テレビ東京系列の「ローカル路線バス乗り継ぎの旅Z」第12回が放送されました。田中要次と羽田圭介のコンビが、路線バスだけを乗り継いで旅をする番組です。今回のマドンナは井上和香です。
お題は、石川県の加賀温泉郷をスタートし、3泊4日で三重県の伊勢神宮に到達するというものです。例によって正解ルートを検証してみます。なお、以下はネタバレ100パーセントです。また、結果論100パーセントです。行ってない筆者が机上で語っているだけです。ご理解ください。
※以下、掲載時刻は確認しましたが、間違いや勘違いがあると思います。ご容赦ください。また、間違いを見つけましたらご指摘ください。文中は敬称略です。
実際ルート
最初に、番組で3人が実際に旅したルート(実際ルート)をたどってみましょう。時刻表上の定刻を確認してみました。
▽1日目
片山津温泉湯の元公園10:18→10:30 JR加賀温泉駅・アビオシティ加賀10:50→吉崎御坊*/吉崎別院前駐車場13:00→13:28あわら湯のまち14:50→15:25丸岡城15:15(遅延15:28)→16:15(遅延16:48)福井駅18:02→19:46かれい崎→徒歩4.6km→糠長島
*吉崎御坊=吉崎御坊蓮如上人記念館・越前加賀県境の館(以下同)
▽2日目
糠長島06:40→06:49河野→徒歩9.4km→大比田10:37→11:00敦賀駅12:00→12:28曽々木→徒歩3.4km→新道野15:10→15:33木之本バスターミナル16:04→16:37長浜駅
▽3日目
長浜駅10:10→10:55近江長岡駅→徒歩7.7km→12:53真宗寺(消防団車庫)前12:58→13:20 JR関ヶ原駅13:35→13:45牧田上野15:03→15:45大垣駅前16:40→17:31海津市役所18:49→19:20松山グリーンハイツ→徒歩3.2km→多度駅→徒歩6km→陽だまりの丘(郵政研究所前)→徒歩0.5km→陽だまりの丘北21:41→21:42陽だまりの丘→徒歩1km→センター前22:17→22:35桑名駅前
▽4日目
桑名駅前09:05→09:39鳥取→徒歩1km→東員駅10:35→10:55山城駅前11:45→12:25近鉄四日市13:35→14:09イオンモール鈴鹿けやき通り14:34→15:12亀山駅前15:46→16:07椋本16:10→16:44津駅前17:40→18:21天白
天白から松阪駅へ向けて松阪市のコミュニティバスが走っていますが、17時30分発の最終便が出た後で、一行は行き詰まりました。松阪駅までは6.5kmで、健脚の田中・羽田一行なら歩けなくはないでしょうが、その先もつながる見通しは立たず、ここで敗退となっています。正解ルートを検討してみましょう。
※グーグルマップは概略です。実際のルートを正確に表記しているわけではありません。(以下全て)
「ローカル路線バス乗り継ぎの旅Z」第12弾 石川県・加賀温泉~三重県・伊勢神宮
【出演】田中要次、羽田圭介
【マドンナ】井上和香
【放送日】2020年1月4日(テレビ東京系列)
吉崎で乗り逃さなかったら
最初に気になったのは、吉崎別院前駐車場での乗り逃しです。一行はJR芦原温泉方面へ向かう11時28分発の「あわらぐるっとバス」の運転手と話す機会がありながら、乗りませんでした。どうも、逆方向のバスと勘違いしたようです。
しかし、JR芦原温泉駅は、一行にとってまさしく順方向です。みすみす一本バスを見送ったことになり、惜しまれる失敗に感じられました。
仮に、吉崎別院前駐車場を11時28分に出るバスに乗れていたら、どうなっていたでしょうか。
▽1日目
吉崎別院前駐車場11:28→11:58 JR芦原温泉駅13:05→13:25丸岡バスターミナル13:55→14:45福井駅17:02→18:46かれい崎
このように、実際ルートに比べ、福井駅に1時間半ほど、かれい崎には1時間早く着けます。ただ、宿の到着時刻が早まるだけで、その後は実際ルートに収斂しますので、大勢に影響はありませんでした。
