利用者に混乱をもたらします。
2位の「新幕張」も「新都心」に通じるところがあり、利用者にはわかりにくいでしょう。また、京葉線には「新」の名が付く駅が多いこともあり、その点からも避けたいところです。
4位の「美浜」は区名ですので、新駅の名称としては広域すぎます。5位「まくはり新都心」は、ひらがなを交えただけで、1位「幕張新都心」の抱える問題点を解決していません。
幕張新都心豊砂地区
採用された「幕張豊砂」は、駅南側の「豊砂」という地区名をベースにしています。しかし、「豊砂」は東京メトロ有楽町線の「豊洲」と紛らわしいという問題点があります。そのため「幕張」という広域名を冠したのでしょう。
また、駅周辺の再開発エリアは、「幕張新都心豊砂地区」とも呼ばれていますので、「幕張豊砂」は、それを略したともいえます。要するに、住所や地名をベースに選ぶなら、「幕張豊砂」は平凡ながらわかりやすい命名といえます。
難をいえば、駅の住所は「美浜区浜田」であって、「美浜区豊砂」ではないことでしょうか。ただ、改札口が浜田地区側にないため「幕張浜田」とは名付けづらいところです。
何のために公募したのか
総合的に判断すると、新地名を考えずに既存の地名をベースに決めるなら、「幕張豊砂」が適切な駅名であることに異論は少なそうです。
ただ、そうした判断で駅名を決めるのならば、「何のために公募したのか」という疑問は浮かびます。
さまざまな名称候補を得るための手段なのかも知れませんが、公募した以上、採用された13位より得票数が上位の名称は明らかにして、「幕張豊砂」が優れていることを説明した方がよいように思えます。
駅名として安定感
ところで、当サイトでは、『「幕張新駅」の駅名を予想する。これはちょっと難しい!』という記事を5月29日に掲載しました。今回公表された応募上位5名称のうち「美浜」を除く4名称と、当選した「幕張豊砂」については筆者も思いつき、記事に載せました。
そのうえで、本命を「西幕張」、対抗を「新幕張」「幕張モール」と予想。結果として、見事に外してしまいました。
いま予想記事を改めて読み直してみると、数ある候補のなかで「幕張豊砂」は駅名として安定感があり、駅のエリアも的確に示していて、命名として優れています。なぜこれを本命に挙げなかったのか、と己の不明を恥じるばかりです。(鎌倉淳)