「ローカル路線バスの旅W第4弾 姫路城→松山城」の正解ルートを検証する【2】違うルートをたどったら?

奇跡がつながったな

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「ローカル路線バスの旅W第4弾 姫路城→松山城」の正解ルートを検証する。深夜行軍に意味はあったか

ローカル路線バスの旅W第4弾
Ⓒテレビ東京

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岡山・瀬戸大橋ルート

「ローカル路線バスの旅W」第4弾のルート検証、話を岡山駅に戻します。岡山県から香川県に渡る瀬戸大橋ルートについて検証してみましょう。

髙木一行が岡山駅に到着したのは16時半ごろ。瀬戸大橋方面に向かう下電バスの窓口が閉まっているという不運もあり、先が見通せなくなりました。

仮に下電の窓口が開いていて情報を得られていたら、以下のように乗り継いで、瀬戸大橋方面に向かえていたかもしれません。

▽2日目
岡山駅16:55→17:50宇野駅前18:10→18:33王子ヶ岳登山口18:38→19:03児島駅前

▽3日目
児島駅前06:50→08:03坂出駅前10:15→10:53ニューレオマワールド11:43→12:08琴平駅前12:39→13:41三豊総合病院14:45→15:36道の駅とよはま→徒歩4.5km→川之江駅

▽4日目
川之江駅07:48→09:35新居浜西バスターミナル10:40→12:38松山市駅

このように、4日目の12時半ごろに松山市に到着でき、13時ごろにゴールできていたでしょう。ただし、この乗り継ぎを実現するためには、坂出駅で琴平から三豊へのコミュニティバスの情報を得ていなければなりません。現実的には難しそうで、順調に乗り継げるかは何ともいえません。

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善通寺ルート

坂出駅でうまく情報を得られなければ、丸亀方面へ抜けて、西を目指す形になりそうです。

▽3日目
児島駅前06:50→08:03坂出駅→徒歩4.6km→宇多津駅南口10:50→11:14丸亀駅12:10→12:23善通寺ICターミナル→徒歩2.3km→善通寺駅14:50→15:45三豊市役所17:22→18:00観音寺駅

▽4日目
観音寺駅08:39→09:44道の駅とよはま→徒歩4.5km→川之江駅11:48→13:35新居浜西バスターミナル14:10→16:08松山市駅

丸亀から西へ行くには善通寺方面行きのバスに乗るほか選択肢がないので、うまく情報が得られなくても、とりあえず先へ進んでいけば成立しうるルートです。この場合、4日目16時頃に松山市に到着できていました。

実現性が高いとすれば、この「善通寺ルート」でしょう。

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倉敷・瀬戸大橋ルート

では、岡山駅ではなく、倉敷駅で瀬戸大橋ルートに向かう判断をした場合はどうでしょうか。その場合、以下のような乗り継ぎになります。

▽3日目
倉敷駅06:25→07:15児島駅前09:20→10:30坂出駅前11:15→11:53ニューレオマワールド13:28→13:53琴平駅前15:17→16:18三豊総合病院17:51→18:30箕浦→徒歩6.2km→川之江駅

▽4日目
川之江駅07:54→09:35新居浜西10:40→12:45JR松山駅

上述の岡山・瀬戸大橋ルートと同様に、松山駅に4日目昼過ぎにゴールできる可能性があります。坂出から丸亀に向かって、善通寺ルートを狙った場合は、以下のようになるでしょう。

▽3日目
倉敷駅06:25→07:15児島駅前09:20→10:30坂出駅11:00→徒歩4.6km→12:00宇多津駅南口13:00→13:18丸亀駅13:56→14:19善通寺東口→徒歩0.5km→善通寺駅14:50→15:45三豊市役所17:22→18:00観音寺駅

▽4日目
観音寺駅08:39→09:44道の駅とよはま→徒歩4.5km→川之江駅11:48→13:35新居浜西バスターミナル14:10→16:08松山市駅

善通寺以降は、既出の岡山駅からの瀬戸大橋、善通寺ルートと同じで、4日目夕方にゴールできます。

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逆転を演出できる

瀬戸大橋ルートをまとめると、岡山から宇野を目指しても、倉敷から児島を目指しても、瀬戸大橋を越えるのは難しくありません。難しいのは香川県~愛媛県の県境の越え方です。

両県境を跨ぐバスは琴平駅と善通寺駅から出ていますが、いずれも三豊市のコミュニティバスなので、その情報を坂出駅で得るのは困難とみられます。となると、手探りで丸亀を目指すことになりそうですが、丸亀駅に到着しても、さらに西方面に向かうバスは見当たりません。

そのため、南西の善通寺駅か琴平駅に向かうほかありません。結果として善通寺駅か琴平駅で三豊へ抜けるコミュニティバスを知り、何とか愛媛県へ抜けられた、という状況になりそうです。

その場合、3日目夜は観音寺泊になります。ゴールまで距離がありますので4日目に不安を抱かせますが、最後に新居浜からの長距離バスを捕まえてゴールできる設定になっています。苦境からの逆転感を演出できる乗り継ぎです。