織田に向かっていたら
福井駅に到着した一行は、案内所で情報収集します。この案内所の係員は親切で、きめ細やかな情報を提供してくれました。当初、提案されたのは織田(越前町)から武生方面へ乗り継いで、桜橋から元比田に抜けるルートです。それに従っていたらどうなっていたでしょうか。
▽1日目
福井駅18:02→19:04織田
▽2日目
織田06:55→07:31 JR武生駅前07:57→08:29桜橋→徒歩8.4km→元比田10:35→11:00敦賀駅
敦賀に着く時刻は実際ルートと同じですが、福井・敦賀間の徒歩は8.4kmですみます。実際ルートの14kmに比べて5km以上短いです。
ただ、上記地図で示した桜橋~元比田の徒歩区間は、歩道が狭く長いトンネルのある国道8号線です。ご記憶の方もいると思いますが、クラシックシリーズ第19弾で、ルイルイ一行が「危険」と判断して、ロケ車でワープした区間です。
それを避ける方法としては、以下のルートもあります。
▽2日目
織田06:55→07:31JR武生駅前07:57→08:35河野→徒歩9.4km→大比田10:37→11:00敦賀駅
こうすれば、実際ルートのかれい崎から糠長島の徒歩4.6kmだけを省略し、実際ルートに収斂します。
今回の一行は、とくに意識したわけではないようですが、歩きにくい国道8号を避けて、若干徒歩距離は長いものの、平坦でトンネルもほとんどない海沿いの国道305号線を歩きました。この点は、見えないファインプレーといえるかもしれません。
南越前町バス
実際ルートに戻ります。2日目、一行は糠長島からバスで河野に至り、大比田まで9.4kmを歩きます。
一行は気づきませんでしたが、糠長島から敦賀方面へは、南越前町住民利用バスが運行していて、一行が歩いた区間の大部分をバスで移動できます。月曜日は運行日で、デマンドバスでもないようなので、ルール上、利用できそうです。以下のような乗り継ぎになります。
▽2日目
糠長島10:00→11:20大谷→徒歩3.9km→大比田12:57→13:20敦賀駅15:00→15:28曽々木→徒歩3.4km→新道野18:11→18:34木之本バスターミナル18:50→19:24長浜駅
実際ルートより5kmほど徒歩距離を短くしたうえで、2日目に長浜に到着できます。
ちなみに、上記乗り継ぎでは南越前町住民利用バスを大谷バス停で降りていますが、フリー降車を利用してギリギリまで南下すれば、もう少し徒歩を短縮することも可能です。
近江長岡駅行きに乗っていたら
その後、一行は敦賀の案内所で滋賀への県境越えの情報を聞き出し、3km程度の歩きで木之本に達します。
木之本で一行は、琵琶湖西岸ルートも検討しますが、良い情報は得られませんでした。実は、敦賀で判断できれば湖西経由でもゴールできますが、長くなるので後述します。
木之本からバスに乗り、長浜駅に16時37分に到着。5分後に発車する近江長岡行きのバスを見つけますが、情報収集を優先して見送りました。これに乗っていたらどうなっていたでしょうか。
▽2日目
長浜駅16:42→17:27近江長岡駅
近江長岡までは行けますが、先のバスにはつながりません。仮に近江長岡から関ヶ原まで約12kmを歩いても、関ヶ原19時20分発のバスで牧田上野まで行くのが精一杯です。近江長岡~関ヶ原近辺に宿はほとんどありませんし、一行が無理して近江長岡へ進まずに、長浜に宿泊したことは間違っていなかったといえます。
ただ、この「近江長岡線」の最終バスは遅く、近江長岡発長浜行きが20時08分まで走っています。ですから、終バス時刻を確認したうえで、いったん近江長岡まで行って情報収集してもよかったかもしれません。
いずれにせよ、片山津温泉から路線バスをたどった場合、現実的な乗り継ぎで2日目にたどり着けて、宿泊できる場所は、長浜が限界です。その点で、一行の2日目までの乗り継ぎルートは、吉崎の乗り逃しはあったにせよ、正解をたどっていたと表現できます。
長浜を早発していたら
