西武鉄道の新型特急車両001系が公開されました。愛称は「Laview(ラビュー)」。これまでの10000系「ニューレッドアロー」にかわって西武のフラッグシップ車両となります。地下鉄乗り入れにも対応していますが、どこまで直通運転するのでしょうか。
贅沢な車内、豊かな眺望
新型特急「ラビュー」の愛称には、車内空間が贅沢なことや、眺めが良いことなどの思いが込められています。
その特徴は、なんといってもデザイン。先頭車両の前面はカプセルのような球面形状で、半径が1.5mの曲面ガラスを用いています。外装はシルバーに輝くアルミ素材。日立製作所の独自技術を施したことで、風景が車両にほどよく映り込みます。
この斬新なデザインを手掛けたのは、建築界のノーベル賞といわれる「プリツカー賞」を受賞した妹島和世氏です。大型の客室窓も特徴的で、客席からみると、シートの座面から荷棚近くまで窓となっています。眺望自慢の列車になりそうです。
1人あたりの座席空間を広げる
車内の座席は黄色がベースカラー。乗客の背丈に合わせて調節できる手動式可動枕を設置しました。
各座席には電源が配置され、車内Wi-Fiも装備するなど、鉄道車両の最新サービスを入れ込んでいます。
23インチの車内モニターでは、前方展望もみられます。
女性専用トイレや、パウダールームも設け、拡大鏡やチェンジングボード、おむつ交換シートも設置。乳幼児連れにも使いやすくなります。
1編成は8両で、定員は422席。現在の10000系「ニューレッドアロー」が7両編成406席ですから、車両が1両増えたのに、編成定員は大きく変わりません。1車両あたりの座席数を減らしたことにより、1人あたりの座席空間を広げた計算です。
「ちちぶ」「むさし」で運用
「ラビュー」は、1993年に登場した10000系「ニューレッドアロー」の置き換え用です。2018 年度に2編成、2019年度に5編成を投入し、順次10000系と入れ替えていきます。特急料金は現行と変わらず、大人300~700円です。
「ラビュー」の使用路線は西武池袋線の池袋~西武秩父間。2019年3月に、同区間を走る特急「ちちぶ」「むさし」でデビューします。池袋線のみの運行で、いまのところ新宿線での運行は予定していません。
地下鉄乗り入れ対応
「ラビュー」は前面貫通扉を設置しており、地下鉄への乗り入れも可能です。西武線からは、2017年3月より、有料着席サービスの列車として「S-TRAIN」が地下鉄に乗り入れていますが、「ニューレッドアロー」は乗り入れていません。
「ラビュー」も当面、地下鉄に乗り入れる予定はありません。ただ、車両構造をみれば、将来的な乗り入れは想定しているようです。
現在、西武線と線路が繋がっているのは、東京メトロ有楽町線と、同副都心線・東急東横線・みなとみらい線の2系統です。「ラビュー」が乗り入れるとすれば、この2系統のいずれか、もしくは両方の可能性があります。
「S-TRAIN」の実績次第か
いずれの路線でも、現在、「S-TRAIN」が設定されています。その利用状況をみながら観光需要の強い時間帯は「ラビュー」に置き換え、通勤需要の強い時間帯は「S-TRAIN」の利便性を高める、といった方策が採られていくのではないか、と予想します。
「ラビュー」乗り入れがまず検討されそうなのは、ダイヤの制約が少なく、都心直結の有楽町線でしょう。新木場もしくは豊洲発着の西武秩父行き「メトロ・ラビュー」が週末に設定されれば、観光特急として秩父への集客の武器となりそうです。
一方、東急線乗り入れはどうでしょうか。週末に元町・中華街~西武秩父の「メトロ・東急ラビュー」が設定されれば、魅力的な私鉄特急になります。ただ、どの程度の利用者がいるかは未知数です。
東急は東横線で「S-TRAIN」を導入済み、大井町・田園都市線では「Q SEAT」を導入予定です。いずれも有料着席サービスの試行段階と感じられ、「ラビュー」の乗り入れを受け入れるか否かの判断は、これらの施策の評価を見てからになるのでは、と予想します。
相鉄線、東武線にもつながる
将来を見据えれば、東横線は2022年度に相鉄線への乗り入れを予定しています。完成すれば、秩父~渋谷~海老名間の特急も、設定しようと思えば可能になります。現実的ではない気がしますが。
さらに遠い将来を見据えれば、地下鉄豊住線の建設構想もあります。有楽町線豊洲から分岐して、半蔵門線住吉までの路線が開設されれば、その先には東武スカイツリーラインへとつながります。
となれば、「西武秩父発、鬼怒川温泉行き」といった列車の設定も不可能ではない……? さすがにそれは、妄想の域を出ないとは思いますが。(鎌倉淳)