そう考えると、制作側が狙っていた「本命」は、瀬戸大橋ルートだったのでしょう。

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最適解を考える

では、ここまでの検証を基に、最適解を考えてみましょう。「最適」にはさまざまな意味がありますが、まずはバス旅の本旨に即して「なるべく歩かない」という視点でみてみます。

その視点では、姫路から岡山はテクノ中央経由で上郡に至るのが「正解」といっていいでしょう。

上郡からは、赤穂ルートと三石ルートがあります。先着できるのは三石ルートですが、歩かないで岡山まで到達できるのは赤穂ルートです。

岡山以西は、しまなみ海道ルートと瀬戸大橋ルートで分かれます。しまなみ海道ルートの場合、なるべく歩かないのは倉敷泊の府中ルートです。そうなると、以下のようになります。

【最適解案(しまなみ海道ルート)】
▽1日目
姫路駅10:10→10:59龍野12:19→12:38新宮駅13:31→13:46テクノ中央16:01→16:20上郡駅

▽2日目
上郡駅07:40→08:55播州赤穂駅11:46→12:40吉永病院14:25→14:53片鉄片上/片上15:11→16:28岡山駅20:20→21:15倉敷駅前

▽3日目
倉敷駅07:55→08:32倉敷芸科大学08:52→09:04新倉敷駅11:40→12:20寄島総合支所前12:27→12:36鏡西→徒歩0.8km→乗時14:20→14:42笠岡駅前15:10→16:08福山駅前16:50→18:09クロスロードみつぎ18:25→19:07尾道駅前

▽4日目
尾道駅前07:05→08:08耕三寺09:43→09:52殿山→徒歩4.6km→大三島BS12:45→13:37今治駅前14:39→15:51松山市駅

この場合、1km以上を歩くのは、殿山(生口島)から大三島の多々羅大橋区間のみです。「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」らしい旅になっていたでしょう。ただ、前述したように、府中ルートを福山駅で見つけ出すのは簡単ではなさそうです。

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瀬戸大橋ルートの最適解

瀬戸大橋ルートの最適解も考えてみます。岡山までは同じで、倉敷泊でみると、以下のようになります。

【最適解案(瀬戸大橋ルート)】

▽1日目
姫路駅10:10→10:59龍野12:19→12:38新宮駅13:31→13:46テクノ中央16:01→16:20上郡駅

▽2日目
上郡駅07:40→08:55播州赤穂駅11:46→12:40吉永病院14:25→14:53片鉄片上/片上15:11→16:28岡山駅20:20→21:15倉敷駅

▽3日目
倉敷駅06:25→07:15児島駅前09:20→10:30坂出駅前11:15→11:53ニューレオマワールド13:28→13:53琴平駅前15:17→16:18三豊総合病院17:51→18:30箕浦→徒歩6.2km→川之江駅

▽4日目
川之江駅07:54→09:35新居浜西10:40→12:45JR松山駅

このルートの場合、箕浦から川之江まで6kmを歩けば、他は全てバスで乗り継げます。こちらは坂出から三豊の乗り継ぎが難しいのは前述したとおりです。

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宿泊地を考慮すると

多少の徒歩を組み合わせて、宿泊地を考慮した最適解も考えてみます。宿泊地は初日は赤穂、2日目が倉敷が適しているでしょうか。そういう視点でみれば、たとえば以下も最適解の候補といえるかもしれません。

【宿泊地を考慮した最適解案】

▽1日目
姫路駅10:10→10:59龍野12:19→12:38新宮駅13:31→13:46テクノ中央14:39→15:05相生駅15:32→15:46佐方→徒歩8.9km→播州赤穂駅

▽2日目
播州赤穂駅11:46→12:40吉永病院14:25→14:53片鉄片上/片上15:11→16:28岡山駅20:20→21:15倉敷駅前

▽3日目
倉敷駅06:25→07:15児島駅前09:20→10:30坂出駅11:00→徒歩4.6km→12:00宇多津駅南口13:00→13:18丸亀駅13:56→14:19善通寺東口→徒歩0.5km→善通寺駅14:50→15:45三豊市役所17:22→18:00観音寺駅

▽4日目
観音寺駅08:39→09:44道の駅とよはま→徒歩4.5km→川之江駅11:48→13:35新居浜西バスターミナル14:10→16:08松山市駅

赤穂、倉敷、観音寺と宿泊施設に困らなそうな土地に泊まり、4日目夕方に長距離バスを捕まえてゴールとなると、番組的にも悪くなさそうです。

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ゴールから逆算すると

最後に、ゴールからの逆算で、最終乗り継ぎを探ってみます。まずはしまなみ海道ルートです。

▽1日目
姫路駅22:45→23:28龍野

▽2日目
本竜野駅07:30→07:59播磨新宮駅08:10→09:07上郡駅11:00→11:15梨ヶ原→徒歩3.3km→三石13:25→13:46片鉄片上/片上15:11→16:28岡山駅