多くの方が気になったのは、長浜での出発時刻でしょう。3日目、一行は案内所のオープンを待った結果、10時過ぎのバスに乗車しました。
言うまでもありませんが、バスの運行本数が多いのは朝9時頃までです。朝ラッシュが終わった10時過ぎに出発というのは、バス移動のゴールデンタイムを逃したことを意味します。
案内所のオープンを待たずに、朝一番で近江長岡行きにとりあえず乗ってしまう、という判断もあったでしょう。長浜を始発便で出発した場合、実際ルートをたどったとして、以下のように乗り継げます。大垣駅では情報収集の時間を設けています。
▽3日目
長浜駅07:00→07:31近江長岡駅07:42→07:53柏原→徒歩2.9km→真宗寺08:53→09:10 JR関ヶ原駅09:35→09:45牧田上野10:58→11:44大垣駅12:50→13:41海津市役所13:45→14:26松山グリーンハイツ→徒歩3.2km→多度駅15:40→16:04御衣野集会所前→徒歩4km→陽だまりの丘(郵政研究所前)17:22→17:46桑名駅前18:10→18:44鳥取→徒歩1km→東員19:05→19:25山城駅前20:00→20:47近鉄四日市駅前
▽4日目
近鉄四日市09:35→10:09イオンモール鈴鹿けやき通り11:27→12:03亀山駅前13:38→13:59椋本14:10→14:46津駅前15:27→15:38空港アクセス港(津なぎさまち)16:55→18:25内宮前
このように、3日目に桑名駅に寄った上で四日市まで到達できます。4日目は余裕を持ちながらゴール可能です。長浜を3時間早く出発すると、これだけ違う結果になったわけです。
ただし、上記乗り継ぎ例では津の空港アクセス港から内宮前への直行バスを利用していますが、実際ルートのように津駅前から天白に向かってしまうとゴールできません。津から伊勢神宮へのアクセスが、今回のお題の大きなポイントになっていたからですが、それについては後述します。
時ルート
実際ルートに戻ります。
番組を見ていて、次にキーポイントとして感じられたのが、牧田上野での、時方面のバスの乗り逃しでしょう。
一行は13時48分頃に牧田上野に到着し、時方面のバスの存在を知り、時刻表を眺めたにもかかわらず、13時57分に出発するバスに気づきませんでした。そして大垣駅の案内所で、時から古田方面に歩けば、いなべ市のコミュニティバスに乗り継げることを知りました。これを「時ルート」と呼びましょう。
牧田上野に到着した段階では、時から古田へ乗り継げることはわかりませんでしたので、一行が大垣方面を選択したのは、やむを得ない側面はあります。ただ、13時57分のバスに気づいていれば、とりあえず乗ってみて考える、という方法もあったので惜しまれます。
仮に、13時57分のバスに飛び乗り、車内でいなべ市コミュニティバスの情報を得られた場合、どのような展開になっていたでしょうか。
▽3日目
牧田上野13:57→14:23時→徒歩3km→15:00頃古田→徒歩12km→阿下喜18:25→(18:48鳥取)→19:22桑名駅前
古田には15時ごろに到達できます。しかし、古田発のいなべ市コミュニティバスは、14時15分が最終です。つまり乗り継げません。したがって、時からいなべ市の阿下喜まで合計15kmを歩くハメになります。
合計15kmを約4時間というペースで歩ければ、阿下喜からバスに乗り、なんとか桑名に当日着できます。
あるいは、時までのバスで、いなべ市コミュニティバスの情報をしっかり得られていれば、こういうルートもあります。
▽3日目
牧田上野13:57→14:23時→徒歩5.3km→翠明院16:00→16:31阿下喜駅/阿下喜17:25→(17:48鳥取)→18:22桑名駅前
古田ではなく翠明院に向かい、16時発のバスを掴まえて阿下喜に進むことが可能でした。
「時ルート」を検討してみましたが、牧田上野で、時行きに飛び乗ったとしても、その後、情報をうまく得られなければ厳しい展開が待っていました。したがって、一行が時行きに乗らなかったことは、正解とはいえないまでも、ミスともいえなさそうです。
