「京都もみじきっぷ」はJRと京阪が京都市内で提携した新しい形。2013年は「『歩くまち・京都』京都フリーパス」の通年化を!

秋の紅葉シーズンといえば、京都がもっとも混雑する季節。そんな時期に、JR・京阪から新しいフリーきっぷが発売されました。「京都もみじきっぷ」です。

このきっぷ、発駅はJR神戸線と宝塚線の計20駅からと限定的ですが、京都市周辺のJR線と京阪線がフリー区間となっている新しいコンセプトのチケットです。JR奈良線と京阪本線は東福寺駅で接続しており、京都駅から奈良線で東福寺駅、さらに京阪線へと乗り継げますので、神戸方面から祇園方面へ列車で到達できます。

東福寺駅は両社の京都市内唯一の接続駅ですが、従来、乗換駅としては重視されてきませんでした。京都駅から祇園方面に行くにはバスで行くのが一般的だからです。京都から奈良線で一駅だけ乗って東福寺まで行き、そこから京阪に乗り継ぐのは「面倒くさい」というのが一般的な認識だと思われます。

京阪特急(写真:京阪電鉄)

その面倒くささは現在も変わりありませんから、このきっぷが狙い通りの利用者を獲得できるかはわかりません。ただ、秋の京都の渋滞はすさまじいので、京都駅から祇園方面へ鉄道で乗り継ごう、というコンセプト自体は悪くない発想でしょう。

ただ、京都の秋の渋滞を避ける、という発想なら、なぜ「JRと京阪」だけなのか、という気はします。京都には鉄道会社が7社、バス事業者が8社もあり、これらの公共交通の共通のフリーパスを作ればいいのではないか、と思います。

実際、こうしたパスはすでに2年前から作られており、「電車・バスでまわる『歩くまち・京都』京都フリーパス」として販売された実績があります。このパスは京都の鉄道会社7社、バス事業者8社が乗り放題で、1日券が2000円でした。最近では2011年12月9日~2012年3月22日まで発売されました。いわゆる「冬の京都キャンペーン」の期間限定のチケットです。

京都市内の公共交通フリーパスは永年の懸案事項でしたので、15社が参加する「京都フリーパス」の登場は画期的といえます。さまざまなハードルを乗り越えて実現したのは素晴らしいのですが、残念ながら現段階では閑散期のサービスきっぷ的な位置づけにとどまっています。しかし、公共交通乗り放題パスは、本来、道路が混雑する時期にこそ力を発揮するもの。秋のピークシーズンに「京都フリーパス」があれば、きっぷを買う手間も省けて駅の混雑が緩和されますし、バス料金支払いも不要なのでバスの乗り降りもスムーズになるでしょう。

「電車・バスでまわる『歩くまち・京都』京都フリーパス」フリー区間

ヨーロッパの観光都市では、たいていこの種の1日券は販売されています。1日券を買ったら、その1枚で1日その街を自由に移動できる、というのは、ヨーロッパでは常識といってもいいくらいです。

ところが、京都は世界的な観光都市を標榜しているわりには、こうしたきっぷが通年で存在しません。これは、少し恥ずかしいことといえるかもしれません。

計15社が関わるチケットだけに、いろいろと利害関係の調整は難しいのだろうとは推測できます。そもそも京都程度の都市に鉄道会社だけで7社も存在することが話をややこしくしていると思われますが、これは今さらどうしようもないので、とにかく各社で話し合い、「京都フリーパス」の通年化を願いたいところです。

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