▽3日目
岡山駅07:25→08:08中庄駅→徒歩5.0km→倉敷駅09:45→10:18倉敷芸術科大10:50→11:02新倉敷駅11:40→12:20寄島総合支所前→徒歩3.2km→乗時14:20→14:42笠岡駅前16:10→17:08福山駅前

▽4日目
福山駅前07:43→08:14沼南高校前08:27→08:45松永駅南口09:02→09:22三成09:30→09:51尾道駅前10:30→11:07要橋→徒歩15.6km→大三島15:12→17:21松山市駅

尾道から松山市への最終乗り継ぎは、生口島~大三島までの約16kmを4時間で歩くという条件で、尾道駅を10時半のバスになります。その場合、2日目朝に本竜野駅を出れば間に合うので、姫路駅を1日目夜の龍野行き最終便に乗ればつながります。

机上論としても実現は難しそうですが、あくまでも逆算した時刻表上の最終乗り継ぎです。

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瀬戸大橋ルートの逆算

次に、瀬戸大橋ルートの最終乗り継ぎ逆算です。

▽2日目
姫路駅12:00→12:40堂本13:13→13:38播磨新宮駅14:25→14:49テクノ中央15:38→15:57上郡駅17:45→18:00梨ヶ原→徒歩3.3km→三石

▽3日目
三石07:45→08:20片鉄片上/片上08:40→09:56岡山駅10:35→11:34昭和町・マルナカ倉敷駅店11:41→12:35児島駅前12:55→14:05坂出駅前16:40→17:18ニューレオマワールド19:23→19:48琴平駅前

▽4日目
琴平駅前09:42→10:57三豊総合病院11:49→12:35道の駅とよはま→徒歩4.5km→川之江駅14:24→15:48新居浜駅16:30→18:38松山市駅

三石で宿泊できるかという問題もあり、こちらも机上論に過ぎませんが、時刻表上は、瀬戸大橋ルートなら2日半で乗り継げる設定でした。

4日目の朝に琴平にいればゴールできるので、香川県内で手こずっても成功しやすかったことがわかります。

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まとめてみると

全体をまとめてみると、今回は大枠として「しまなみ海道ルート」と「瀬戸大橋ルート」があり、しまなみ海道ルートを採る場合は、2日目に新倉敷駅に到達できるかが大きなポイントになっていました。また、寄島~乗時の乗り継ぎが隠れたハードルでした。

三石ルートを採れば2日目の新倉敷駅到達は難しくありませんが、三石ルートの発見そのものが難しそうです。オーソドックスな赤穂ルートの場合、2日目に新倉敷駅に到達するためには倉敷駅からの夜行行軍が必要で、意外と難しいです。

一方、瀬戸大橋ルートを採る場合は、3日目朝に倉敷駅にいれば、ゴールはそれほど難しくありません。2日目の倉敷駅到達は無理難題ではありませんので、瀬戸大橋ルートをたどっていれば、比較的易しいルート設定だったといえます。

仮に一行が倉敷駅に泊まっていた場合、新倉敷駅方面行きのバスの始発が遅い(07時55分)こともあり、おそらくは瀬戸大橋ルートをたどったでしょう。つまり、倉敷駅に泊まった場合、瀬戸大橋ルートに誘導されやすい設定だった、ということです。

検証をしてみると、制作側の狙いは「倉敷駅泊の瀬戸大橋ルート」だったことがうかがえます。しかし、前回の雪辱に燃える髙木に、「倉敷駅にステイする論理」は通用せず、瀬戸大橋ルートは幻に終わりました。

路線バスが減りすぎて

全体的にみると、ルートの難易度は高いとはいえず、成功しやすいゴール配置だったといえそうです。

ただ、だから簡単だったか、というと、そう単純な話でもないことは、倉敷駅に宿泊したケースで説明したとおりです。各地でバスの運行本数が減りすぎて、1本逃すだけで数時間、下手をすると1日、行程が後ろ倒しになってしまうからです。たったひとつのミスが致命傷になりやすくなっているということです。

そうした状況で、今回、海峡部の高速道路の路線バスを利用可というルールにしたのは、ひとつの注目点でしょう。振り返ると、太川・蛭子のオリジナルシリーズ第17弾では、高速道路を通るバスは一切不可とされ、しまなみ海道の海峡部はすべて徒歩で渡るという過酷な設定でした。

それに比べると、今回は大きな「規制緩和」がおこなわれました。バス路線網が縮小するなかで、こうした規制緩和は番組を継続するうえで妥当な判断と受けとめられます。

今回のお題は、あまり歩かなくてもゴールできますので、「バス旅」らしいルート設定でした。しかし、検証をしてみると、乗り遅れのリカバーが効きにくくなっている側面も浮き彫りになります。その点で、バス旅のルート設定が難しくなりつつあることを、改めて感じさせる回でした。(鎌倉淳)


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