陽だまりの丘
実際ルートに戻ります。一行は松山グリーンハイツに到着後、多度駅まで3kmあまり歩いた後、さらに陽だまりの丘まで6kmほど歩き、高速バスの下道区間と路線バスを乗り継いで、夜の22時半すぎに、なんとか桑名駅まで達しました。
夜22時を過ぎての移動は、ローカル路線バスの旅シリーズでは珍しく、何としてもゴールするという、一行の執念を感じさせる「行軍」でした。
この場面をラクに切り抜ける方法はなかったようですが、一行が多度駅で検討していた、西桑名ネオポリスへ抜けるルートは選択肢となり得たでしょう。以下のような経路になります。
▽3日目
大垣駅前16:40→17:31海津市役所18:49→19:20松山グリーンハイツ→徒歩3.2km→多度駅→徒歩6.6km→笹尾西三丁目(ネオポリス内)21:37→22:15桑名駅前
ネオポリスから桑名に向かうバス路線は、一行がセンター前で拾ったバスと同じ路線です。多度駅からネオポリスに向かったほうが、結果的に短い時間で済んだとみられます。
多度駅からネオポリスまでの高低差は100m程度ありますのでラクではありませんが、複雑な乗り継ぎは避けられたでしょう。
桑名を早発していたら
一行はやっとの思いで3日目夜に桑名にたどり着きました。翌朝はまたしても案内所のオープンを待って、9時過ぎの出発でした。
ここも、遅い出発が気になったところです。仮に、始発で出発していたらどうなっていたでしょうか。
▽4日目
桑名駅前07:05→07:39鳥取→徒歩1km→東員駅09:30→09:50山城駅前10:25→11:12近鉄四日市駅前11:35→12:09イオンモール鈴鹿けやき通り12:20→12:56亀山駅前13:38→13:59椋本14:10→14:46津駅前15:27→15:38空港アクセス港(津なぎさまち)16:55→18:25内宮前
このように桑名を始発で出発すればゴール可能でした。ただ、鳥取から東員、山城へ抜けるルートは、案内所での聞き込みがなければ難しそうです。したがって、早朝発の場合、桑名からとにかく四日市方面へ向かう、というルートを選択したかもしれません。
▽4日目
桑名駅前06:40→07:09桑名西高校→徒歩3.0km→あかつき台一丁目08:09→08:42近鉄四日市駅前
このように、9時前に四日市に着けます。「朝は高校へのバスがあるはず」「新興住宅地には通勤・通学のバスがあるはず」といった発想で地図とバス停の時刻表をにらめっこすれば、見つけられないルートではないでしょう。
四日市に9時に着ければ、以下のようにつながり、ゴール可能です。
▽4日目
桑名駅前06:40→07:09桑名西高校→徒歩3.0km→あかつき台一丁目08:09→08:42近鉄四日市駅前09:35→10:09イオンモール鈴鹿けやき通り11:27→12:03亀山駅前13:38→13:59椋本14:10→14:46津駅前15:27→15:38空港アクセス港(津なぎさまち)16:55→18:25内宮前
机上論ではありますが、桑名駅で案内所のオープンを待たなくとも、とりあえず四日市を目指して進んでおけばゴールできた可能性があったわけです。
桑名からの逆転方法
そして、この「桑名西高校ルート」を使えば、桑名駅案内所のオープン後の出発でもゴール可能です。
▽4日目
桑名駅09:25→10:01桑名西高校→徒歩3.0km→あかつき台一丁目10:38→11:12近鉄四日市駅前11:35→12:09イオンモール鈴鹿けやき通り12:20→12:56亀山駅前13:38→13:59椋本14:10→14:46津駅前15:27→15:38空港アクセス港(津なぎさまち)16:55→18:25内宮前
桑名駅の案内所でこのルートを聞き出せていれば、違った結果になっていたかもしれません。
桑名~四日市を歩かずに
もう一つ別ルートとして、桑名からほとんど歩かずに四日市に至る乗り継ぎも紹介しておきます。
▽4日目
