JALやANAなどが実施している継続的な航空券セールに対し、国土交通省は静観する構えを示しました。スカイマークが「コストに見合わない価格」での航空券セールの抑止を求めていましたが、国交省は航空会社の経営判断の範囲内と判断したようです。
第3回「国内交通のあり方に関する有識者会議」
国土交通省は2025年12月5日に、「国内航空のあり方に関する有識者会議」の第3回会合を開催。第2回までの議論で指摘された事項に対する、国土交通省としての考え方を明らかにしました。
10月1日に開かれた第2回会合では、中堅航空各社が国内航空の競争激化やコスト増大による経営の苦境を訴えていました。
なかでもスカイマークは、JAL、ANAという大手航空会社の継続的なセール展開を問題視。大手が「コストに見合わないセール」を続けていることについて「市場の活力を損なう破壊的な価格競争」と批判し、「短期的な顧客メリットの裏で、航空ネットワークの毀損という深刻な副作用をもたらしうる」と指摘しました。

「略奪的運賃には該当しない」
この指摘に対し、第3回会合で、国土交通省が考え方を提示しました。
国交省は、「運賃の設定は、原則航空会社の経営判断」という前提を示したうえで、「国交大臣は変更命令を発出することが可能」と説明しました。
ただ、変更命令を出すには相応の理由が必要となります。これについて国交省は「現在行われているセール販売は、期間を限定した販売であること等から、略奪的運賃には該当しない」という判断を示し、変更を命じる根拠がないことを示唆しました。
つまり、JALやANAといった大手航空会社が定期的に実施しているセール運賃について、とくに問題視せず、静観する姿勢を示したといえます。
変動費で判断
国土交通大臣による運賃の変更命令は、航空法第105条第2項で定められています。同法では、運賃変更を命ずることができるのは、「他の航空運送事業者との間に、不当な競争を引き起こすこととなるおそれがあるもの」(第3号)などと定めています。
国土交通省の通達によれば、「不当な競争を引き起こすこととなるおそれがある」運賃とは、「運賃の額が、他の事業者のものを下回り、かつ、当該事業者自身の当該路線における変動費に比べて低いこと」としています。
運賃の変更命令が出せるのは、他社の航空券の価格水準を下回り、自社の変動費よりも低い場合に限られる、ということです。
直接経費がまかなえない場合
この場合の変動費とは、「航空機を運航することによって必要となる経費」を指します。いわゆる間接経費は含まず、燃油費や空港使用料、機内サービス費、代理店手数料など、航空機運航の直接経費が、セール運賃でまかなえない場合に「略奪的運賃」とされ、変更命令の対象になるということです。
現在のJAL、ANAの個別のセール運賃が、略奪的な低価格かについて具体的な判断が示されたわけではありませんが、国交省としては、月に数日のみの販売ということもあり、全体として「不当に安いとまではいえない」と考えているようです。
たとえば、羽田~福岡が8,000円程度の運賃で変動費をまかなえているのかといえば、微妙な水準でしょう。しかし、販売機会が限られているのであれば、販売枚数全体に占める割合も小さく、全体としては変動費以上の価格になっている、ということでしょうか。

バーゲンハンターは一安心
国交省が示した姿勢は、JAL、ANAが毎月のように実施している航空券セールについて、「静観」を決め込むということです。スカイマークが求めた「抑止」は認められませんでした。
とくに、判断の理由として、「期間を限定した販売であること」を挙げたのは、大きなポイントです。現状のように月数日程度のセールなら、大きな問題にはしない、ということのように受け止められます。
月1度のセールについて、国土交通省が一定のお墨付きを与えたわけです。バーゲンハンターの旅行者は、一安心といったところでしょうか。(鎌倉淳)






