桑名駅08:25→08:50伊坂台/伊坂台アクセス前09:23→09:37山城駅前10:25→11:12近鉄四日市駅前
四日市以降は桑名西高校ルートでゴール可能です。
机上論と現場は違うので、実際にどこまで見つけられるかはわかりませんが、桑名から四日市へはいくつかルートバリエーションがあり、案内所を頼らなくても早起きすれば何とかなった印象です。
長浜と違い桑名は分岐点ではなく、次の目的地が四日市であることに疑いはありませんので、案内所で得られる情報に決定的な重要性はなさそうです。ならば、朝できるだけ早く順方向に進んでいればと惜しまれます。前夜の行軍の疲れがあったのかもしれませんが。
伊勢へのアプローチ
先に少し触れましたが、今回のお題の最後の難関は、伊勢へのアプローチでした。
ここまでのゴール可能な乗り継ぎは、津の空港アクセス港から伊勢神宮へ直行するバスによる「アクセス港ルート」を使っています。
「アクセス港ルート」の最終乗り継ぎは以下の通りです。
津駅前16:27→16:38空港アクセス港(津なぎさまち)16:55→18:25内宮前
津から伊勢神宮まで40km以上ありますが、それを約2時間で一気につなぎます。中部空港と津港を結ぶ高速船に接続する特急バスです。
制作側の狙いとしては、最後にこの隠し球のような「飛び道具」を配置することで、逆転劇を演出できる設定にしていたわけです。津駅16時27分発の市内バスに乗れば、「飛び道具」の最終に間に合います。
ただし、このルートを見つける難易度は高そうです。
というのも、この路線が開設されたのは2016年と比較的新しいうえに、1日2便しかないからです。地元での認知度は高くないでしょうし、そもそも、津から港に市内バスで行き、そこで中部空港と伊勢神宮を連絡する特急バスを掴まえるというルートを思いつくのは、バス事情をよく知る人でなければ難しそうです。
実際のところ、一行は津駅に着く前のバス車内で「松阪方面」と尋ねて天白乗り継ぎの情報を得て、津駅で聞き込みの場面はありませんでした。
伊勢神宮という最終目的地を伝えて津駅で聞き込めば、「アクセス港ルート」の情報を得られたかもしれませんが、想像の域を出ません。仮に情報を得られたとしても、実際ルートの津駅到着時刻は16時44分ですので、17分差で間に合いませんでしたが。
明和ルートと栃原ルート
では、特急バスを使わないで、順方向に路線バスを乗り継ぐルートはあるのでしょうか。探してみると、以下のようなルートが見つかりました。
▽4日目
近鉄松阪駅前13:50→14:26出間→徒歩1.2km→イオンモール明和15:05→15:18山大淀(東)15:24→16:19伊勢赤十字病院16:46→16:56伊勢市駅前17:06→17:26内宮前
これを「明和ルート」としましょう。明和ルートでは、近鉄松阪駅を13時50分に出ればゴール可能です。コミュニティバスを乗り継いでゴールへ順方向なので、見つけやすそうなルートです。
ただし、逆算してみると、明和ルートでゴールするには3日目に平田町まで達している必要があります。3日目の宿泊が四日市では間に合わないので、そこに至るまでの難易度はかなり高そうです。
もう一つ、伊勢へのアプローチとしては、西へ迂回するルートもあります。
▽4日目
松阪駅前16:20→16:58栃原→徒歩2.2km→注連指口17:50→18:34伊勢市駅前18:44→18:56内宮前
これを「注連指口ルート」としましょう。注連指口ルートでは、松阪駅に16時すぎに着けばゴール可能です。逆算すると、津駅前14時40分発のバスに乗れば間に合います。
松阪から伊勢神宮とは違う方向へ大回りした上に、2kmの徒歩を挟むので、案内所などで聞き込んでも、見つけやすいルートとはいえなさそうです。その意味で、これも発見難易度が高く、「アクセス港ルート」と大差ないかもしれません。
このように、今回のお題では伊勢神宮へのアプローチを探し出すのが、最後の大きなハードルとして立ちはだかっていました。
郡上経由は?
では、出発にさかのぼって、もっと大きなルート選択について検討してみます。まず、福井駅で検討した、郡上経由は可能だったのでしょうか。
福井から越前大野を経て九頭竜湖までは、時刻はともかくバス路線はあります。しかし九頭竜湖から美濃白鳥へ抜ける路線がありません。徒歩で乗り切ることも不可能な距離ですし、冬季でもあり、「郡上ルート」は存在しないと言ってよさそうです。
湖西ルート
次に「湖西ルート」を検討してみます。
敦賀で一行は案内所に確認のうえ、コミュニティバスで曽々木に向かい、新道野へ抜けるルートを選択します。そのまま木之本にいたり、琵琶湖東岸を進むわけですが、琵琶湖西岸経由も候補として考えていたようです。実際に進んでいたらどのようになっていたでしょうか。以下に一例を示します。
▽2日目
糠長島06:40→06:49河野→徒歩9.4km→大比田10:37→11:00敦賀駅12:00→12:25疋田→徒歩8.7km→国境15:20→16:17近江中庄駅→徒歩1.4km→北深清水17:20→17:38近江今津駅→徒歩1.5km→木津浜18:02→18:16新旭駅→徒歩4.0km→安曇川駅
▽3日目
安曇川駅07:39→08:12朽木支所前08:25→08:45細川10:10→11:03堅田駅11:45→12:27守山駅→徒歩3.5km→野洲駅14:05→14:15道の駅竜王かがみの里14:28→14:46近江八幡/近江八幡駅南口15:20→15:48竜王ダイハツ前15:51→16:09三雲駅16:45→16:59新町(水口)17:06→17:53大河原(宿泊のため)
▽4日目
大河原07:15→07:23黒滝口07:27→07:36熊野神社→徒歩4.0km→伊勢坂下09:20→10:04医療センター前10:34→10:49亀山駅前11:36→11:57椋本12:10→12:46津駅前14:27→14:38空港アクセス港(津なぎさまち)16:55→18:25内宮前
このように、敦賀で疋田方面のバスに乗る決断をしていれば、ゴール可能です。2日目夜、新旭から安曇川まで歩いて宿泊し、翌日早朝のバスに乗るあたりは乗り継ぎ的に苦しく、できなくはない程度のこととお考えください。
安曇川からいったん湖岸を離れ朽木を経由しないと堅田までうまく抜けられないのが難しいところですが、一行はZシリーズ第4弾で朽木を経由して京都に抜けていますので、経験を活かせば探し出せなくはないでしょう。実際、田中は今回の番組中で「鯖街道」に言及しています。
意外ですが、湖西ルートは、琵琶湖大橋を使えば、それほど大回りにはならない印象です。ただ、ゴールへの方向感がつかみにくそうで、机上論としてはともかく、実現性を考えると難しそうです。
湖南ルート
次に、一行が悩んだ長浜駅の決断についても検証してみましょう。米原から彦根方面へ向かう「湖南ルート」を選択していたらどうなっていたか、ということです。
実際の一行は、案内所で情報を集めた結果、大垣ルートを選択したので、ここでは、長浜を早朝に見切り発車して、米原方面へ進んだと仮定します。
▽3日目
長浜駅07:35→08:08米原駅西口→徒歩6.3km→彦根駅09:40→10:02南彦根駅東口→徒歩9.1km→愛知川駅13:17→13:36能登川駅13:40→14:07八日市駅14:42→14:58ハートピア→徒歩4.6km→川合16:17→16:38日野駅17:01→17:10曙団地南口→徒歩3.5km→新町(水口)18:26→19:13大河原
彦根エリアでは、路線バスから予約制の乗合タクシーへの転換が進んでおり、予約不要の路線バスだけで乗り継ぐのは困難です。そのため、一行がこの地域に進んでいたら、脚力にものを言わせて愛知川または能登川まで突き進むほかなさそうです。
長距離徒歩を耐え抜いて愛知川駅まで到達できれば、時刻表上は3日目に水口に到達でき、4日目は湖西ルートと同様の道筋でゴール可能です。
ただ、3日目の徒歩距離は概算で23kmにも及びます。ルート取りによっては多少短くすることができるかもしれませんが、それでも、20km程度の徒歩は生じそうで、いかに健脚の田中・羽田コンビといえど厳しいでしょう。
結局のところ、湖南ルートも不可能ではなさそうですが、実現性としては疑問符がつきそうです。
「最適解」を考える
ここまで見てきたように、今回は、さまざまなルートでゴール可能でした。そのなかから、実現できそうな「最適解」を探してみます。
「最適」の基準を考えてみると、「十分な乗り継ぎ時間があり」「方角的に選択しやすく」「徒歩が少なく」「短時間で到達できる」ルートがあれば、それが優れているといえます。そういう視点での最適解の一つとして、次の乗り継ぎを挙げてみます。
▽1日目
片山津温泉湯の元公園10:18→10:30JR加賀温泉駅・アビオシティ加賀10:50→吉崎御坊/吉崎別院前駐車場11:28→11:58JR芦原温泉駅13:05→13:25丸岡バスターミナル13:55→14:45福井駅17:02→18:46かれい崎
▽2日目
かれい崎→徒歩4.6km→糠長島10:00→11:20大谷→徒歩3.9km→大比田12:57→13:20敦賀駅15:00→15:28曽々木→徒歩3.4km→新道野18:11→18:34木之本バスターミナル18:50→19:24長浜駅
▽3日目
長浜駅07:00→07:31近江長岡駅07:42→07:53柏原→徒歩2.9km→真宗寺08:53→09:10 JR関ヶ原駅09:35→09:45牧田上野09:53→10:19時→徒歩3km→古田11:00→11:32阿下喜駅/阿下喜12:25→12:48鳥取→徒歩1km→東員駅13:35→13:55山城駅前14:00→14:40近鉄四日市15:35→16:09イオンモール鈴鹿けやき通り17:04→17:43亀山駅前18:37→18:58椋本19:10→19:46津駅前
▽4日目
津駅前11:27→11:38空港アクセス港11:55→13:25内宮前
この「最適解」では、糠長島から大谷への住民バスを発見し、長浜駅で案内所に寄らずに出発し、牧田上野で時方面を選択し、桑名に寄らず鳥取で降りて東員駅まで歩き、津港からの特急バスを発見する、という難易度の高いハードルを次々にクリアしています。
そこまで完璧にベストルートをたどることはスタッフも想定していないでしょうから、この「最適解」は、いわば想定外の成功ルートといえます。
「標準ルート」を考える
では、いくつかの部分で最適を選択しなかった場合の「標準ルート」を考えてみましょう。
▽1日目
片山津温泉湯の元公園10:18→10:30JR加賀温泉駅・アビオシティ加賀10:50→吉崎御坊/吉崎別院前駐車場11:28→11:58JR芦原温泉駅13:05→13:25丸岡バスターミナル13:55→14:45福井駅17:02→18:46かれい崎→徒歩4.6km→糠長島
▽2日目
糠長島06:40→06:49河野→徒歩9.4km→大比田10:37→11:00敦賀駅12:00→12:28曽々木→徒歩3.4km→新道野15:10→15:33木之本バスターミナル16:04→16:37長浜駅
▽3日目
長浜駅07:00→07:31近江長岡駅07:42→07:53柏原→徒歩2.9km→真宗寺08:53→09:10 JR関ヶ原駅09:35→09:45牧田上野10:58→11:44大垣駅12:50→13:41海津市役所13:45→14:26松山グリーンハイツ→徒歩3.2km→多度駅15:40→16:04御衣野集会所前→徒歩4km→陽だまりの丘(郵政研究所前)17:22→17:46桑名駅前18:10→18:46桑名西高校→徒歩3.0km→あかつき台一丁目20:13→20:47近鉄四日市駅前
▽4日目
近鉄四日市駅07:00→07:53イオンモール鈴鹿けやき通り08:21→08:57亀山駅前09:56→10:17椋本11:10→11:46津駅前12:32→13:13天白13:30→14:02 JR松坂駅/松阪駅前15:45→16:21栃原→徒歩2.2km→注連指口17:50→18:34伊勢市駅前18:44→18:56内宮前
この「標準ルート」では、糠長島から大谷への住民バスは見つけられません。長浜駅では案内所に寄らずに出発します。牧田上野で時方面を選択せず大垣駅まで行き情報収集し、桑名駅では桑名西高校ルートへ進みます。津港からの特急バスは見つけられずに、注連指口を経由する、という設定です。
今回、ゴールできる乗り継ぎはいくつもありますし、「これこそ最適解」「これが想定ルート」などと断定するつもりはありません。一つの例として挙げただけですので、ご承知おきください。
難易度は
繰り返しになりますが、今回はゴール可能な乗り継ぎが豊富でした。実際ルートに加え、湖西、湖南、時といったルートでつながりますし、さらなるバリエーションルートもありそうです。ミスを挽回する余地もありました。そう考えると、難易度はそれほど高くなかったようにも思えます。
ただし、今回の特徴として、伊勢へのアプローチの難しさがありました。津でアクセス港ルートを探し出すか、松阪で注連指口ルートを探し出さなければならず、「平易なお題」と表現するのには躊躇します。
仮に一行がもう少し早く津に到着できていても、ゴールできなかった可能性は小さくありません。そう考えると、「やや難」程度の難しさだったでしょうか。
案内所待ちが
いろいろ検討してきましたが、今回の敗因として大きかったのは、皆さんがご想像の通り、長浜駅で夕方17時から朝10時まで、17時間も停滞してしまったことでしょう。
オンエアされない特別な事情があったのかもしれませんが、3日目の朝、長浜で案内所のオープンを待たずに出発していれば、その後の展開はかなり楽になっていて、「伊勢へのアクセス」という最後のルート探しの勝負までは持ち込めたはずです。
一行は自慢の脚力で3日目になんとか桑名までたどり着き、ゴールの目をかろうじて残して持ちこたえました。しかし、桑名でも案内所のオープンを待って東員方面のルート情報を得た結果、ゴールの可能性が完全に潰えてしまいました。
次回はカド番に
慎重を期した「案内所待ち」でゴールのチャンスを逃してしまったのですから、皮肉と言えば皮肉です。羽田にとっては、「虎の巻」に付け加える内容が増えた回になったことでしょう。健闘したマドンナ・井上和香には残念なことでした。
ただ、番組的には適度に盛り上がり、3時間の長尺ながら楽しく見られました。「最適解」で進むよりは、多少のもたつきがあったほうが面白い、というのもこの番組の奥深いところです。
今回の失敗で、田中・羽田コンビとしては6勝6敗となり、次回は負け越しがかかるカド番を迎えます。真剣勝負を楽しみに待ちましょう。(鎌倉淳)